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時に笑い、時に苦しみ、時に涙する。すべてはグランドへ。 ソフトボールを通して成長していく小学生とその保護者、スタッフの物語。
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伊佐須美神社あやめ祭り大会、本大会3連勝での優勝、その最大の要因は、エース、ミソラの安定したストライク率です。
そして、それを支えるキャッチャー、トウマのキャッチング、フレーミング。
この2人のバッテリーが安定してきたことが、チームにも安定をもたらしました。
守備でリズムを作ることができる。
こういうチーム、大好きです。
ファミスタでも、豪快なチームは選びません。
だって、ほとんど三振に討ちとり、内外野に守備機会がありませんでした。
私が1番いいなと思ったのは、四球の少なさです。
安定してきたと言っても、まだ狙ったところに標準があっているわけではありません。
上に行くためには、もっとコントロールの精度が必要でしょうが、今は良い具合に散らばってくれています。
またまだ精度はいまいち、なのでボールが先行してスリーボールまでいくことが何度もありました。
それでもミソラなりに奮起するんでしょうね。
スリーボール、ノーストライクから、何とか2つ入れて、フルカウントまで持ち込む。
ここが、いままではできなかったことです。
そして、最後は三振か、凡打に討ちとる。
これができるようになったんですよね~

マウンドにミソラの白い歯があふれます。
それでいいんです。
人は笑顔の方が断然強い!
それは、科学的にも証明されています。
そしてなにより、見ていて気持ちいい!
みんなを巻き込んでドヨーンとめそめそ泣くよりも、ピンチになってもキリッとした笑顔で立ち向かう。
人はそちらの方に引きつけられると思います。
これをいうと、金足農業を思い出します。
前評判はいつも相手の方が上、試合でも押され気味な展開が多かった。
しかし、彼らは、気持ちいいまでの笑顔、チームワーク。
最後の大阪桐蔭を相手に一方的な展開になっても、彼らの笑顔は止みませんでした。
我々の目指すところは、ここなんじゃないでしょうか?
どんなに強い敵であっても、どんなに攻め込まれて劣勢になったとしても、最後まで諦めず、自分を信じて、仲間を信じて、笑顔になれるかどうか?
絶望的な展開になっても、自分たちのやるべき事に対して、投げやりにならずに、真剣に、真摯に、謙虚に取り組めるか?
多くの人は、ここでこらえきれず、泣いてしまうでしょう。
それでもいい。
しかし、その状況で、そんなボロボロの状況であっても、「笑顔」になれるという、心の強さ。
この笑顔は、一旦、絶望を乗り越えています。
1回は、下を見ている。1回じゃきかないくらい、下を見ている。
その上で、もう一回頑張ろうと覚悟した強さ、その「笑顔」です。
甲子園は、そういう笑顔を幾度も見せてくれます。
その笑顔に何回も励まされて、感動をもらいます。
スポ少でも、何回も見ていますし、実際に経験もしています。
それを乗り越えての、笑顔。
これは、強い!
この笑顔、去年のユナとシュンペイのバッテリーも終盤に度々見せていました。
今年のミソラとトウマのバッテリーにも、少しずつ、出てきています。
たくさんのピンチを乗り越えてきたことでしょう。そして、この先、それ以上のたくさんのピンチが待ち受けています。
しかし、それこそ楽しみ。
1個ずつ、少しずつ、乗り越えていく様をまじまじと見ることができます。

「さぁ、ここにこい!全部俺が止める!」
「全力で行くよ!」
ピンチであっても、実際、話していないのに、聞こえてくる会話。
ユナとシュンペイのバッテリーがそうであったように、今年のミソラとトウマにも少しずつ、聞こえない会話が聞こえてきます。

「もう!頭にくる!入ってるのに、ストライクとってくれないんだもん!」
「まぁ、がんばれ!とりあえず、止めるわ!」
今のミソラとトウマは、こんなところでしょうか?

二人の成長は、もちろん家族やコーチ陣との練習に支えられいると思います。
毎週金曜のバッテリー特化の練習。
これに快く賛同してくれたコーチと、選手を送り出してくれるご家族。
こういうのを栄養に、彼らは育っていくんです。
毎日毎日の少しずつの積み重ね。
それが開花していくところを見るのは、やはりいい。
涙腺を槍でつついてくれます。

ただ、まだまだ彼らは伸びることでしょう。
まだまだ道半ば。
選手と保護者、指導者全員がうれし涙にあふれる日まで、これからも積み重ねを続けていきます。
ミソラの白い歯、かっこいい!




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直近のこの話をしましょう。
高田イーグルス、見事優勝しました!
なんの大会かというと、今年初めての主催大会として、あらたな取り組み、伊佐須美神社あやめ祭り大会、3連勝で優勝を納めました。

この大会の趣旨は、参加チームが全て3試合を消化できること、それと教育リーグを作り、ソフトボール初心者を含めて全員が試合にでることができること、この2つを大きく挙げました。
これは、勝つことだけではなく、本来のソフトボールの楽しさを追求しつつも、同じレベルの相手と決勝戦を行うことで、ギリギリ勝負の面白さも追いもとめる、どっちもいいとこ取りしようという目論見です。
ですから、トーナメント戦のように多くのチームを呼ぶことはできませんが、会津選抜の5チーム、高田イーグルスのBチームを入れて、合計6チームがちょうど良いという判断です。
こういう大会があってもいいなぁと、私は常々思っていたんです。
それが、会津選抜の5チームの監督さんたちのご理解を得て、今回、実現することができました。ありがとうございました。
参加チームのみなさま、高田イーグルスをはじめ、他のチームの保護者のみなさまのご協力、大変ありがとうございました。

そして、この大会に高田イーグルスなりのアレンジを加えます。
ひとつは、伊佐須美神社へ、白獅子大会へ向けての必勝祈願。
もうひとつは、各チームのスラッガーを集めたホームラン競争。
小さい大会ながらも、高田イーグルスでしかできない、他とは違った面白さを加えましょう。
狐うち温泉大会のホームラン饅頭なんかもあっても良かったかもしれません。
単にソフトボールだけではない、何かがあってもいい。
私は、観光振興、地域振興の観点からももっとスポ少の大会を活用していけばいいと思っています。
またその話はいずれ。

さて、伊佐須美神社、選手全員の必勝祈願。
朝早い神社はすいていていいです。選手保護者総勢100名ぐらい入っても大丈夫。
神社の境内に、色とりどりのユニフォームの選手が整列する様は、かっこいい!
そして、大勢の選手を前にして、各チームのキャプテンが、白獅子杯に向けた決意表明をめいめいに語る。「精いっぱい頑張る!」「県大会をめざす!」。
おのおのの決意を胸に、伊佐須美神社に二礼二拍手一礼の参拝。
朝方の境内に、100人の拍手が響き渡ります。
これがやりたかった。やりたかったんです。
神さまに手を合わせる機会、そうそうないでしょう。
私は特に熱心な信者というわけではありませんが、グランドの礼をするなど、いたるところに神様はいると思っています。
グランドの神様、野球の神様、ソフトボールの神様。
信じる、信じないは別として、そういった概念を否定せず、身近なものとして信じたほうが面白いと思っています。
今日の試合も、何回か、神様にお願いしました。
ユウシンがリリーフで登場し、3ボール2ストライクとなったあの場面です。
拝まずにはいられなかった。
神様頼みます。どうか、ストライクを!と。
ユウシンに自信をつけさせてください!と。
都合のいい時ばかり、拝みますが、それは許してください。
何かにすがる、カイジはそうなったら終わりだといいます。
結果は変わらないかもしれませんが、人なんてそんなもんでしょう。
祈らずにはいられない。
もし、思い通りになっても、ならなくても、神様を恨むことはないでしょう。
そんな私が1番拝んできたのは、野球の神様だと思います。
神様繫がりという意味では、伊佐須美神社も親戚ですよ、もう。
必勝祈願なんて、意味はないかもしれない。
しかし、この会津選抜の5チームで、小学校の頃に、みんなでお参りに行ったという思い出は残るかもしれない。
これが、やりたかったんです。

もうひとつは、ホームラン競争。
メジャーリーグの大谷さんがやってたやつ。
その昔、高田スポ少時代にやってた大会で、やってました。
主催大会があれば、これもぜひともやってみたかった。
その大会の結果はあまり覚えていませんが、いろんなチームのスラッガーが一堂に会して、ただただホームランを打ちまくる。
シンプルでいいじゃないですか!
あのきれいな放物線を何発も打ち込むスラッガーは、やはりすごい。
見事な弧を青空に描くのをみているだけで、敵味方関係なく、応援してしまいます。
あの時間は、敵であっても褒め称えたいと思える、貴重な時間となったことでしょう。
やばいスラッガーの名前も覚えることができました。
これも面白かった。

小さい大会ながらも、戦うだけではなく、アイデア次第で一層、子供たちのこころに残る大会になる。私はそう確信しています。

大会や試合をするのは、相手チームがあってからこそ。ただ、倒すだけの相手ではないんです。
試合は一緒に作るもの。いい試合をするのには、いい対戦相手に恵まれなければなりません。
これは、近年つくづく思います。
そういう意味で、この会津選抜の5チームは、素晴らしい対戦相手です。
実力が伯仲しているというのが、でかい。
強すぎす、弱すぎず。ちょうど良い相手、しかも、総体で負けたチームにリベンジできる、チャンス!

伊佐須美神社あやめ祭り大会。開幕です!



2021いわき新舞子で県下各地区の選抜チームを集めた大会が行われました。
わが会津選抜チームは、一回戦、田村選抜チームとあたりました。
試合前の練習をみるに、ピッチャーは3枚。
伸びのある快速球。
選抜チームのエースともなると、悪いピッチャーはいません。
それは、こちらも同じ。
こちらにはハルがいます!
少ないチャンスをどういかすか、ピンチになっても自分たちのプレーがいかにできるかが、勝負の分かれ目になると思います。

だんだん記憶も薄れてきました。
田村選抜チーム先攻で試合がはじまりました。
ファーボールか、ヒットだったか?忘れましたが、長身で足の速そうな先頭バッターを出してしまいます。
なんだかんだで、このランナーが先制の1点になります。
長年、こういうハイレベルの戦いをやっていくと、この何気ない1点の重みがよくわかります。
この1点で何回もやられてきました。
大丈夫、すぐに追いつける!そう思う気持ちも、この時点では必要です。
しかし、試合が終わって振り返ったときに、こんなに簡単に相手に1点を献上してはいけないと私はいいます。
しかし、過去にはもどれない。 
であれば、どうしたら1点をやらずにすんだかの検証が必要です。
これが次に活かすということです。
初回の1点は重いが、試合中は大丈夫、なんとかなるの精神でいいと思います。反省は後でいい。
ここでやっていけないことは我々指導陣が、あたふたしないことです。
焦らないこと。
焦りやあきらめ、マイナスの精神は恐ろしく繁殖力が高いんです。あっという間にチーム全体に伝染していまいます。
そうならないためには、指揮官があたふたしてはいけません。
そして、なるべく早い段階で反撃すること。
「やられはしたけど、俺たちはやれる!」と思わせなければなません。
といいつつも、内心は、やべえ、やべえぞ、こりゃと思っています。
それを打ち消すように、「大丈夫!ひとつずつやれば大丈夫!」と選手たちにいいます、がそれは、自分自身にも大いに言っていることです。
そして、選手たちひとりひとりの顔を見る。
こいつらなら、大丈夫!ひとつひとつ、積み上げていこう!とチームの立ち位置を確認します。
あのグランドでプレーが始まったなら、私たちにできることは、彼らを信じるのみです。
大丈夫、おめぇらなら、やれる!
どれだけ、信じれるか?
あとは、選手たちが迷いなくチャレンジしたプレーができるように環境を整えてやること。
大きくは、この二つがあげられます。

選手たちも決して、折れてはいません。
どうすれば逆転できるか? 
そのためにはどうやって塁に出るか?
ここにいままでやってきた練習と、我々指導陣と培ってきた信頼関係がいきてきます。
これを活かさないとチームにしっかりとした「芯」が現れてくれません。
バントが得意な選手、打撃に特化した選手、どちらかというと守備向き、足の速い選手、声がでるタイプ、気が利くタイプなどその選手たちの特長や個性をいかにして、つないでいくか?
その選手の得意な分野をチャレンジできるようする。
選手も自分の得意分野ならば思い切ってチャレンジできます。
これが私たちの信頼関係の構築。
得点やピンチ脱出は、これをどれだけおおく積み上げてきたかということの結果だと私は思っています。
いままで練習してきた、小さいことをチーム一丸となってつなげていく、まさにそれは「波」ようにどんどん大きくなってきます。

そして、ようやく会津選抜チームに、いわき新舞子のその「波」がやってきます。ビックウェーブが!

1点を先制されて、試合が膠着するかにみえた三回裏、下位打線からの攻撃でした。
打順は8番の打撃専門DPで入っているタツキ。
(ちなみに彼の表裏一体の裏は、守備専門で入っているシラコです。2人で1人のフュージョン。)
彼は、この大会に至る最後の週に体調を崩して、大会参加も危ぶまれていました。
しかし、なんとか間に合った。
打撃専門であれば、普通は打撃力、長打の選手が多いと思われがちですが、会津選抜にセオリーは通用しません。
ここに俊足好打のタツキをもってきたのには訳がありました。
その訳、タツキは監督から指示があったかねてからの作戦通りに、スラップバントを決めます。
決して簡単なコースではありません。
しかも、相手は田村選抜チームのエース。
実際よく決めたと思います。
後から思えば、これがこの試合の分水嶺となったと私は思います。
そして、ラストバッターのオウガがさらにバントで送りますが、このバントが絶妙なコースに転がります。
オウガも生きました。
結果、願ったり叶ったりの波状攻撃になりました。
そして、1番からの上位打線に回ります。
逆転するならここしかありません。
私はサードコーチャーボックスから、ビックウェーブを感じていました。
レンはヒットを打てないまでも逆方向に進塁打。
1死二三塁、ユウキ。 
ゴロゴー、タッチアップなどが想定されます。
ユウキは三塁ゴロ。このゴロではバックに突っ込めない、と私は判断しました。
いくな、もどれとランナーに指示。
サードはランナーも見ずにファースト送球。
その瞬間、サードコーチャーの私、迷いました。
セオリーどおりならば、ここはホームに突入させていい場面です。
しかし、このサード、ファーストのリターンでの速さでは、突入できないと判断し、タツキをサードに止めました。
これで、2死二三塁。
セオリー通りにしなかった。
これに対して、激怒の監督。
「サードコーチャー、頼むよー!(ちゃんと判断して、突っ込ませてよ~!の意味)」と怒気を含んだ温かい支持が矢のように飛んできました。
ぁあ~、やっちまったかもと思いながら、実は私もここは、賭けていたんです。いのちとまではいかないまでも、ものすごく大事なものを。

この逆転がかかった大事な場面で、もしサードランナーの俊足のタツキを突っ込ませて、ゲッツーアウトになったら反撃の芽をつんでしまうことになる。
よしんば、成功したとしてもここは同点になる1点しか取れない。ここは一気に逆転を狙うべき!
なぜなら、次の打順はチームの最強のバッターのケイシン。
ツーアウトになっとしても、ランナーを残した方がいい。なにも反撃の芽を摘むことはないと最前線のサードコーチャーは判断したんです。

この判断が吉と出るか?凶と出るか?
結果はご承知の通りケイシンが逆転タイムリーを打ちます。そして、もう一点を追加して一挙に3点。鮮やかに逆転に成功しました。

これ、ケイシンがちゃんと打ったからいいものの、打たなかったら、私が戦犯になっていたことは想像に難くありません。

これは、高田イーグルスの最終戦の下郷戦のタッチアップ失敗が活きています。
ホームにいかせるか、いかせないか、
ここで得点できるか、できないか、が試合の結果を大きく左右します。
結果論なんです。上手くいけば官軍。いかなければ賊軍。
どっちにしても確固たる信念をもって指示を出すことが大事だと私は思っています。
終わってみて、迷いがあったことがわかる、
これが1番後悔します。
であっても、人はどうやっても迷うもの。
しかし、今回はいい方向に作用してくれました。
これも、ケイシンなら打つという、根拠のない絶対的自信、信頼関係がなせる業だと思います。
1点をとりにいくなら、突っ込ませました。
今回はリスクをとって、あえてランナーを突入させず、その次のバッターに賭けた。
2点を取りに行くことをサードコーチャーの私は選んだんです。
結果、3点をとることにつながりました。
ここでケイシンが打たなかったら、ゼロ。
この点数をとるべき場面で得点できなかったとしたら、もしかしたら負けていたのは会津選抜チームだったかもしれません。

あ~良かった。
ケイシンを信じて良かった。
ケイシンが打ってくれて良かった。
右方向の意識で打てるケイシンがこの打順にいて良かったと思いました。

歯車が、カチッとかみ合う音が聞こえました。
ここから会津選抜チームの投打がきちんとかみ合います。
逆転タイムリーのケイシンは、この後大会第1号ホームランを放ちます。
その堂々たる低い弾道の打球、打撃音は後からやってきます。
私はそれをサードコーチャーボックスから見ていました。
田村選抜チームの目の前にも関わらず、絶叫していました。
「いっけぇー!入れーぇっ!」
ケイシンのレーザーが右中間スタンドをとらえたと分かった瞬間に、飛び上がって両手でガッツポーズ。
45過ぎたおっさんが日常的にやる、ポーズではありません。
両足ジャンプの両手ガッツポーズって……
それに気づいて、恥ずかしいのと、相手ベンチへのリスペクトから、すぐにやめました。
逆の立場に立って自分を見てみる。
あれを目の前で、自チームがやられているときに、目の前でやられたら、殺意さえわくかもしれません。
静かに喜びます。
次第に相手チームのベンチからの元気がなくなっていくのが分かりました。

しかし、そんな中でもひときわ元気に声出す少年がいました。
背番号7番、サードの男の子です。
声変わりしていないので、かん高い声。
ワンサイドゲームになりつつある中、彼はチームを鼓舞し続けます。
つられて、まわりも再び顔を上げます。
たとえ敵チームだとしても、彼の行動にはたいしたもんだと思いました。

こちらのタツキのバントがうまくて、サードである彼も目一杯の守備をしますが、アウトにできない。
いったん彼もうつむいて、下を見てしまいます。
しかし、彼はふたたび、前を向きます。上を向きます。
7番サード、ガクくんの心は折れません。
さらに、声を張り上げる。そして、それはショートに伝わり、チーム全体に広がっていく。
彼もまた、激流に抗い、ビックウェーブに呑まれそうなチームを救う男だったんです。
そんな彼の姿勢に、尊敬の念を抱きます。
名前まで覚えてしまいました。
私たち会津選抜チームの敵である田村選抜チームもいいチームです。

田村選抜のエースもアウトコースにきちんとコントロールされた、球威のある球がきていました。
ウィニングショットでくるんですが、少し外れています。ほんの少しなんです。
そのへんの草大会であれば、入っているでしょう。
でも、今回の審判は正確でした。
アウトコースがきつめの判定。
我々会津選抜チームのエース、ハルにも同じ判定をしていました。
ハルとコタローのバッテリーは、そのあたりを素早く修正できたと思いますが、田村選抜チームのバッテリーは微妙な調整ができなかった。
決めにきたウィニングショットがボールの判定。
それが、要所要所で出ていました。
何回も、あっやばい、入ったと思った場面がありました。でも、ボール。
そのあたりも勝敗を分けたひとつの要因だと思います。

会津選抜チームは、繰り出す作戦がことごとく成功します。なかなか、高度な作戦なんです。
それを、決めていく選手たちはすごい。
かなり薄い可能性であっても成功させてしまう。
序盤の危ない場面では、ライトの守備専門のシラコがファインプレーでチームを救います。
シラコの反応の良さがココで生きました。
これは、シラコのファインプレーですが、ここに配置した監督の目利きのファインプレーでもあります。
選手をよく見ている。
こちらが、こうして欲しいと思ったとおりにことが運ぶ。
監督冥利に尽きるでしょう。
私もサードコーチャーボックスから笑いが止まりませんでした。
相手チームの手前なのでガッツポーズはしないで、ニヤッとニヒルに笑う程度です。
チームとしてまとまってきたなという、実感をこの大会でさせてくれます。
選手ひとりひとりが、その持ち味をいかんなく発揮してくれている。
それを、試合にでていない選手たちもベンチからのサポートしている。
会津選抜チームの集大成がここにあります。
チーム全員が、きちんと機能していた。
チーム全員、18人が機能していた。
ここに勝因となったいろんな事が含まれていると私は思います。
あんなに急造チームだったこのチームが相手を圧倒しています。
この瞬間、間違いなく彼らは会津選抜チームというひとつのチームになったと思います。

田村選抜チームをコールドで下しました。
さて、次はここ最近なし得なかった、二日目への生き残りを賭けて、以前対戦した、全南選抜チームとベスト8を戦います。

さて、次の波はどちらにいくのか?
それは、ここ、いわき新舞子の海と空だけがわかっていました。







さて、今年の会津選抜について語りましょう。
会津選抜は本来、柳津、坂下、高田イーグルス、新鶴、湯川から構成されます。
しかし、今年もコロナの影響を受けました。
大会の開催もあやぶまれ、決定も遅かった。
自然と始動も遅く、参加チームも全チームとはなりませんでした。
湯川さんが他の選抜チームの人数が足りないということで、そちらに異動し、代わりに磐梯さんが加わりました。計算上では6年生男子は17名。
しかし、時はコロナ禍にまっただ中、まん延防止が福島県下にでていました。それをうけて、保護者の仕事の影響と選抜大会の翌週に修学旅行があるのでいわきでコロナにかかる危険を冒せないという理由で、参加を見送るチームもありました。
それが、高田イーグルスでした。
高田イーグルスの7人が参加を見送る。
となると、柳津、磐梯、坂下、新鶴が参加しての会津選抜は過去最低人数の10名となりました。
指導者の体制もなかなか決まりませんでした。
いろんなチーム事情から、もう一回言いますが、
いろんなチーム事情から、今回も佐藤監督にお願いし、そういう事情ならばということで、快く引き受けていただきました。
そうなるのが、1番良いというのが、新鶴の大堀代表と私の意見です。
当初の船出、参加はたったの10人。
磐梯からの参加のヒロトがいなければ、9人というギリギリの編成になるところでした。
10人という少ない会津選抜はいままでに経験はありません。
そうであっても、会津という名を背負って戦う会津選抜チーム。やるからには勝ちをめざし、ベストを尽くすのは当たり前です。
そこは我々指導陣もブレることはありませんでした。このメンバーで最高の配置、打順でもって戦う、そう決めました。
私はといえば、たしかに今はコロナ禍でまん延防止もでている。
しかし、状況が好転してもしかしたら、高田イーグルスの職場のコロナ規制や学校の修学旅行の日程も変わるかもしれない。
その時のために、選抜大会には出なくてもいいから、登録だけはさせてくれ、
そして6年生の世代がみんな集まるせっかくの機会なので、選抜大会にはでなくてもいいから、同世代で一緒にソフトボールをして、選抜のメンバーをサポートしてくれと選手と保護者にお願いしました。
それもこれも、もしかしたら、高田イーグルスの選手が選抜大会に出られるように事態が好転するかもしれないという一縷(いちる)の望みをかけて、先手を打つ努力をしました。

最初は、10人の練習が続きました。
高田イーグルスのメンバーがいなくても、柳津のハルとコタロウのバッテリーはしっかりしているし、センターライン(バッテリーとショート、セカンド、センターのライン)もとれる、それぞれの守備適正もあるということが確認できました。
10人でも、やれる!という算段はつきました。
佐藤監督と何とかなるなという見通しがたった時はうれしかったものです。
それは良かったのですが、そこに自分のチームのメンバーがいないというのは、やはり寂しいものです。
そうこうしているうちに、高田イーグルスのメンバーも練習に顔を出すようになりました。
あくまで大会には参加しない、サポートメンバーとしてですが。
私はそれでもうれしかった。うれしかったです。
たとえ大会にでなくても、同じ6年生として選抜のメンバーをサポートするという気持ち、気概。
大会でないと決めても、その子供たちを練習会場まで送迎していただける、保護者。
ありがたかったです。

なんとか、コロナの状況が好転してくれることを思い続けます。
念ずれば通ず。
まさに、これでしょう。
県下にまん延防止も解除、修学旅行の日程も変更になりました。会津選抜に有利な方向に!
高田イーグルスが、会津選抜に参加しないという理由がなくりました。
これまでの練習でも、
「あ~ぁ、ここに高田イーグルスがいてくれたらなぁ。でも、いねえからなぁ。」
と、さんざん待望論を流布してきました。
時いたれり。
しかし、この時点で不安もありました。
せっかく、会津選抜は10人でいくと決めたばかり。
高田イーグルスが入ることによって、試合に出れなくなる選手も必ずでてきます。
私の記憶によれば、誰ひとり文句を言う保護者はいませんでした。
本来ならば、違うでしょう?と詰め寄られることも予測していました。
それはありませんでした。思っていた人もあったでしょうが、それを表に出さない思慮深さ。
ありがたいです。そしてご迷惑をおかけしました。

となれば、高田イーグルスも参加させていただく、そういう流れになりました。
大会にでないことを前提として練習に参加していましたが、事態が好転して、高田イーグルスにもチャンスが回ってきました。
出れる!
世の中、捨てたもんじゃありませんね。
もしかしたらの可能性に賭けて準備をしてきたかいがありました。
練習に参加させていただいてよかった。
選手登録をしておいてよかった。
出れるとなっても、なかなか腰を上げないメンバーもいて説得にも苦労しました。
だが、そろった。全員が。
いろいろあって、10人も会津選抜メンバーは幻となりました。 
そして、新生2021会津選抜メンバー18名での船出となりました。
まったくもう、出だしから前途多難、紆余曲折、前方不注意。
佐藤監督、大堀コーチ、山内コーチが言いました。
「やっとそろったか!」

佐藤監督がいいます。
いろいろあったけど、結果、良かった!なんとかなりそうだねと。
本当にその通りです。

ここに2021会津選抜のメンバー18名がそろいました。

今日は、ここまでとします。
♪ 縦の糸はあなた~、横の糸はわたし~ ♪
これはなにも恋人たちだけの歌ではありません。
スポ少もしかり。
人が織りなす物語は、誰かと出会ってからでないと織りなせない。
人が糸だとするならば、ひとりではただの一本の糸のまま。
縦に横に織りなされてこそ、織物になる。
それでこそ、いろんな役にもたつし、あたたかく人を包み込むこともできる。
からまってこその存在意義がある。
いろんなところで、いろんな人に出会って、いろんな織物として表現していく。
生きていくことは、最後まで物語を編んでいくことなんだと思います。
まだ見ていませんが、『糸』という映画を見てみたい。
今年のスポ少も、そういった意味で、いろんな物語を編んできたと思います。

先の関柴さんの大仏杯で、今シーズンの高田イーグルスとしての最後の大会が終わりました。
結果は、今シーズン初めての決勝戦に挑み、全力を尽くした上での準優勝。
柳津さんとの決勝を夢見ていましたが、それはかなわず。
柳津さんを倒した下郷さんを倒しての優勝を目指しましたが、下郷さんの前に屈する。
あの強さで新人メンバーだというから驚きです。
そんな強敵を前に、負けはしましたが、今シーズンの最高の結果をみんなで勝ち取りました。

私はそれをサードコーチャーズボックスから見ていました。
これまであったいろんなことを思い出しながら、今年のレン世代の最後の戦いを目に焼き付けていました。彼らと戦うのもこれが最後。
万感の思いで、目頭が熱くなります。

ちょっとそれはおいておいて、試合の流れから。
下郷さんの先攻で始まりました。高田イーグルスは、初回に先頭をファーボール、エラーもからんで3点を失います。
まず主導権を握られます。
しかし、その裏にレンの1発で、すぐに反撃の狼煙を上げますが1点止まり。
主導権は下郷さん、高田イーグルスが2点を追う展開になります。
2回の下位打線を抑え、3回の攻防。表をゼロに抑えます。

そして、この試合の山場3回の裏を迎えます。
トウマからの打順、しぶとくライト前に運んでまずは一塁に。
そこから、アユキのサードへのセフティバント、レオのファーボールでランナーが埋まってきます。
相手が苦しいところで小技と選球眼を発揮する。下位打線にしぶとさがありました。
これは、もしや!と思い始める。逆転のきっかけなんてそんなもんです。
最初は、おぼろげな希望でしかない。普段であれば簡単にアウトになってしまう。しかし、こういう時、その薄い可能性が連鎖していくことで、みんなが奇跡を信じてみたくなる。
「流れ」とはそういうものです。
そして、誰もがレンまで回してくれ!と祈る。
相手投手もこの下位打線で切らなければいけないことはわかっていたはずです。
ここはイーグルスが流れを制しました。
ボルテージにゲージがあるとすれば、ここがMAXでしょう。
やってきました千両役者。
1死満塁として、バッターは前の打席でホームランのレン。 
ここで最低でも同点、逆転はしておきたいところ。
その可能性は十分にあります。
下郷さん、外野はあり得ないくらいに下がっています。特にライトは。
ここで一発をくらってはいけないことはじゅうじゅうわかっているということです。
二点差を考慮して、長打警戒のみのシフト。
この下がり具合は、レンでも抜けないかもしれない。捕られる可能性もある。
しかし、レンならば……
貧すれば鈍す。
ピンチの時ほど、都合のいい方を選びたがります。
そこに油断がありました。
三塁にいるトウマにあらゆる可能性を伝えませんでした。
レンがホームランを打つことしか考えていませんでした。最低でもヒットを打つ。それしか、考えていませんでした。
ここが、この試合の天王山……だった。
今思うとそう思います。

レンが放った大飛球。
定位置だったならば、抜けてホームランとなったでしょう。
しかし、長打警戒のシフト。
それでもライトは懸命にさがり、なんとかキャッチします。
抜けたと思った、三塁のトウマはハーフウェイまで飛び出ています。
戻れ!と指示を飛ばしますが、戻ったときは、ライトが捕球したと同時くらい。
体勢をととのえないまま、タッチアップの指示を出してトウマを走らせます。
サードランナーは、ライトからの返球はよく見えます。
これは、アウトになるかもしれないと判断したトウマは、途中でとまります。
この時点で、これはやばい、アウトのタイミングになるかもしれないと思った私は、送球がそれることを願って、行けーと再度指示を飛ばします。
おそらく、迷ったままホームに突入したトウマ。
まんまと、いい送球が返ってきました。
飛んで火に入る夏の虫。
それでも、懸命にスライディングをして、生還を試みるトウマ。
刹那。
アンパイアのアウトのコール。
ワンアウト、満塁のチャンスが、タッチアップ、ホームゲッツーで、一気に消滅してしまいました。
燃えさかる反撃の炎が一瞬で消し飛んだ。
これがチームに与える影響は計り知れません。
それをサードコーチャーズボックスから、見ていることしかできない私。
ことの重大さに気づいて、立ち尽くすことしかできません。
やっちまったぁ~
これは、俺の指示のせいだ。
プレーの前に、タッチアップの可能性も示唆していれば……
すまんトウマ。すまん、みんなと思いながらベンチに帰ります。
あぁ~ぁという味方の落胆がみてとれるだけに、なおさらつらい。
ここは、謝るしかありませんが、まだ試合は終わっていません。
反省するなら、試合が終わってから。
そう言い続けてきた私が、それを実践しないわけにはいきません。

しかし、このチャンスを活かせなかったことは、のちのちまで影響します。
当たり前のことを当たり前にできないと、流れはきてくれません。
勝利の女神は微笑んでくれません。 
その後も大きく陰を落とします。
同点もしくは逆転できなかった。
エース、ユナもいまいち調子に乗りきれない。
そこにきて、ユナが投げるときだけ、冷たい雨が降るという悪循環。
11月の寒さ、指先の感覚を奪っていきます。
ファーボールを連発。
微妙なコントロールがきかなくなってきました。
投げた瞬間に、明らかにボールとわかるコースが連発。
追いつくどころか、点差はどんどん離されていきます。
次第に盛り下がるベンチ。
敗北の大合唱が明らかに近づいているのがわかります。
冷たい雨に屈してしまいそうになります。
このままではイーグルスは消え去ってしまうという危機感。
マウンドはすぐそこにあるのに、どんどん遠くに行ってしまうような感覚。
自分がなんとかするしかないという、とんでもない孤独感と必死に戦っているユナ。
同じピッチャー出身だから余計にわかるんだと思います。
6年生の最後の試合だから、みんなで声を出して応援して!とベンチの下級生を鼓舞し続ける、みなこコーチ。
はっと気づいて、このままではいけないと私も思いかえします。
こいつらとこのユニフォームを着て戦うのもこれが最後。
この6年生たちとの最後の試合をこんな葬式みたいな試合にしてはいけない。
それぞれがひとりで戦っているような思いにさせてはいけない。
みんながチームで戦っていることをもう一度思い出せるように、ベンチのみんなと声をだそう。
私も寒さで震える選手たちを鼓舞します。

「ピッチャーを助けろ!」
ほとんど叫びに近かったと思います。
相手チームに押されて、勢いをなくし、自信をなくし、今まさに高田イーグルスは、試合さえもなくそうとしています。
自然と下をばかりを向く。
肩を落とし、雨でぬかるむグランドばかりを見つめることしかできない。
このままでは終われない。
このまま終わらせてはいけない。
冷たい雨がほおをつたいます。
少し前であったなら、ユナのこころはとっくに折れて、雨と一緒に涙があふれていたことでしょう。
しかし、今は違います。
折れそうになるこころを、必死に押さえて、バックを信じて、シュンペイを信じて思い切り腕を振る。おそらく、彼女はシュンペイのミットをみて、集中して投げることでその精神を保っていたと思います。
大丈夫!俺が全部とるよ!だから思い切りこい!
うん、わかった!
そして、シュンペイはユナが投げやすいように、努めて大きく構えます。
その動作に、バッテリーの無言の会話が聞こえてくるようでした。
マウンドは孤独ですが、決してひとりで戦っていないということを彼女はわかっています。
そして、エースとしてのユナを信じてバックを守る彼らもいます。
だから、私は彼らに頼むんです。
お願いだから、ピッチャーを助けてやってくれ、と。
いってるそばから、目がうるんでくる、涙で前が見えなくなってきます。
春先は、ピッチャーのノーコンとバックのエラー、あんなにかみ合わなかった彼らがこの冷たい雨の中、必死に踏みとどまっています。
チームが勝つためでもありますが、このくそ寒い雨の中、集中しているのは、隣にいる仲間のためだと私は思います。

なんとか、スリーアウトをとってベンチに戻ってくる彼ら。
マスク越ではありましたが、私が泣いていることに、レフトから戻ってくるタイチが気づきました。
「コーチ、泣くのはまだ早いですよ。試合は終わっていません。すぐに追いつきます!」
詳しくは思い出せませんが、そんなようなことを私にいったと記憶しています。
そして、颯爽とベンチに戻っていくタイチ後ろ姿を見る。
私は泣き止むどころか、さらに前が見えなくなりました。もはや水中だといっていい。
あのタイチが私にそんなことを言うようになるとは!
今度の涙は、うれしい方です。
大きく成長して、他者に対する配慮、この劣勢にあってもチームに貢献しようとする姿勢。
あのタイチがですよ。
そうかっこいいことを言っていいのは、スラムダンクの流川クラスだけだからと、突っ込みを入れますが、あの時はタイチは確かにかっこよかったです。
自分がミスをしたり、ミスをしそうになるとき、
あんなに後ろ向きなことしか言わなかった奴が、反対に私を励ましています。
タイチのこころの成長を感じました。
てめぇら泣かせんじゃねえぞ、曇天(どんてん)の空を仰ぎ見ます。
この感極まっての涙とうれしい涙の混在。
彼らは確実に成長している。
それを最後の最後に我々に見せてくれている。
しかし、それも今回で最後。
終わりの時は確実に近づいてきます。
もう終わってしまう。それがわかる。
ベンチにいる彼らをみる。
どうしようもない寂しさの涙がやってきます。
もう、こいつらと一緒にソフトボールができないんだ。
そう思うだけで、天を見ている瞳のダムがあふれ出します。止められない。
雨で濡れたサードコーチャーズボックスが、私の涙でさらに濡れていきます。
マスクはぐしょぐしょです。

そして冒頭の「糸」を思い出します。
どちらが縦で、どちらが横かはわかりません。
しかし確実に言えるのは、スポ少という舞台で、選手のみんな、我々指導者、そして保護者のみなさんと1つの織りなす物語を作ってきたということです。
決してひとりでは、なしえなかった。
いろんな人が、いろんな材質、いろんな色の糸があってこそ、多彩な色彩や十分な強度を保つことができる。
ひとりひとりが一本の「糸」。
一本では、きゃしゃで、頼りなく、ふきとびそうな糸。
しかし、それがふたり、三人、四人とどんどん出会って、織り重なっていく。
人と関わることで、自分の存在に気づくでしょう。
そして、その自分も他者の存在の気づきになっている。
ホームランを打った自分をすげぇべと聞いてくるレン。
静かに自分の役割をこなすユウキ。
プレー以外の気づかいでもみんなを支えるマナト。
プレーでもベンチでもつっこみどころ満載のコタロー。
いっぱいいっぱいになりながらも全力をつくすレオ。
こころが弱っていた私に前向きな言葉をかけるタイチ。
そして、ユナのシュンペイのバッテリーをみる。
中島みゆきさんが高田イーグルスを歌ってくれています。
間違いなく私たちの糸は、彼らの糸と交差している。織りなしている。
彼らは私に教えてくれます。私達、大人に教えてくれます。
自分の居場所を探し、他者とともに居場所を作り、他者への配慮も忘れない。
これだけで、小さな糸が生きていくための練習の場に十分になりえる。
たかだが、スポ少という小さな舞台ではありますがこころを揺さぶる物語を紡いでいます。
私たちはそれが見たかった。そんな彼らを支えることで、自分たちも支えられていたことに気づくんです。
そんな彼らとの物語もここで終着となりました。
2:9。この試合は、下郷さんに軍配があがりました。今年の関柴、大仏杯は準優勝。
コロナ禍で大会数の少ない中では、ありますが、今年の最高成績を収めました。
この時期に、開催までこぎつけていただきました関柴スポ少、審判団、大会関係者の皆様には感謝の言葉しかありません。ありがとうございました。

さて、今年も終わってしまいました。
でも終わりではないんですね。
すでにもう始まっています。次の物語が。それぞれの物語が。
誰かと出会い、また新しい物語を織りなす。
私は確信しています。
彼らが織りなす物語には、スポ少の成分が必ず入っているであろうことを。
その糸がいろんな場所でひろがっていくであろうことを。


窮地の時こそ、そのチームの真価が問われる。
私はそう思っています。
その時にどんな準備をして、どんなプレーをするか?
そこにそれまでやってきたことが、必ずでると思うんです。

11/3の文化の日。
初めて会津坂下町主催の大会に呼んでいただけました。私が記憶する限り、町が主催する大会は、柳津町の御霊祭りと、この会津坂下町のライオンズ杯くらいです。
残念ながら美里町はありません。
特定のスポーツに偏らないとか、いろいろあることも確か。
まぁ、町に頼らず自分で運営していったほうがめんどくさくないし、町としても助かるでしょう。
そんな中で、町が主催するというのは、ある意味たいしたもんです。

さて、そのライオンズ杯。
前夜にはキャプテンのレンの負傷欠場が知らされ、当日の朝に攻守の要のユウキの風邪による欠場が知らされました。
ガーン。
主力も主力のふたりの大穴、かといってチームが欠場するわけにもいかない。
となると、新人チームから誰かを引っこ抜いてくるほかに方法はありません。
さて、どうするか?
この日の二軍監督、コーチに相談してみると、ここはスクランブル、好きなように引っこ抜いていいとのこと。
二軍のキャッチャーとして、トウマは引っこ抜けない。
レンとユウキのポジション、ショートもサードを守ることができるの選手をもらうしかありません。
しかし、そうなると二軍の守備陣が崩壊する恐れがあります。 
しかし、ここはチーム事情。
戦力の分散を避けます。
二軍のポジションを無視して、一軍に必要な人材を求めます。
明らかに二軍は崩壊するでしょう。
そこを快く承諾してくれた若き二軍監督に感謝です。

レンのショートにアオト、ユウキのサードにソウスケをいれます。
3年後の三遊間を少し想像しましたが、今はそんな余裕がありません。
この配置が上手くいくがどうか?

まずは、いきなりの柳津さん。
昨年の秋の新人戦から、戦いを挑めばはじき返されてきました。
我々にとっての、難攻不落のアイガー北壁とも言うべき存在。
選抜の盟友ではありますが、今日は目の前に立ちはだかる強敵です。
そこにきて、フルメンバーではない布陣。
はっきり言って、ボコボコにされる準備はしていました。
しかし、アオト、ソウスケ、なかなかどうして堅実な守備をみせます。
そこにきて、バッテリーが踏ん張る。
その象徴が初回、立ち上がりの不安、ランナーをふたりも背負ってしまいます。ここで崩れると一気に行ってしまいそうな展開。
しかも、スリーボールと絶体絶命。
ここでのファーボールは、負けを大きく引き寄せてしまいます。
しかし、ここからが今日のユナと高田イーグルスを象徴するプレーになります。
後がない。
となれば、やるしかない。
腹はくくったようです。
スリーボールの崖っぷちから、ストライク3つ。
最後は渾身のストレートで空振りに切って取ります。
腹をくくったといったのは、ユナは「いわゆる、置き」にいっていないことがわかったからです。
全力で投げている。
ここに、勝つためのチャレンジを恐れない、
という今日の高田イーグルスの覚悟が見えました。
一歩も引く気はねえぜ!
ユナのストレートがそう言っています。
後続を断ってゼロに抑えます。

これで、今日はもしかしたらいけるんじゃねえ!という、いい錯覚に陥ります。
これ、大事です。守りに入らない。
援軍の来ない籠城戦を選んではいけません。
強大な敵だからこそ、討って出る!
強敵を前にして、ヤバイやばいと及び腰になるよりは、これいけるぜ、いける!とがんがん前にでる。
ユナとシュンペイのバッテリーも安定しています。
そして打ち取った打球を、若い守備陣もきちんとあたりまえにアウトにできている。

初めてベンチにはいったユウヤコーチが気づきました。
バントの構えをしたバッターに対しての、サードソウスケのチャージが早いと。
私たちは、何の指示も出していません。
そして、ソウスケが前にでると、当たり前のようにサードベースにカバーに入るアオト。
ソウスケは、アオトに打ち合わせも、声かけも、視線さえも送っていません。
それでも、こういうシフト、陣形を組むことができている。
保護者コーチが、ライトのはじっこでノックをしいた成果がここに現れています。
こういうプレーが、指示を出さなくても、状況をみて自分で考えてできるようになっている。
ユウヤコーチもそれに気づくことができている。
子どもたちががんばり、そのがんばりに気づくことができる大人がいる。
三者三様を、ベンチの奥から督戦していていると、づくづくいいチームだと思います。
俺たちのチームはいいチーム。
そう思うと、なんかぐっとこみあげてくるんですよね~。泣いちゃう。
試合中に泣かせるのはやめてほしいですね。最近こういう場面が多いんです。
バッテリーの安定が守備の安定を生み、さらにエースが踏ん張ることができるという相乗効果。
結果、自分たちのペースで戦えました。

これが功を奏して、試合の終盤までゼロ対ゼロにもつれ込みます。
本当は、シュンペイあたりの1発があれば、なおよかったんですが、それは高望み。
柳津のエース、ハルもシュンペイの時はギアがあがります。こいつには絶対に打たせないというエースの意地が見て取れました。

終盤まで0:0。
高田イーグルスとしては、引き分けでも御の字……という少しひいた気持ちのスキを突かれたのかもしれません。
こういう緊迫した瞬間の経験値の差が出たと思います。
0:0というのが、逆に緊張感を生んだのだと思います。
守りに入った。
ここにきて、ソウスケ、アオトに難しい打球が飛びます。ランナーを出してしまう。
それでも、集中力を切らさず、声を切らさず、立ち向かうふたり。
こういうのをみると、なんかまた泣けてくるですよね、最近。
ひたむきに頑張っている子供たちをみると、耐えられない。
頑張れ!とエールを送ることしかできません。

ランナーを2.3塁に背負いながら、なんとか2死まできました。
あとひとり打ち取れば、時間的にドロー。
最後の最後に立ちはだかるのは、エースのハル。
対するユナのギアもマックス。
ここは、頑張ってきたちびっ子たちのためにも打たれるわけにはいきません。
うなる剛球、空を切るバット。
つばさえも飲み込めない緊張感。
ここまでは、ユナの球威が、投げ込んだコースが、ハルを凌駕しています。
ハルもたまらず、ツーストライクまで追い込まれます。
ハルのようないいバッターをもう少しでおさえるレベルにまでユナは到達しています。
あと1球。
あと1球でハルを討ち取ることができる。

ひゅ~ぅ。
坂下東小学校グランドに、静寂の秋風が吹き抜けていきます。

ここまでいろんなことがありながらも、全力で駆け抜けたユナ。
彼女が闘志を燃やして見つめる先には、シュンペイのミットしかありません。
あとは全力で腕を振るのみ。
刹那。
パキーンとはじき返したハルの打球はレフトへ。
ユナとシュンペイのバッテリー、ソウスケとアオト、そして私たちの希望を見事に打ち砕くホームランとなりました。

くぅ~、クソー、んー、ぐぁー、やられたか!んー。

やるな、ハルぅ!
負けたことを残念に思いながらも、ユナとシュンペイの全力をはじき返した、好敵手を素直にほめたたえることができる自分がいます。選抜の影響ですね。

もう少し、もう少し、もう少しで、柳津さんという壁を乗り越えられたかもしれない。
アイガー北壁、攻略寸前でした。
もう少しのところまで来ています。
しかし、よくぞここまで追い詰めました。だって、ユウキとレンがいないんですよ。
フルメンバーではなく、このメンバーでよくぞ追い詰めた。
負けたことは、確かに悔しいですが、みんなの顔はすがすがしかった。
俺たちはやれる!という自信が彼らの表情から見て取れます。
アオト、ソウスケの顔がまたたくましくなりました。
彼らは確実に将来の高田イーグルスを背負っていく人材になるでしょう。

窮地の時こそ、そのチームの真価が問われる。
最終回、総崩れになりそうな時、顔面蒼白なソウスケとアオトたち。
そのルーキーを大丈夫だと、支えた6年生。
先輩風を吹かすことなく、いいプレーをした下級生をほめちぎる。
取れなかったボールを、きちんとカバーする。
まさに融合。
チームというのは、こういうものなんです。このメンバーもいいチーム!
そして彼らは、すでに次を見据えています。
つぎは、失敗しない。次こそ、負けない。次こそ、ハルを討ち取りましょう!
少しずつでいい。少しずつ、階段を昇っていくことにしましょう。

この後、坂下ヒーローズさんは、高田イーグルスもなしえなかった、柳津さんを破る快挙。
その坂下Hさんを、高田イーグルスは撃破します。
勝敗で3チーム、一勝一敗で並びますが、失点差で柳津さんが、決勝へ。
イーグルスは、失点差で坂下Hさんに負けてのリーグ3位となりました。

負けはしましたが、いい負け方。
次につながる負け方です。
必ず、次の活かして見せます。

さぁ残すフルメンバーの大会は、11/13 関柴さんの大仏杯のみ。
全力を尽くします!







何年もスポ少をやっていると、
あぁ~やっぱ神様っているんだなぁと思わせてくれる場面に遭遇します。
努力に努力を積み重ね、何回も何回も失敗して、何回も何回も涙に暮れる。
そのたびにまた、立ち上がって立ち向かう、ひたむきさ。
私はそういう子にこそ、いい結果が訪れてほしいと常々思っています。
しかし、そこは勝負の世界。
相手も本気です。
こちらに気を使って負けてやる筋合いなんか、みじんも無いですし、その子の背景すら分からないでしょう。
それは、私たちも同じ。
忖度無し、筋書きのないドラマ、真実だからこそ、面白いし、ひとのこころを揺さぶるのだと思います。

そして、今年もその瞬間、神様のいる瞬間に出会うことができました。
ほおのき杯、只見さんに敗れての新鶴戦。
同点で迎えた最終回、トウマが先頭バッター、ライト前ヒットで出塁します。
この試合、フルメンバーではなく、美里イーグルス単独チームで戦ってきました。
いつもの高田小学校の六年生の守備陣がいない。
そんな中でも初回にやまばをつくり、大量リードに守られてきましたが、それもつかの間。
こちらも崩れて最後の最後に追いつかれる展開。
流れはむしろ、新鶴さんにあったかもしれません。
そこをなんとか、イーブンにして迎えた最終回の攻撃。
トウマが口火を切りました。
そして、アウトを取られながらもなんとか、スコアリングポジションにまですすめた。
ここで、迎えるのは我らがエース、ユナ。
あえて下げた打順に置いた意味がここで発揮されます。

ここで、私は思うんですよね。
「めぐりあわせの妙」っていうのがあると。
宇宙の森羅万象の法則の中から、この日の、この時間に、このメンバーと一緒に戦って、そして今、この打席にユナがいる。
それをつかさどる、一翼を監督は担っていると私は思っています。
監督を経験した人ならば、思うはずです。
この打順にしたのは、俺だと。
ナイス、俺!と心の中でひとりガッツポーズをしたに違いありません。
なので、今回は小島監督の陰のファインプレーですね。

そして、みんなの思いをバットにのせて、振り切ったユナの打球は、右中間へ。
美里イーグルス単独チームに勝利を呼び込むサヨナラヒットとなりました。
初球を迷いなく振り切ったボールは、芯をとらえた証拠となる乾いた打撃音を残します。
打った瞬間にヒットを、高田イーグルスの勝利を確信します。
喜ぶベンチ、応援の保護者の拍手喝采。
塁上で笑顔がはじけるユナ。
こういうのなんです。

こういう光景を、私はサードコーチャーボックスからパノラマで見ていました。
そして、また思うんです。
あぁ、神様って本当にいるんだなと。いてくれるだなと。
がんばっている人に、がんばってきた人に、ちゃんとご褒美を与えてくれるんだと。
ストライクが入らなくて試合を作れれず、何回も何回も涙した泣き虫エース。
フルメンバーのバックに守られずとも、大量に点数を取られてもなんとか試合をもちこたえた。
そして、最後にやってきチャンスでヒットを放つ。
そのチャンスをきちんとものにしたユナはすごい。
魂がふるえます。
こういう光景は、私にソフトボールの、強いてはスポーツの可能性、人の可能性を信じさせてくれます。
やればできる。
やってきた良かった!
積み上げてきたことは無駄ではなかった。
心から楽しいと思える。
それを証明してくれるもの、
それは、ユナの笑顔であり、みんなの笑顔です。
大学のゼミの卒論ばりの、出だしてはじめさせていただきます。

ほおのき杯におけるバッテリーの考察

寒風土砂降りのほおのき杯。
只見戦をバッドコンディションの中で敗れました。寒さと敗戦のダブルショック。
特にエース、ユナはボロボロです。
暖かい車で着替えて、あったかい飲み物をのんで、メンタルをあっためるしかありません。
大丈夫、ユナなら大丈夫!ボロボロになったメンタルを回復するのは、やはりマウンドしかありません。

ほおのき杯は、なるべく試合経験を多くさせるために負けても終わりではありません。
敗者同士の対戦となりました。こういう配慮もありがたいですね。
相手は、盟友新鶴さん。
先週のじげんカップでは、高田小学校を入れてのフルメンバーで敗れています。
フルメンバーで負けている。
今日は単独美里イーグルスのみで戦います。
ユウキいない、タイチもいない。マナトもコタローもいません。大幅な戦力ダウンは否めません。
その中でどうやって戦うか?
ユナとシュンペイのバッテリーがおさえて、レン、レオ、ペイが打つしかない。
我々が思い浮かぶイメージはこれしかありません。

よっぽど気温も暖かくなってきましたが、まだまだ寒い。
この寒さの中、ユナ、立ち直ってくれたかなぁ。
新鶴さんの先攻で始まりました。
先ほどのボロボロを少し引きずっていますが、なんとか壊れたカケラを集めてユナは戦っています。
そのユナの難しいボールを捕ることで、キャッチーのシュンペイは存在感を示します。
大丈夫、俺が全部止めるよ!と黙って言っています。
あー、この二人ならば、このバッテリーならば大丈夫だなという確信を得ました。
それは、監督も同じだったようです。
監督の目を見て、うなずくだけでオーケー。
お互いに、大丈夫どなと思っているのがわかります。

さて、バッテリーは持ち直す見当がつきました。
しかし、相手はフルメンバーで負けている新鶴さん。
このバックならば、特に外野に飛べば危ない。
こちらの出血も多くなるでしょう。
それ以上に、相手に出血を強いらなくてはいけません。
こちらも得点を許すでしょうが、それ以上に取ればいい。要するにそういうことです。
細かいことは記憶していません、忘れましたが、この前散々手こずった新鶴さんのエース、タツキのコントロールが定まらないことに乗じて、なんか大量にリードを奪いました。
しかし、こちらのエース、ユナのふたたびコントロールに苦しむ展開。
そこにエラーが絡んで、5:5のまま最終回に突入します。
ここまでは、下級生まで総動員した単独美里イーグルスはよくやっています。さっき凍てつく寒さでブルブル震えていた子犬たちに元気が戻ってきました。いっきにおそいかかりますが、それもつかの間、あんなにあった大量リードがまったくなくなった。
高田イーグルスは裏の攻撃なので、まずは表の新鶴さんの攻撃をピリッとシャットアウトして、裏の攻撃につなげたいところです。
ここからはユナが踏ん張ります。注文どおり、表をゼロ封。裏のイーグルスの攻撃に勢いをつけます。
ここから、覚えています。
先頭バッターのトウマがライト前ヒットで出塁します。ライトゴロの危険性もあったので、走れーと絶叫したのはいうまでもありません。
さぁサヨナラのランナーが出ました。
この時点で、時間が過ぎています。そして同点。負けは、なくなりました。しかし、どうしても勝ちたい。このメンバーで勝ちたい。

晩秋の熱塩加納は、何かが起こる!
それは、いい結果におわることも、その反対におわることもありました。

さて、今回はどちらに転ぶか!
それは次回で。

銀河の歴史がまた1ページ。




青そで白地に金文字でEagles
久しぶりにこのユニフォームにそでを通しました。
このユニフォームは、美里イーグルスになってから二代目のユニフォームです。
初代は全国大会にいき、この二代目は県大会にいった。その証の福島県の刺繍が編み込んであります。
いろんな戦いの記憶がしみこんでいるユニフォームです。


コロナ禍で、ぐんと大会数が減っていく中、今年もほおのき杯を開催していただきました。
関係者の皆様ありがとうございました。
やはり大会となると、気が引き締まります。
思う存分に力をチャレンジできる場があると言うことだけでありがたいとしみじみ思います。
大会では、過去に対戦したOBや指導者の方とも昔話に花が咲きました。
今の中学校2年生が6年のころ、ほおのきさんとはしのぎを削りました。
秋の柳津での新人戦では、決勝で最後にあのエースに満塁ホームランを打たれました。
そこから、当時のイーグルスは目の色が変わった。今思えば、その甲斐があって、翌年の総体、白獅子と勝利を収めることができたと思います。
この切磋琢磨。
そしてまたグランドで、当時のコーチ、あのエースと、よく打たれた双子ちゃんに会うことができました。
みんな大きく成長しています。
あの世代のユウキたちは明日、県大会なんだぜ!と昔話に花が咲きます。これも縁をつむいでいくスポ少のいいところですね。
自分が指導してきた子供たちも、敵であった子供たちもまたどこかのグランドで会えたなら、それだけで私たちのやっていることは間違ってないと思えるような気がします。そして、それは自己満足でいい。もっと言えば、私にだけ、わかればいいんです。

さて、試合はといえば、初戦は只見スポ少さん。
きけばほとんど6年生という完成されたチームです。
さて、単独美里イーグルスは、バッテリーとショートはしっかりしているもののその他は不安要素しかありません。
理想としては、少ないチャンスを活かして得点し、バッテリーの投手力で押さえる。これしか勝つイメージがわきません。
ときおり吹き付ける冷たい秋雨。
コンディションはいいとは言えませんが、何とか立ち上がりを最少失点で押さえます。
打たせるところはショートのみという理想的な展開。
すかさず裏には、先頭のレンが出塁して、レオに送らせたいとこですが三振。
盗塁を仕掛けて、スコアリングポジションに送ったところで、この人が打たないと始まらないというシュンペイ。
キャノンボール、火を噴くような打球でレフト線を破ってホームランで2点、逆転します
初回だけ見れば勝っています。
しかし、秋雨はどんどん強くなります。
守る単独美里イーグルスの守備陣から体温とやる気を容赦なく奪っていきます。
この寒さの中で、眼光をするどく、集中力を切らさないのは、レンとバッテリーくらいか。
後は、さぁやめよう、あったかい温泉にいこうといったらひょこひょこついて行く組だと思います。
正直なところ、試合なんてどうでもいい。寒くて仕方がないというレベルだと思います。
とにかく寒い雨。指の感覚を奪っていきます。
そうなると、エース、ユナのコントロールが定まらなくなります。雨あしはどんどん強くなる。
早くあがりたいのに、ストライクが入らないユナは完全にあせりました。自分でもどうしていいかわからない。
なんとか、もちこたえていたものの、バックネット越えの手元狂いを連発するようになったところで、監督に打診しました。
これはもたねえぞ。これ以上やるとメンタルもやられるぞ、どうする?
控え投手はミソラしかいません。
そのミソラもこんな寒い雨の中で投げさせることはユナの二の舞を演じることになります。
こうなったら、レン。
いっさい投球練習もしてきませんでしたが、よくあそびで投げています。
何より私たちが買ったのは、この寒さの中、集中力を切らさず、なおかつ体も動かせるのはレンしかいないという消去法からでした。
この場面での選択肢はひとつしかなかった。
5球の投球練習で、感覚を確かめます。
レンはこういう場面を楽しめる奴です。
だからこそ頼もしい。
2死で相手は4番。
いい振りをしています。
ここで打たれれば、体力的にも気力的にも美里イーグルスは敗北するしかありません。
レンは、感覚のみで4番に立ち向かいます。
そして、スリーボールながらツーストライクと追い込む。最後はたしか三振に打ち取ってスリーアウト。5点に押さえました。
この寒さ、雨で思うように投げられないユナはベンチに帰ってきて号泣。メンタル、フィジカル両方メタメタでしよう。
この後もレンでいくしかありません。
そして、こちらの守備が終わると同時に天気も回復、日が差してきます。
なんだったんださっきのは!
俺がなんか悪いことしたか?と天に悪態をつきますが、それは詮無いこと。
なんとか、おいつきたいところですが、ここからは下位打線。簡単に押さえられます。 
寒さで試合どころではないというのが本音でしょう。
なんとかプレーできているという状態です。

それでもレンは投げることが楽しそうです。
スクランブルにもかかわらず、嬉々として投げています。こういう奴がいてくれると助かります。
只見打線をゼロ封していきます。
しかし、一度手放した勢い、流れは終始只見さんのペースでそのまま終わりました。
単独美里イーグルス、初回にのみ可能性をみせる攻防を繰り広げましたが、天候にも恵まれず万事休す。2:6で敗れました。
メタメタにやられたユナのメンタルが心配ですが、立ち直ってもらわねばなりません。
次は敗者同士の対決で新鶴さんとふたたびまみえます。
単独美里イーグルスにはユナのチカラが必要です。
雨と涙に濡れたユニフォームを着替えて、ふたたびマウンドにもどってきてもらわねばなりません。
ユナならばできるはず。
次回、新鶴戦ふたたびです。



逡巡(しゅんじゅん)。
迷いを巡らすこと、ためらうことを意味します。
このじげんカップ、今シーズン1番に迷う場面が二度ありました。それは……

坂下さん、新鶴さんとのリーグ戦になった時点で、高田イーグルスは2連勝での勝ち上がりを目指していました。
しかし、初戦の坂下ヒーローズ戦を5:6で落としてしまいました。
高田イーグルスが決勝に進むための条件が複雑になってしまいました。
その条件を正確にとらえて、どうするべきかの最善を探るのが指導者の役目です。
まずは、三チームが一勝一敗でならぶこと、そして失点差で上回ることです。
新鶴さんには、坂下ヒーローズさんに勝ってもらわなくてはなりません。ここは他力。
そのうえで、高田イーグルスが新鶴さんに勝つこと、なるべく失点を抑えて、新鶴さんの失点を多くするように得点するというかなりの狭き門となります。
規模は違いますが、今のワールドカップアジア予選の日本代表のような心境です。

新鶴さんの奮戦により、6:4で新鶴さんが勝ちました。
となると、高田イーグルスは、新鶴さんに勝つだけではいけません。
最低でも2点以上離して勝たなければ決勝には進めません。3点ならばなお良し。
厳しい条件になりました。しかし、やるしかない。やるなら今しかねえんです!

得点を多く取るためには先攻を選ぶことになります。もし後攻で僅差で勝っていたならば、裏の攻撃は出来ません。その場合、2点以上離すという条件をクリア出来にくくなります。
先攻をとって引き離すしかありません。

そのためにはこの新鶴さんの初回が大事になってきます。
投球練習を見る限り、コントロールが定まらない様子。ここは見ていった方がいいか?
そういいながら、初球攻撃でサードフライに倒れるレン。
新鶴さんのピッチャー、タツキの立ち上がりを援護するかたちになりました。
戦術的には、ドラクエの作戦であれば、じっくりいこうぜ!の場面です。
しかし、レンの頭の中は、がんがんいこうぜ!だったようです。
相手ピッチャーの不安定になりやすい立ち上がりで、様子を見ることを徹底させるべきでした。
レンであれば、ツーストライクまで見させることもできます。
バントという選択肢もあった。
なんでもできるレンだからこそ、自由を与えない方がよかったのかもしれません。
ここは長打よりも、最優先は出塁でした。
レンならば大丈夫と高をくくっていた我々の責任でもあります。
次回は同じ轍を踏まないようにインプットしておきます。
レンが簡単に倒れたことで、なんとなく流れが悪くなりました。
続くコタローが会心のピッチャー強襲を放ちますが、タツキが抜群の反応で捕まえます。
このコタローの完璧に捉えたり当たりが抜けなかった……
反応したタツキを褒めるしかないんですが、これでさらに流れは新鶴さんに向きました。
あら、やべーな。
ここは簡単に三人で切られるわけにはいかねえなぁと思っていると、我々の意図をくんだユウキがセンター前に運びます。
こういうところが、ユウキなんです。
我々が、というかみんながこうして欲しいとおもっている通りのことをやってくれる。
今回も三人で切られれば、完全に新鶴さんに流れがいってしまうところでした。
そして、4番のペイ。
ツーアウトなので、長打を期待してしまいます。
ここは狙っていい場面。
しかし、アウトコース中心の攻めで三振してしまいます。相手ピッチャーのタツキ、荒れ球ですが、要所要所ではいい球がきます。
やるな、タツキ!
とシァアなみにつぶやいてみますが、得点を捕りにいったところを押さえられてしまいました。
またしても流れに乗れない。
またまた暗雲が垂れ込めてきました。

そしてそれは裏にまで波及します。
ここはピシッと抑えて、次の回の攻撃につなげたいところです。
先頭をセカンドゴロに打ち……あっ、セカンド名手アユキがシングルキヤッチで捕りに行ったところを、トンネルしてしまいます。
ん?どうしたアユキ。ショートバウンドの反発の強さ、ゴロへの入り方のリズムを誤ったようでした。
やっちまったと痛恨の表情。
幸いカバーが早かったので一塁に止めます。
んー、またまたなんか悪い雰囲気。
先頭バッターを打ち取ったのにアウトカウントが稼げない。
ピッチャーのエンジンがかかるのが遅くなってしまいます。
こういう時に、当たり前のことを当たり前に出来るチームが強いんです。
ただ、セカンドアユキはまだ四年生。
彼に全ての荷を背負わせるのは間違いです。
こういう失敗をして、身にしみて覚えていくもの。
今後彼はこういった強い打球への警戒心が一層強くなるでしょう。それでいいんです。
このエラーした経験を次に活かす覚悟をもてば今回の失敗は無駄にはならない。

しかし、ミスから始まってしまった。
続く2番は押さえなくてはいけない。
これも打ち取ったあたりが、ライトにあがります。
レオ、落下点に入るのが遅いなぁ……ん、ギリギリだな、あっグローブに入ったな、よし!ん?
ポロリ。
あぁ~、あちゃー。
またしてもエラーで出塁を許す。
エラーがエラーをよぶの負の連鎖。
これが始まってしまった。
さて、うちのエースのユナは大丈夫かなと見てみる。
悲愴感はなく、笑顔もひきつってはいません。
目の前のピンチに立ち向かおうとしています。
まっすぐ見つめる先にはシュンペイがいてくれます。
バッテリーはあたふたしていない。
大丈夫です。このふたりならば大丈夫。
そしてこのバックならば大丈夫。
無死一二塁で、三遊間に致命傷になるくらいの強い打球が飛びます。
抜ければホームラン性のあたり。
一二塁で3番バッターなので深めに守るショート、レンのゾーンに入りました。
逆シングルで押さえて、すかさずサード送球。
ほぼ全ての動きが完璧な所作。
レンの動きにはいっさいの無駄がありませんか。
ここで、キャプテンという役割のレンがチームを救うくさびになりました。
ここでレンが食い止める!
なんとか1点でしのぎます。

2点差で勝つという厳しい条件を背負っているのに、さらに出血をしいる闘いになります。
現段階で3点以上取らなければならない。
どこかでビックイニングを作らなくてはいけない。
この意識にとらわれはじめます。
このマスト(~しなければならない)の意識は、のびのびプレーに鎖をまきつけます。
経験上、このしなければならないという考えになった時点で、縛られてしまいます。こうなると中々いい結果はでてくれません。
これを打破する何か欲しいところですが、2回表の高田イーグルスの攻撃、はやくも連続三振で2死となりました。
こちらが落ちていくと反対に上り調子の新鶴さんのエース、タツキを前に打つ手がない。
ユナも追い込まれてしまいます。
ここはユナに任せるしかない。
ユナも追い込まれて、帰って集中力が冴えてきたようです。
きわどいコースを見極めます。
そして、選んだファーボール。簡単に三人では終わらないという高田イーグルスの強固な意志を示してくれました。
と、ここから少し流れがかわります。
続く、アユキにもファーボール。
そして、ラストバッター、レオ。
その背後には、ゴォゴォゴォゴォというジョジョばりの「俺に打たせろ!俺まで回せ!」というオーラをまとったレンが鎮座します。
レオが決めてもいいんです。長打力があります。しかし、この荒れ球に対して、何でもかんでも振るタイプのレオは分が悪い。
なんとかレンまでまわしてくれ~。
みんなの思いがひとつになります。
それが通じたのか、レオはデットボールで出塁することができました。 
さぁ、さぁやってきました千両役者。満を持して高田イーグルスのレンを送り出します。
ここで満塁ホームランがでれば、4点をとることができます。
それを狙ってできるチカラがレンにはあります。
それを新鶴さんもわかっている。
なので、ピッチャータツキはギアをおもいきりあげます。
自然とチカラが入るタツキ。
球威はありますが、すべて高めに浮いてファーボール。押し出しで1点。
次のバッターは、コタロー。
長打力よりもミート力、いろんな状況への対応力を買ってこの2番という打順に存在します。
さぁ頼むぞコタロー。
ピッチャーはコントロールに苦しんでいるから、ボールを打たないように、じっくり……
初球のアウトコースのボール球に手を出してあっさりアウトでスリーアウトチェンジ。
じっくりいけという前に終わってしまいました。
結果的には、レンとの勝負をさけて、1点をくれてでもコタローと勝負をした新鶴さんの勝ちです。
ここはもっと点数が欲しかった。
相手ピッチャータツキはコントロールに苦しんでいました。
レン対してもストライクが1球も入っていなかった。
試合が終わってからの反省点として、初球から行くときとじっくりいくときの徹底が必要だと思いました。

1:1の同点。
この裏の新鶴さんの下位打線、先頭とその次を三振できってとり、ますが、ラストバッターをファーボール。なんとか1番を打ち取って、ゼロで抑えます。首の皮一枚でつながっています。
まだのぞみはある。

時間的に3回が最終回となります。
2点をとって、裏を守り切ることが決勝進出の条件。
この回の上位打線、先頭は3番のユウキからです。
ユウキならば、なんとか出塁してくれるだろうという期待が膨らみます。
前の回をユナとペイのバッテリーとバックがきっちりゼロで押さえてリズムを作っています。
そして、ここ最近のユウキはバッティング絶好調。
私はチームとして、みえない相乗効果があると思うんです。いいリズム、流れというのがピタリと歯車のようにはまる時あります。
ギアボックスのように、小さい力を大きくできる時がある。
もっているチカラ以上のことができる場合があると思うんです。
出塁してくれるだろうなという我々の期待を大きく裏切ってホームランにしてしまうユウキ。
打った瞬間にホームランだとわかる打球でした。
こいつはすげぇなぁと、サードベースを駆け抜けていくユウキを見て感心するしかありません。
ユウキのホームランが高田イーグルスの消えそうな闘志の炎にガソリンをぶちこんでくれました。
ボルテージはどんどん上がります。
そしてやってくるあの雰囲気。
「もしかしたら、俺たちやれるんじゃねえ?」
この錯覚にも似た根拠のない自信。盛り上がるあの状態。
そして、次打者はシュンペイという好打順です。
ペイの顔は俺もやってやる!という闘志に溢れています。
目の前でユウキのホームランを見てます。
ぁぁ~、チカラ入ってんなとすぐ見て取れる。
一息ついて肩の力を抜けといいましたが、おそらく焼け石に水でしょう。
まぁこの場面は一発狙っていいでしょう。
ここはシュンペイに頼むしかない。
長打狙いで、きっちりふりきります。
力でレフトに運び二塁打とします。

続くタイチ。
先の試合でタイムリーヒットをセンターに打っています。ぶんぶん振り回すだけではなく、チームバッティングもできるということを証明してくれました。
ここはヒットが欲しいところですが、ボールをきっちり見極めてファーボールを選びます。
よくやったタイチと小さいガッツポーズ。
こう土壇場でボールを見極めることができるようになったんだなあとタイチの成長を確認します。


さて、タイチが帰れば文句なしの決勝進出です。
この大事な場面、ノーアウト一二塁でマナト。
ここ最近、打撃フォームの改造に取り組んでいました。
前までの当てるだけの手打ちの打撃とは明らかに違ってきています。
打球の速さ、強さが違う。
これまでのマナトとは違うぞというのを、この厳しい実戦の中でこそ発揮してほしいところです。
しかし、タツキも押さえるのに必死です。
マナトにのぞむのはヒット。
ヒットでなくても、ゴロの進塁打。
三振、フライはだめです。
タツキとマナトの激突、ここは三振でした。
その振りを見るに、まだ迷いがあります。
打席に立つ前に、一か八かか当てにいくかの方針の整理、こころの整理がすんでいない様子。
そして、実戦ではなかなか結果が出てくれていません。
なのでますます自信をなくしていく。
それが顔に出てしまっています。
マナトもこころのプールが浅い。
それでもいい、大丈夫だ、信じて進め!
そういうところのフォローが今後も必要だと思いました。
1死一二塁。
ここでエースのユナ。
ユナが倒れると2死一二塁になってしまう。
そうなると1点をとることが更に困難になってしまいます。
ここは仕掛けるしかない。
シュンペイの目をみて、行けと無言のメッセージを送ります。
このあたり、あのほおのき戦のテンカイを思い出します。
今年のチームも目で会話ができまでになったきた。感慨深い。
シュンペイが三塁に到達。
1死で一三塁。ゴロで待望の1点をもぎ取ることができます。昨年の幅を広げました。
しかし、ユナはセカンドフライ。
内野フライではランナーは帰れません。

2死で一三塁。
なんとしても1点をあげなればならない。
バッターは8番のアユキ。
どちらかというとつなぎ役の四年生。
この大一番ではかなり舞い上がっていることは容易に予測できます。
となると、仕掛けなければなりません。
サードコーチャーボックスから、監督を見ます。
監督も私と同じ意図を理解したようです。
それでも迷いました。一回目の逡巡。
タイム!
ん?タイム、かけちゃうかぁ。
ここは私であっても迷う場面となりました。が、監督はタイムをかけました。
一塁ランナーがタイチ。器用なタイプではありません。シュンペイもあせるタイプ。
ここは攻撃のタイムを取ってでも確実に作戦を伝えることを監督は選びました。
タイチには誘導、おとりの進塁を指示し、シュンペイにはタイチがひきつけるスキをついて本塁に突っ込むことを伝えました。
この指示の場面を見ていて、これは監督の確実性がより高いタイムをとってからの指示の方がいいと思いました。
そのほうが両ランナーに迷いが生じない。
相手チームが何か仕掛けてくるとわかってしまっても、作戦を確実に伝えることを選んだ監督が頼もしく見えました。
自分で考えて立案、実行する決断力。
教え子ながら彼も確実に成長しています。

仕掛けます。
タイチをすすすーっと出す。
しかし、新鶴さんのキャッチャーのケイシンもすぐには投げない。
タイチがおとりとして機能しません。
ここでピッチャーサークルに素早く投げられたらば、帰塁するか進むかの二択となり離塁アウトの危険性も出てきます。
おとりをすぐにあきらめて、タイチを進めます。
2死で二三塁。
おとり作戦は未完に終わりました。
アユキ、さらに不安の表情が見てわかります。
さて、どうする?どうする、どうする?
サードコーチャーボックスからシュンペイを見る。
小声で、いきますか!
突っ込んで失敗したら、即終わりのこの状況。
行けというにもかなりの勇気がいります。 
今日二枚目の逡巡、迷い、どうしていいかわからず、もう一回シュンペイを見ます。
闘志があふれ出ています。
よーし、わかった。やろう!
ここでやってくるとは、我々以外にわかるはずもない。奇襲としては最高のタイミング。
よし、ここはシュンペイにかけました。
ホームスチールを敢行します。
いけーとシュンペイの背中を押します。
突っ込むシュンペイ。
ホームイン……と思いきや主審にボールが当たっていました。
当たっただけなら、インプレーですが、拾ってしまった。
その時点でボールデッドになり、シュンペイのホームスチールは無効になりました。
起死回生、渾身の仕掛けが空振りに終わります。なんという、何という不運。
もう1球待っていれば、もう1球早く仕掛けていれば……
高田イーグルスにふりかかった不運を呪うしかありません。
奇襲失敗。 
この後、2回続けてのホームスチールは私にも決行できませんでした。 
無策。
アユキに任せるしかありません。 
この重要な場面を弱冠四年生に任せるしかない場面。そうであったとしても、アユキも腹はくくったようです。
果敢に振りにいきますが、空を切る。
追い込まれました。
そして、投げた瞬間にストライクの高さだとわかるコースにスローモーションで、タツキの放った球が入ってきます。 
アユキ、あ~ぁと思っても手が出ません。
見逃し三振でゲームセット。
アユキにもストライクだとわかったはずです。
しかし、体が蛇ににらまれたカエルのように反応しなかった。反応できなかった。
自分の目の前をチームの息の根を止めるストライクが入っていくのに、なすすべがない。 
とんでもないプレッシャーがのしかかっていたはずです。
しかし、そのプレッシャーに負けてはいけない。
ただ食われるだけのカエルであってはいけない。
今は負けてもいい。
今はまだ手がでないかもしれない。
ただ、この見逃し三振をアユキは忘れてはいけません。
いつか、こういう重大な場面で起死回生の一打を放つ役割が必ずめぐってきます。
いつかくるその時のために、この見逃し三振を次に活かさなくてはいけません。
そうしないと、アユキはもちろん、チーム全体、みんなが浮かばれません。
さて、アユキにはどういう練習をしたらいいものかを考えます。
1番のくすりは、こういう場面を何回も経験させること。
そして、少しずつでもいい結果が出るように、いろんなチャレンジをしていくこと。
少しずつ、少しずつ自信という名の武装をしていきましょう。
そうすることで、いつか蛇を倒すカエルに育つはずです。
それはなにもアユキだけではなく、高田イーグルスのひとりひとりが、そういうカエルの戦士にならなくてはならない。
我々は、そういう気骨のあるカエルのこころざしを彼らの中に育ていきましょう。

あの土壇場の中で、
「コーチ!(ホームスチール)行きますか!」
シュンペイが見せた気骨のあるカエル。
数年前は、打てなくて泣き、守れなくて泣き、負けて泣いていたシュンペイ。
そんな彼もいろんな強さと優しさが備わってきました。
つくづくソフトボールとはそういうひとりひとりの強さの掛け算だと思います。
ひとりがもっている強さの幅。
その最大のところを引き出せば、実力以上を発揮する。
その反対もしかり。
コンスタントに幅の右側の大きいところを引き出せるように我々は練習しています。
ピンチの時にも、チャンスの時にもそれができるかどうか?
それはこころの持ち方に依存しています。
今回の新鶴戦、土壇場で見せたシュンペイの気概。
あれは成功してほしかったなぁ。
しかし、今度こういう場面がきたならば、シュンペイは成功させるでしょう。
そして、シュンペイだけでなく、メンバー全員にも同じ気概をもって、来るべき時に備えるべく準備をしていきます。

かくして、第2回じげんカップ、高田イーグルスは予選敗退で幕を閉じました。
貴重な主催大会で結果を残すことはかないませんでした。
それはそれで、残念で申し訳ないと思います。
しかし、この結果を次に活かすこと。
あーぁ負けた負けた、仕方ない、残念だ、それだけで終わらないこと。
これこそが、保護者のみなさんが高田イーグルスに期待していることであり、われわれ指導者も、選手自身もそうありたいと思っています。

またしても地べたにはいつくばった、カエルたち。
ひとりひとりのカエルは何を思うのでしょうか?
晩秋の空。
次週、ほおのき杯、高田イーグルス単独チームで挑みます。
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