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時に笑い、時に苦しみ、時に涙する。すべてはグランドへ。 ソフトボールを通して成長していく小学生とその保護者、スタッフの物語。
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最終回。
4:6、点差は2点。
絶対に逆転するというみんなの思いが、少しずつ実現していきます。
一生懸命にやったものが、必ずしも実を結ぶとは限らないことはわかっていますが、どうか今だけは、今日だけは、その夢を実現させてやりたい。
信じれば、叶うという実体験をこの子たちにさせてやりたい。
その思いでした。 
ワンチャンスを作らせてください!
誰にでもなく、つぶやきます。
そのためには、猪苗代さんの表をやはりゼロに抑えなくてはなりません。
ここにきて、選手にも疲れが見えます。
それはそうそうです。
この熱さの中で、2試合目の終盤。
疲れのない奴なんていないでしょう。
ミソラにも色濃く疲れが見える。
そんな中で、彼女は必死にトウマのミットをめがけて腕を振ります。
しかし、先頭バッターをファーボールで出してしまいます。
握力がなくなってきている。
ボールも時折、高めに甘く入ることが増えてきました。
トウマも疲れから、単調な組み立て。
パスボール、パスボールの連発。三塁まで進まれてしまいます。無死三塁。
状況は最悪。
次の1点は、イーグルスにとって致命傷になります。
みんな疲れている。
限界は近い。
この表面張力にも似た状態。
小さなきっかけで、一気に状況は変わります。
崩れるか、持ちこたえるか?
私たちにできることは、彼らを信じて、少しでも助けになるように、守備位置やアウトカウント、ランナーの場所など10人目の選手として、ベンチ全員が声を出すことです。

これ以上のパスボールは避けたい。
ひと息つかせる。
タイムを取りました。
内野を集めて、ひとりひとりの顔を見つめます。
疲れはありますが、目はやる気に満ちています。
自分たちの勝利を信じています。
ミソラもあっぷあっぷながら、なんとかしようとしています。
トウマもこの状況を理解しているはずです。
ひと息はいれた。
大丈夫!
ランナーは三塁にいることを、再度、みんなで確認しました。
私ができるのは、ここまでです。
パスボールもできない。
1点もやれない。
この状況を確認しました。
後は彼らに任せます。

後がない。
そういう状況は、確かに彼らを強くしました。
特にバッテリーを。
討ち取るしかない。
打たせない。
となると、三振を取るしかありません。
疲れから、あれこれやる余裕はこの二人にはありません。
ミットめがけて、思い切り投げこむだけ。
なんて、危険なピッチングだとは思いますが、今は、この二人を信じることしかできません。
できることといえば、よし、いいぞと、ベンチでも鼓舞すること。
こうなったら、褒めて褒めて褒めまくるしかありません。
みんなの声援を受けて、持てる限りのチカラを絞り出すミソラ。
ここにコントロールが再び戻ります。
早い段階で、追い込み三振を取っていきます。
しかし、空振りよりもファールが多くなってきている。ぎりぎりのところで交わしていきます。
一人切り、二人切ります。
トウマも必死にワンバンドのボールを止めます。
打たせない。
明確な意志が見えます。
3人目も三振にとって切ります。
よぉし!我がチームの全員が手を叩いて喜んだ!
そんで吠えたはずです。
笑顔で、帰ってくる選手たちをベンチに迎えます。良くやった!
おそらく最後の守備の最大のヤマ場を抑えました。
まだ、終わっていない、まだ終わっていません。
最後まで戦う意志のある顔が頼もしく映ります。

ラスト。
1番のアオトから。
アオトが出れば、ぐっと逆転は近づきます。
安定したコントロールでリリーフに入ったエースですが、最後の緊張感からか、乱れます。
スリーボール。
しかし、ここから立て直してきます。
ストライク、ストライク。
ここがエースたる所以でしょう。
最後もアウトコースにきっちり決めてくる。
アオトも食らいつきます。
セカンドゴロ。
しかし、セカンドエラー。
何かある!この回には魔物が潜んでいる。
私たちを勝たせようとしている。
そんな気配さえ感じました。
しかし、このキャッチャーからは普通に走れません。たけど、送りバントでは1点しか取れない。
さて、どうする?迷います。迷う。ここは迷った。

私のサインを見るアユキの刺すようなまなざし。
その目を受け止めた時、わかりました。
迷う必要などなかったんです。
迷っていたのは、私で、アユキに迷いはありませんでした。
アユキに任せればいい。
アユキに託せばいいんです。
2番のアユキの器用なところに賭けます。
相手エースもここが正念場とみるや、ギアを上げてきます。
意地と意地のぶつかり合い。
追い込まれますが、アユキも必死にファールで食らいつきます。
決めにくる。
そのコースをアユキは捉えました。
三遊間、ショート止めるのが精いっぱい。
ヒット。
アオトとアユキが繋がりました。 
打線として繋がった。
それは、イーグルスの命脈でもあります。
よっしよっしよっし!おし!
いいぞいいぞと、お祭り騒ぎのベンチ。

そして、満を持して先ほど見事なホームランの3番のトウマ。
一発でれば、逆転サヨナラです。
ベンチのボルテージは最高潮です。
こういう行け行けドンドンの時に打てるのが、本当のスラッガーです。
WBCの村上とトウマが重なります。
打て、打て、打てるぞ!
初球、引っかけます。打たされた。 
セカンドゴロ。
その間に、ランナーは進みます。
ホームランではなかった。しかし、進塁打は打った。
最低限の仕事はしました。
ワンアウト。


4番のミソラ。
ここは狙っていい場面です。
いままで、ためていたフラストレーションを一気に吐き出していい場面です。
集中しています。
いつになく集中している。
スウィングにも魂がこもっています。
そのスウィングが、パスボールを生みます。 
アオトが生還します。
結構なぎりぎりのタイミングでしたが、アオトのスライディングが見事。タッチがきてもかわせていたことでしょう。スライディングをしながら、左手でベースを触ります。かっこいい!
よーーーし!あと1点だぁ!
すかさず、アユキも三塁に行っていたのはいうまでもありません。
かなりの疲れもあるでしょう。
ミソラもチカラが入っている。
よく覚えていませんが、記録では1にヒット、内野安打となっています。
アユキは帰れなかった。
一三塁となり、ミソラが逆転のランナーとなりました。
スコアリングポジションに置く必要があります。
アユキはトリックプレーにはひっかからないでしょうから、ミソラに盗塁を指示します。
次のバッターは、シャープな打撃、好投手も苦にしないメンタルを買って5番に置いたハル。
いい打順の巡り合わせです。
なんとか、前にゴロを飛ばせば、サードランナーのアユキは帰ってくるでしょう。
あわよくば、ワンヒットでミソラが帰るという逆転の図も思い浮かべることができました。
頼む、頼むぞ、ハル!
トウマの次の長距離砲として、クリーンアップをになうことになるハルに賭けます。
しかし、相手が上でした。この場面で、タイミングをずらす効果的なチェンジアップを使ってくる。
たまらず、バットが出てしまいます。
止め損ねたバットに当たってファーストフライ。
振り切っての勝負をさせてもらえなかった。
これも、相手バッテリーの頭の良さ、狡猾さだと思います。
んー、ツーアウト!
お膳立てはしているんですが、もう一本が出ない。最終回でランナーを背負っている状態でも、ひるむ様子は見えません。
こちらも、選手を信じて送り出すしかありません。
6番ハルト。
上位と下位を繋ぐ役割として、打順をあげました。選球眼も良く、こちらの戦術を理解して動ける男です。
しかし、この場面、サインはありません。
打ての一点張り、これしかありません。
ボールから入ってきます。
次もボール。ベンチも盛り上がってきます。
次がボールならば、ファーボールも見えてきます。ボール。
スリーボールです。
相手バッテリーも気合いを入れ直します。 
ここから、立て直してくる。
ストライク、ストライクとして、スリーボール、ツーストライク。
五分に戻してきました。敵も然る者、いいバッテリーです。 
決めに来る。なんとかしろ、ハルト!
決めに来たボールはわずかに外れました。 
ファーボール。
満塁となりました。
最終回、二死満塁。 
ハルト、良く見極めました。
またもや、盛り上がるベンチ。
ここで、迎えるは最近よく、最後のバッターになるマナト。
この状況を理解しているのでしょうか?
打てばヒーローになれることは間違いありません。
反対のことは、考えなくていい。
ここに来て、ボルテージは最高潮。
初回に満塁ホームランを含むホームラン2本を食らって、身も心もボロボロになったイーグルス。
みんな下を見て、試合が始まったばかりなのに、既に絶望して泣いている選手もいました。
絶望のどん底に我々はいました。
そこからです。
そこから、少しずつ、少しずつ、這い上がってきた。
やるしかないという覚悟を確固たるものにして、ふたたび自信というなの鎧を一枚一枚装着してきました。
そして、一打逆転のこの場面を作った。
イーグルスの波がここまで大きくなるとは、誰が予想したでしょうか?
私たちも、信じていました。
10%くらいですが。
心がくじけても、いい場面を作って次につなげたいとは考えていましたが、本当にこういう場面を作ることができるとは。
限りなく、薄い可能性を鎖のように繋いでいる。
この子たちの信念のプレーには、本当に驚かされます。
曇りなく、前を見すえる彼らの目が、私に一斉に降り注ぐとき、こいつらと一緒にプレーできて、心の底から面白いと、悟ります。
こいつらとならは、やれないことなど何もないと覚悟が決まります。
後のこと、結果は考えません。
準備をして、やるだけです。

5:6
最終回、ツーアウト満塁。
その最後の矢となる、マナトを送り出します。
敵味方いろいろな感情が渦巻いています。
ここで、状況に押しつぶされることなく、自分を強く持つことができるか?
マナト、いつもそうですが感情をあまり表に出しません。
それそれで冷静だと思いたいところですが、いったん確認します。
攻撃のタイムをとって、マナトの目を見ます。
多少、恐れはありましたが、やってやるという覚悟が見えました。
打たなくては、負ける。
この状況をマナトは理解していました。
間をとって、確認して良かった。
我々にできることは、覚悟をもった選手たちの背中を押してやることだけです。
後は、マナトに任せるしかない。
全てをマナトに託します。
いけ!マナト!
イーグルスの全員がマナトに声援を送ります。
猪苗代さんもここは絶対に点数をやれないところ。
打たれてもだめだし、ファーボールもパスボールだめ。
こういう状況、球場全体がイーグルスの逆転劇を期待しています。
勢いはこちらにある。
流れはこちらにある。
限りなく、勝利の可能性を信じます。
勝負だ!

初球、ボール。
相手バッテリーも緊張しています。
次もボール。
一球一球、球場全体に、歓喜とため息が、入り交じります。
ツーボール。
打つという覚悟が揺らぐカウントになりました。
ここで、マナトに、もしかしたらファーボールもあるかもしれないという、もう一つの選択肢をもたらします。
選択肢が増えるということは、迷いに繋がるということです。
マナトの中に迷いが生まれました。
ギリギリの状況では、迷いは命取り。
しかし、ここはマナトに託しています。
迷ったとしても、もう一回、必ず打つというところに戻ってこれるかどうか?
技術うんぬんよりも、気迫と気迫と、意地と意地のぶつかり合いになります。
そして、そこに冷静さも必要。
マナトの中にいろんな感情が入り交じっていることでしょう。
だとしても、あのバッターボックスでは、誰も助けてはくれません。
確かに、ベンチからの応援はある。
しかし、実際にプレーするのは、選ばれた選手たちのみです。
マナトは自分ひとりでなんとかしなければならない。
ここが、ソフトボール、野球の厳しいところであり、個人でチームを粉砕するところです。
個人とはいいますが、マナトの後ろには私たちがいます!
たくさんの人の思いを背負って、打席にたっている。
だからこそ、とんでもないプレッシャーを感じてしまう時がある。
マナトもそのプレッシャーを感じているはずです。
押しつぶされるな!負けるな!ベストを尽くせ!
サインを見るマナトの真剣な目に、私も無言で語りかけます! 
お前なら大丈夫!
相手のエースと戦い、打たなければならないというプレッシャーとも戦う。
マナトは、総体の時も、白獅子の時も結果的に最後のバッターになっています。
自分がアウトになることで試合が終わってしまう瞬間を2度も経験している。
その悔しさ、やるせなさ、無力感を知っています。
マナトはそこを乗り越えなければなりません。
ここを乗り越えれば、マナトはさらに大きく成長するはずです。 
さなぎが蝶になる瞬間を私たちは見ているのかもしれません。
三球目、ストライク。
四球目、ボール。
スリーボール、ツーストライク。
最終回、ツーアウト満塁で、スリーツー、ランナーは自動的にスタートをきります。
ヒットならば、二塁のミソラも帰ってきて逆転。
ボールならは、ファーボールで押し出しの同点。
勝負の時です。
あんなに騒いでいた両軍のベンチが、この瞬間だけは静寂が包みます。
磐梯山のふもとが静まり返ります。
思い切り投げこむ、相手エース。
トップを作り、備えるマナト。
絶妙なコースに決まります。
主審の手が上がります。
ストライク!

この瞬間に、イーグルスの命脈は完全に絶たれました。
歓喜に沸く猪苗代ベンチ。
見逃し三振で、肩を落として、顔をくしゃくしゃにして、泣きながらベンチに戻ってくるマナト。
泣くなマナト、泣くなよマナト。
お前が一生懸命にやってきたことはわかっている。
またしてもマナトの挑戦は報われませんでした。
次にいけ!
その肩を、ポンと叩きながら、天を仰ぎます。
ここまで、来ても、勝たせてくれないんですね!と空に無言で吐き捨てます。
勝てなかった。
負けた。
最後の県大会への挑戦が終わった。
相手を追い詰めながら、最後に逆転の場面を作りながら、実現できなかった……
挨拶をする選手たちの声が震えています。
景色がゆがんで見えます。
保護者への挨拶を終えた彼らは、嗚咽していました。
またしても、勝てなかった。
こんなに追い詰めながら、追いつけなかった。
打ちひしがれています。
私も打ちひしがれています。
イーグルスも打ちひしがれている。
手が届きそうで、届かない。
もう少しなんです。
そのもう少しを、ものにできない。
そこが悔しい。
その悔しさの中に何を見いだすか?
私たちは、考えはじめます。
今の彼らに足りないものは何か?
これから先、どうすればいいか?
終わった今は,悔しさに涙してもいい。
泣きたいときは泣くべきなんです。
かっこつける必要など無く、鼻水たらして、無様に泣けばいい。
そうした方が、次に進めるはずです。
幸い次の試合はここではやりません。
踏ん切りをつけるためにも、心の整理がつくまで泣いて、悔やむ時間を長くとりました。

この負けを活かさなければなりません。
まだ、今シーズンは終わったわけではない。

何回も言ってきましたが、イーグルスはまた次の空に向かいます。

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一生懸命にやっていても、できないことはあります。負けることもある。
今の高田イーグルスもそうでしょう。
追い上げムードではありますが、相手も本気ですから、追いつけるかどうかなんて誰もわからない。
しかし、そうであっても、逆転を信じて、声を出して、準暇をして、一生懸命にプレーする。
これを続けなければ、はなから逆転なんてできないでしょう。
まずは、自分を信じ、仲間を信じ、チームを信じること。
「俺たちならやれる!」と思わせること。
そう思うことの、楽しさを心の底からの楽しんでいるという実感があります。
これこそ、スポ少の意義のひとつ、純粋にチームスポーツの楽しさです。


さて、3回の表。
3:6で、まだダブルスコア。80分。時間は、半分近く過ぎていると思います。まだ、裏攻めになのは救いがあります。
この勝負、追いつき逆転するには、いくつか条件があります。
そのひとつが、点をやらないこと、相手の攻撃を簡単に終わらせることです。
こちらの流れを相手に渡してはいけない。
そなためには、7,8,9の打順は簡単に終わらせなければなりません。

3点とったことで、バッテリーにも冷静さが戻ってきました。
コントロールに安定性が見られるようになってきました。ミソラの精神状態は、一周回って戻ってきたというところでしょうか。
身長が小さく、ストライクゾーンが狭いバッターを相手にしても、ストライクが先行します。
こういうところです。
守っている野手がテンポ良く投げこむ、バッテリーと一体化している感さえあります。
これこそ、守備でリズムを作るということ。
三振、三振でツーアウト。
先ほど
ホームランを打たれた8番もきっちり抑えました。9番にはピッチャーゴロでした。
ミソラ、こういうところで、けっこう悪送球をやらかしています。
低く、膝に余裕をもって、大事にいけと祈りますが、あさっさりピシッと送球して、スリーアウト。
こちらの思惑通り、三人で簡単に終わらせました。よし!


裏。
猪苗代さん、ピッチャーを代えました。
コントロールを不安視して、10番から1番に変更しました。
まだ3回の裏と早い段階ですが、早めの手を打ってきました。
完全に逃げ切りを図る戦法です。
確かに、コントロールはこちらの方が安定しています。
先はどのバントの構えで揺さぶる戦術も効かなそうです。
そうそう簡単には追いつかせてはくれないようです。

こちらの攻撃はトウマから。本当は、ランナーを置いて打席に立たせたかった。
ここ最近、彼の振りに迷いがあります。
甘いを見逃し、厳しいコースに手を出す。
余裕がないから、好球必打ができていない。
本人もわかっているようですが、ここはもがくしかありません。
そして、いい結果を積み重ねていくことで、また余裕が戻ってくることでしょう。
幸いランナーがいない、先頭バッター。
プレッシャーは少ないはずです。
初球。
ガツンという鋭い当たりと渇いた打球音を残し、ボールはライトを大きく越えていきます。
ホームランの当たり。
よし!
大きな当たりに、ベンチは総立ちです。
ヨッシャー、ナイバッチ!の渦が怒りましたが、ボールの行方を見て、あっやべぇと、気づきました。
デッドラインを越えてしまうと、ツーベースになってしまいます。
それにみんなも気づいた。
あ~やべぇなぁとやきもきしていると、猪苗代さんのライトが追いつきそうです。
よーし、そのまま捕ってしまえ!
ベンチと応援席の大歓声によって、「捕るなあ!」猪苗代さんのベンチの指示は、聞こえにくいはずです。
ライトの彼も一生懸命にボールを追ってくれています。
そして、ラインぎりぎりのところで追いつきます。そして、中継のラインにボールを乗せてくれました。
ありがとう!彼の一生懸命さに助けられました。
らくらく、トウマはホームイン。
また1点をもぎ取りました。
4:6、誰の目にも確実に、猪苗代さんのしっぽが見えてきました。
誰もが、信じはじめています。
やれるぞ!いけるぞ!の嵐がイーグルスのベンチに吹き荒れています。
主軸による一発。
トウマにも、チームにも大きな自信をもたらした一撃となりました。
惜しむらくは、ソロだったことですが、ランナーがいなかったからこそ、余裕が生まれたというプラス要因に置き換えます。
この場面で、一発を打てるトウマというスラッガーはやはり、強い!

さて、イーグルスにはもう一人、スラッガーがいます。左の主砲、ミソラです。
確率は低いながら、相手を粉砕する力を持っています。
それよりも私が期待するのは、バッティングでいい結果を残すことで、相乗効果によって、ピッチングにもいい影響をもたらすことです。
感情の浮き沈みが激しいミソラだからこそ、ハイテンションを維持できれば、バンバン、相手のバッターをなぎ払っていくはずです。
しかし、痛烈なファーストゴロ。
そう上手くはいってくれないようです。
ハルも倒れ、ハルトも三振で後続を断たれます。
トウマの1点のみ。
4:6。
あと2点。

時間が気になり始めました。
みなこコーチに確認すると、あと20分。
やって2回か?
下位から繋いで、上位に持ってくれば、勝機が見えてくる。
かすかな可能性に望みを託せるように、またもや相手の攻撃を防がなくてはなりません。

さぁ、相手も上位です。
この回をゼロに抑えるかどうかで、勝負は大きく変わるはずです。
向こうもそれをわかっている。
なので、この1番を打たせてはいけません。
勢いがあるチーム状態を反映でして、ミソラとトウマは、バンバン追い込んでいきます。
初回のビビりまくっていた投球がウソのようです。
追い込んで、パチンと捉えられますが、ミソラの真っ正面、そのライナーをしっかりと捕ります。
ミソラが捕って良かった。
取れなかったら、また落ち込んでいたでしょう。
よし、運もある。
勝利の女神はまだこちらに微笑んでくれているようです。
2番を三振にとって、二死で3番のカゲヤマ君を迎えます。
よし、ランナーがいない。
ここは思い切って勝負です!
入り方に気をつけろよと言う前に、バッテリーは強打者に立ち向かいます。
アウトコース、ちょっと甘く入ったかぁ~
彼は見逃しません。
いい当たりがセンターマナトを襲います。
いい当たりですが、マナトの守備範囲でした。
問題は打球が強いこと、マナトきっちり、両手で抑えます。
グラブの位置が低いんだよと悪態をつきますが、捕ればよし!これでいい。
当たり前に当たり前のことを、やっています。
この上位から始まる大事な回をゼロに抑えました。
ったくよ~、1回からこういうふうに抑えろよなあ~と思いますが、そうはいっても詮無いこと。
今は、逆転することに集中します。


裏。
こちらは、7,8,9、マナト、ゼンジ、ソウスケよ打順です。
この7,8,9は昔読んだ漫画「わたるがぴゅん」では、トリッキーズと言われてしました。
相手から見て、普通にやれば、アウトが取りやすい打順。しかし、彼らは簡単にはやられないぞという思いを込めて、なにかやらぞというトリッキーなプレーをやっていました。
そういうしぶとさが、イーグルスの3人にも欲しいところです。

バントの構えで揺さぶりをかけますが、全然動じません。流石です。
普通に打つよりも、確率の高いバントを選択しますが、マナトは三振。
ゼンジ、ピーゴロ、ソウスケ、セカンドゴロで、3人で討ち取られてしまいました。
ずっと点を取ってきたのに、この回はゼロに抑えられた。
しかし、要は考えようです。
次の回が、おそらく最終回。
その打順が1番から始まるといういい繋がりを信じることにしました。

そのためにも、表をゼロに抑える!
私が言うまでもなく、それはあいつらもわかっています!
雨上がり、湿度の高いムシムシのグランドに、決意をもって走り出していく、九人の背中にベンチの誰もが、頼んだぞ!という思いをこめたことでしょう。


最終回に続きます!


ときどき私は思うんです。
スポーツには、真剣な勝ち負けがある、だからいいと。
そして、勝ち続ける者など皆無。
結果、みんなが負けています。
しかし、勝ちたい!打ちたい!守りたい!抑えたい!という明確な意志がなければ、上手くいくものもいかないことを、かつての野球少年であった我々も経験してきました。
だから、ソフトボールが、野球が面白いことを知っています。
そして、その意志が個人ではなく、チームとして一丸となった時の強さ、一体感。
それこそ、チーム全体で、求めよさらば与えられんを具現化していく様は、見る者を引きつけます。

この前の次男の高校野球の選手激励会で、保護者会長が言っていました。
甲子園に行ってくれるならば、万々歳。
しかし、みんな納得のいく負けをしてくれと。
激励会なのに負けることをいうのは、という枕詞もありましたが、会長は別なことを伝えて激励したかったようです。
負けに納得なんてあるのかい?と思いましたが、よく考えると身にしみます。
やるだけやって、きちんと泣いて、自分に区切りをつけてこい。
そこまでやってこい!とわが子たちにいっていたんですね。
燃え尽きてこい。そして、また次にいけと。
やることをやって負けたならば、きっと清々しいに違いありません。
しかし、高田イーグルスはまだ、清々しい気分になる時ではありません。

1回の表を終わって、0:6、5回コールドまであと1点。絶体絶命のピンチです。
しかし、この絶望的な状況は、選択肢を簡単にしてくれました。
やるしかねえ。やるしかねぇんです!
四の五の言ってねぇで、やるしかねえ。
かえって、この子たちにとんでもない集中力という翼と牙を与えてくれたのかもしれません。


猪苗代さんの先発は、先ほどとんでもないホームランを打った10番のカゲヤマ君。
6点差もあるので余裕のヨッチャンです。
球は速い、球威もある。
しかし、よく観察すると制球が定まっていない。
ちいさなほころびですが、今のイーグルスにはわらをもつかむようなちいさな隙につけいるしかないんです。
ここ最近の勝負強さ、度胸の良さをかってリードオフマンに命じたアオトに、
「ワンストライクは捨てていこう!じっくりいこう!」と指示しました。
頼むから、初球はボールであってくれと神頼み。アオトもどちらかというと打ち気が先んじるタイプ、本当は打ちたくて打ちたくて仕方がないでしょうに、きっちり、見ています。
ボールを選んで、またボールを選ぶ。
向こうも気合いを入れて、三球目にはきっちり入れてくる。
スリーボールにしない。立て直してくる。
こういうところが、いいピッチャーである資質だと私は思います。 
そうであっても、制球難、たまらずファーボール!
よしっ!ちいさなほころびが少し広がりました。
すかさず盗塁をしかけます。
アオトは二塁を落とします。よし!

さて、どうするか?
いっきに大量得点を狙うか?1点ずついくのか?
んーー~~、思案した挙げ句、私は後者を選びました。大量得点を狙って、失敗した時のリスクは計り知れない。おそらく、立ち直れないでしょう。
私たちの中に宿る、細い闘志の炎が消えてしまいます。
であるならば、たった1点でいい。
そして、ワンアウト三塁という形を大事にしてきた我々にとって、1番なじみのある状況を作り、いつものように、狙って1点をとる。
まだ、序盤であるこの1回に、自分たちのやり方で、文字通り、1点をもぎ取ることで、自分たちに自信取り戻すことを選択しました。
今の高田イーグルスは、たった1点が大きな希望を与えてくれるはずです。
メッタメタにやられた相手に対して、ひとかきでもいいから爪痕を残すこと。
やられたままで終わらないこと。ここが大事。
この突破口を1番のアオトが開いてくれました。
そして、2番にはなんでもできる、キャプテン、青い炎のアユキ。
アユキは状況に応じて、なんでもできます。
どちらかというと、積極攻撃よりもカウンターの宮田君タイプ(はじめの一歩ですが)、相手の力を利用して闘う合気道といったほうがいいかもしれません。
そして、カウントが悪くなってからも比較的考えて行動できる落ち着きもある。
アオト盗塁成功しています。
アユキは、基本バントですが、ボールを見極めます。待ちに徹した時の選球眼の良さよ、ここでパスボール。
アオトは三塁を陥れます。
ここは確実に打ち上げない方のバントを選択しますが、三塁線を狙いすぎ、失敗でツーストライク。
スリーバントか?
迷いますが、打たせます。
アユキならば、転がす。
私はそこに賭けました。
ピッチャーゴロでしたが、高いバウンド。
三塁のアオト、いいスタート、成田コーチのゴーの指示も良かった!
バックは間に合わないとふんだピッチャーは、一塁へ送球。あわよくば、フィルダースチョイスも狙いましたが、6点という点差が冷静な対処をさせました。1点くらいいいやという余裕がまだあります。
悠々と本塁を陥れました。
相手から見れば、たった1点。
我々からみれば、待望の1点。
のちのち、この1点が大きな1点となったことが分かります。
これを積み重ねていけばいい。
折れていた心に、少しではありますが、希望の火が戻りつつありました。
「あれ?いけんじゃねぇ?」「俺たちなら、やれんじゃね?」そう思わせることができました。
しかし、まだ全員に伝染していません。
まだ、負けると思っているやつらがいます。
そいつらを地獄の底から引っ張り上げなければなりません。
コーチをするくらいですから、我々はそういう逆転の場面を少なからず経験しています。
そして、チームがまとまる時の気持ちよさ、たのしさ、何より、一丸となった時の強さを知っています。
それを、この子たちも経験させてやりたい。
結果はどうあれ、諦めないことの大切さ、楽しさ、仲間の心強さを、自分の経験として刻み込んで欲しい。
私たちの願いです。

1回の攻防で、1:6。
30分は経過しています。
冷静に俯瞰してみます。
時間的も、点差的にもまだまだ絶望的な状況には変わりありません。
どうすればいいか?
ここまでやられていれば簡単です。
点数をやらずに、少しずつ追いつく。
これしかない。
こちらがつけいるスキは、相手が余裕であるということ。
指導者であれば、引き締めにかかりますが、完璧に引き締められるものではありません。
その慢心にこそ油断が生まれると思っています。
そのためには、守備でリズムをつくること。
いったんは破たんしましたが、もう一回ここに戻ってきます。
エースのミソラには立ち直ってもらわねばなりません。

2回表。
点をやらないことの大前提として、先頭バッターをどんな形であれ、きっちり討ち取ることがあげられます。
まぁ、初回は討ち取ったのに、大量得点になってしまいましたが、そのセオリーの本質は変わりません。
この回の先頭バッターは、ホームランのカゲヤマ君。
この人には、これ以上打たせてはいけません。
しかし、向こうも気持ちが大きくなっていたと思います。振りが大きい。
一球でサードファールフライに仕留めました。
よし、ハルトよく反応して、よく捕った。ポケットの一番深いところで収めるところに、ハルトの人間性を感じます。
この状況で、エラーしないことの大切さをわかっている。
だからこその大事な捕球が姿勢に表れていると思います。
先頭を切りました。
あとは、抑えていくだけですが、次の打者をファーボールで出してしまいます。
まだ、制球は安定していませんが、ここは我慢です。
制球が安定していないので、向こうも盗塁などのギャンブルをしてくる気配もありません。
じっくりやっていい。
山あり、谷ありの調子の中、なんとかしてやりくりしていくバッテリー。
次の打者を三振に仕留めてツーアウト。
次も内野ゴロで、この回をゼロに抑えました。
よし、まずはひとつクリア。
小さい目標を少しずつ、クリアしていくことで、自信を取り戻していきます。

裏。
こちらの先頭バッターは、ハルトです。
状況に応じたプレー、粘り強いプレーができるようになってきました。
自信がついてきたのでしょうね。
練習への真摯な取り組み方、周りへの配慮、ムードメーカーと何役もこなします。
そして、何よりビビらなくなってきた。
彼の打順をあげた理由はここにあります。
それと、もうひとつ、どこかで打線が切れるとすれば、ここだろうと思っていました。
上位と下位をつなぐ役割、切れた場合の影の一番バッターの役割も担ってもらうという狙いもありました。
その選択が生きました。
三振せずに、ショートにゴロ、そしてエラーを呼び込みます。
過分に運もありますが、これも実力、先頭バッターとしての役割をきっちりこなします。よし!

さぁ、先頭がでました。
1回と同じように、1点を取りに行きます。
しかし、打線は下位打線へ、打ってとることは難しい、となるとバント。
初球は警戒率が高いところですが、盗塁。
ハルトスタート遅い、限りなく遅い。
タイミングはアウトかぁ~、しかし、ショートがポロリ。ふぅ~助かりました。
あんにゃろめー、ハルトをエアでぶっ飛ばして、心を落ち着けます。
ここにも、運がある。
ノーアウト二塁。

次は、7番のマナト。
ここは、我々の形をワンアウト三塁を目指します。
ただ、マナトに言ったのは、ストライクだけバントしろ!
いつものように、うんと頷きます、このやろーハイだろうと訂正することなく、マナトの集中力信じます。
構えたバントの構えが引くのが遅くてビビりますが、それは直前まで見届けているという証拠でもあります。キャッチャーは捕りづらいはず。マナトなり作戦たど思うのは、勘ぐりすぎでしょうかね。
ここで、気づきました。
相手にピッチャー、バントの構えが投げづらい。
明らかに乱れます。 
そして、パスボール。パスボールでハルトはホームに帰ってきます。
また1点をもぎ取りました。
そしてマナトも、なんとか見極めてファーボール。よし!
ノーアウトで、下位打線で1点、これはでかい。
しかし、4点差、猪苗代さんはまだまだ余裕のヨッチャンです。


余裕のヨッチャンでいてくれる内に、少しでも追いつくために、二匹目、三匹目のドジョウ作戦です。
8番ゼンジにもバントの構え。
ふらふらとヘッドを揺らす、やや小馬鹿にした態度は、ゼンジの得意とするところ。
こういう人をおちょくる態度をとらせたら、右に出る者はいません。
今日のゼンジは、心が強い方で良かった!
弱い方だとわらのように、息で吹き飛んでしまうほど弱気になりますが、今日のゼンジは一味違いました。
プレーを楽しんでいる、私にはそう見えました。
このギリギリの状況を楽しんでいる。
そう、これでいいんです。
ここにもゼンジの成長が見えます。
あっやべぇ、うるうるがきました。前が見えなくなってきた。
しかし、ゼンジの仕草が私を笑顔にしてくれます。まだ、泣くなよ、俺がなんとかするとプレーで言っています。
バントを命じていますが、ことごとくボールを見極める。
その間に相手のパスボールを二つ誘い、三つ誘い、マナトをホームに帰します。
そして、自身はというとバントが空振り三振しますが、キャッチャーがポロリ、走れーとベンチからの号令にケツを叩かれた子鹿のようにファーストを懸命にめざします。
ギリギリか?
すべれーのみんなの絶叫!
近すぎる、頭から前転のようなヘッドスライディング。無様です、確かに無様、しかし、私たちにはとんでもなくかっこ良く映るのでした。
別にゼンジが打ったわけではありませんが、さも自分が殊勲打を打ったかのような喜びよう。
爆笑と歓喜の渦のベンチ。
その応援席に向かって、ゼンジは一世一代スタンディングガッツポーズ!
さらに、爆笑と歓喜が倍増したことは言うまでもありません。
ガッツポーズは、ベンチにむけてじゃないんかい!と悪態をつき、私は、泣きながら笑っていました。
良くやった!良くやった!ゼンジ!
まだ泣くときではありません。磐梯山の風が思い出させてくれました。

9番ソウスケ。
見るからに不安そうな様子。
チームの状態よりも、目の前の自分のことで精一杯といったところでしょうか?
反対にいえばそれだけ集中しているということです。
ソウスケにも、ボールをやるなとバントを指示します。
相手もだんだん慣れてきた様子、ストライク率が高くなってきました。
しかし、まだつけいる隙はありました。
パスボール、パスボールでゼンジは三塁にいきます。
ソウスケもよく見極めましたが、最後は三振に倒れます。
ソウスケ、心が折れそうです。前の試合でも、泣いてしまってプレーになりませんでした。
しかし、なんとか踏みとどまっている。
下を見て、うつむいて、泣きそうです。でも、泣かない。それでいい。
こういうプレッシャーとの戦いも今後彼を大きくしてくれるはずです。
「ソウスケ、大丈夫だ!」
これ以上の言葉は不要です。背中をポンっとたたいて、グランドに送り出します。
俺は、お前を信頼している。その視線を、彼の背中に送り続けます。
この回は2点を取りました。

それにしても、下位打線で2点をもぎ取り、ついに上位に持ってきました。
出来すぎな感もありますが、これも彼らの諦めない姿勢と懸命なプレーが持ってきた結果です。
そして、また少しずつ、「あれっ?これ、イケるんじゃねえ?」が伝染していきます。
そうです、そうなんです。
どんどん錯覚しろ!どんどん調子に乗れ!
明らかにベンチと応援席の雰囲気が変わりつつあります。
ゼンジが三塁にいます。
ワンアウト三塁、我々の形です。

そして、満を持して一番バッターのアオト。
バントもよぎりましたが、ここは内野ゴロでいい。アオトは三振しないに全振りで賭けます。
ここで打てば、3番のトウマまで回ります。回ったときに逆転の絵が見えました。
見えたというか、大いなる願望であり、希望です。
いけ!打て!打ち砕け!
アオトは初球からフルスイング
この場面、なかなか初球からフルスイングできる奴はいない。
そして、真後ろへのファール、タイミングは合っています。
ボール、ボールとなり、ストライク取りに来たコースをファール、こちらも簡単には終わりません。
向こうもこれ以上は点はやれないと思っているはずです。
高田イーグルスが息を吹き返してきていることをヒシヒシと感じてきているはずです。
意地と意地のぶつかり合い。
最後は三振でした。
悔しそうなアオト、いつもであれば心のダムが崩壊するところですが、すぐに立て直したようです。今まで何回も上手くいかずになく場面を見てきました。
アオトにも成長の証が見えてきました。
必死に泣くのをこらえて、切り替えようとする意志が見えました。うつむかず、前を、上を見て、すぐにチームメイトの応援に回る。
こういうところです。
こういうところ。
自分にできることを精一杯やって、その結果、上手くいけば良しとして、上手くいかなかったならば、チームに貢献できることにすぐに取りかかる。
自分の弱さに向き合っている。
この先もソフトボールだけでなく、いろんなところで失敗をするでしょう。そして、落ち込む。
その解決方法と経験値がこのスポ少で蓄積されていくことでしょう。
失敗に慣れる、怒られ慣れること、今の甘甘な教育の中では培われないもの、厳しい社会という現実に立ち向かうツールになります。
まさにそれが生きる力、タフな人間に育つ。
それは、いつか報われて欲しい。

さて、ツーアウト三塁でアユキ。
ここは、何としてももう1点欲しい。
二死なので、作戦はありません。
ここは、キャプテン、アユキに任せます。
打って返して欲しい。
彼の中にどんな考えがあったのでしょうか?
初球、いきなりバント、奇襲にでました。
二死なので、バントはないだろうと思っていた敵の裏をかく戦術だったのか?
サインではありません。
転がり方もいい。
二死なので、サードのゼンジもスタートは切っています。
ワンチャンイケるぞ!
昔見た映画「メジャーリーグ」を思い出しました。
かつての名選手、トムベレンジャーが、予告ホームランの構えから、意表を突く、二死からのスクイズ。
足をケガしていながら、懸命に一塁へ走る。
その姿がアユキに重なります。
ベンチ、応援席から、走れーの大合唱。
頼む!セーフであってくれ!
アウト!のコール。
全力を賭けたプレーは、アウトとなりました。
むなしくはありません。
全力でチャレンジしたこと、私は彼らを全力で褒めますが、それは試合が終わった後です。
よし!いい攻撃だった!
いいぞ、いいぞ!とコーチも褒め称える。
ヒロカズコーチも「見えてきた!」と。
そのとおり、猪苗代さんのしっぽが見えてきました。
いよいよ、高田イーグルスの全員が信じはじめてきました。
波がきている。
風が吹いている。
流れがきている。
私たちコーチ陣も、それを感じています。
あの時、ベンチも応援席も、みんなそう思いはじめたはずです。
これが、「一体感」。
チームスポーツ、スポ少でしか経験できない、チーム一体の行け行けドンドンです。
あと3点。
セーフティリードを詰め寄られている方は、まだ余裕がありますが、余裕のヨッチャンではもうないでしょう。
相手の警戒も厳しくなってくる。
それをどう粉砕していくか?
涙も乾きました。
いろんな成長を見せてくれる彼らがチームを間違いなく後押ししています。
頭の中には、SLAM DUNKの「10-FEET-第ゼロ感」がエンドレスで流れ、宮城ではなく、高田イーグルスの全員が「俺たちならやれる!」と言っています。

さぁ、勝負です!

















最後まであきらめない。
それを子供たちから、改めて教わった試合でした。
人が成長していく様を見ることは、なぜこうも人を感動させるのでしょうか?
二十年以上、毎年毎年見てきていますが、今年もこの子たちの成長を感じる瞬間がありました。
できなかったことができるようになる。
心が折れそうになる場面で、必死にチャレンジして、可能性の薄いところを果敢に引っ張ってくる。
そして、それが繋がっていく様を見せつけられた時、どうしようもなく心が動かされます。
何回も涙で前が見えなくなりました。
それほど、心が動かされた試合。
そういうプレーが、この子たちもできるようになった。
昨日は、そう思えた1日でした。

アユキ世代の県大会へ通じる最後の大会。
白獅子への挑戦が昨日行われました。
結果は、一回戦で湯川さんを倒しましたが、二回戦敗退、またしても猪苗代さんに5:6で敗れました。
我々の挑戦は潰えました。

試合前、できるかぎりの準備をして臨んだつもりでした。
先攻後攻は、キャプテンであるアユキに任せました。
彼がどういう思考で、後攻をとったのか?
おそらく、アユキの頭の中には、ロースコアで後半に持ち込み、プレッシャーを与えるのには、後攻が有利という心情が働いたと思います。
勝負は後半、私もそう思っていました。
そのためには、この初回をきっちり押さえてくること、守備でリズムをもってくること、そこが大事だと言い聞かせて、彼らをグランドに送り出しました。

猪苗代さんの打線のキーマンは何人かいます。
そのキーマンのひとり、先頭の1番を一球で仕留め、2番も討ち取る。
早くも二死として、チーム全体に、いいぞ!いいぞの雰囲気が漂い始めます。
そして、敵軍の最強バッターを迎えます。
ランナーがいない、二死。
状況としては、整えられる最高の状況となりました。
そして、早い段階で追い込んだ。
我々コーチ陣も、バッテリー、特にキャッチャーのトウマに、ゾーンで勝負する必要は無いことを確認しました。
バットの届かないところ、そして長打になりにくいところ、そこを要求してくれるだろうと思っていました。
ここで、最初の歯車が狂います。
トウマ、確かに外に構えていました。
しかし、少しの欲があったと思います。
あわよくばストライクになりそうな、ギリギリのアウトコース低めに構えました。
その前段として、バッター、カゲヤマ君を追い込んだ、前の二球の残像が、彼をして勝負を急がせたか?
確かに、追い込んだ二球目は、球威もコースも良かった。
これならばイケるとふんだのかもしれません。
二人が考えた結果の選択です。
彼を責めることは誰もできません。
我々大人でもそう思うでしょう。
バッター、カゲヤマ君は牙を研いで待っていました。
コースよりもタイミングを合わせることのみに集中していたはずです。
そして、ドンピシャのタイミングで、ボールがきた。
ややインコースのかなりの高め、完全にボールです。
しかし、これをタイミングよく捉えた打球は、恐ろしく飛距離の出るライナーの放物線となり、イーグルスの外野を粉砕しました。
下げておいたライト、ゼンジのはるか頭上を越えていった。
打った瞬間に、ホームランだと分かる打球音と角度でした。

簡単には、終わらせてくれない。
そう思いましたが、我々の大部分は、ソロで良かったと思っていたはずです。
しかし、そう思わない人がマウンドに君臨しています。
あーもぅ、打たれたぁ~、悔しい。
目に怒りと不信感を宿らせ、カッカ、カッカしているエースがいました。
ここは、初回だけど、一旦落ち着かせようと思いタイムをかけ、マウンドに向かいます。
頭に血が上っているエース、ミソラ。
沸点の低いやつだなぁと思いますが、我がチームの大黒柱をまずは冷静に冷やさなくてはなりません。
でないと、初回で崩れてしまう。
マウンドに行って、内野を集めて、間をとります。
まだ初回であること、ツーアウトであること、とられた得点も1点であり、まだまだ取り返せること、イーグルスにとって有利な情報を提示して、落ち着かせようとしました。
その間に、トウマの配球が甘かったんだよ~、ちゃんと捕ってよね!と檄を飛ばし続けるミソラ。
黙って聞いているトウマ。
まぁ、外に悪態を出しただけ、少しはガス抜きになっただろうと判断して、ベンチに戻りました。

仕切り直しです。
二死でランナーなし、守備側としては守りやすい。
後はバッテリーがテンポ良く追い込んでいくだけですが、ミソラはまだ引きずっているようです。
追い込んではいくんですが、三振を取りに行く球をファールにされてしまう。
下位打線も渋とい。
簡単には、討ち取らせてはくれません。
コーチ陣とも確認しましたが、このカットの仕方はバッティングマシーンのおかげだと判断しました。
同じスピードに対する耐性ができている。
目がついていっている、
タイミングの合わせ方が一定。
ここに気づいて、バッテリーがタイミングをずらす組立に変えることができるか?
そうも思いましたが、ミソラの球威であれば粉砕できると判断して、彼らに任せました。
いつもならば、討ち取れるところで、ファールで粘られる。
ここに、ミソラのフラストレーションが蓄積されていったのかもしれません。
コントロールが狂い始めます。
スリーボールツーストライクから、最後を決めきれない。
二人出して、左の女の子にも追い込みながらも、デッドボール。これで満塁。
普通に投げれば、討ち取れる下位打線なのに、コントロールができない。
コースに入っているボールをキャッチャーがポロポロを連発して、リズムに乗せきれない。
二人の呼吸が合わなくなってきました。

んー、ここはタイムかぁ?と思いましたが、タイムは2回まで。
初回に既に1回使っています。
後半のことも考えて、とっておくことに決めて、バッテリーに任せることにしました。
2点、3点までならばなんとかなる。
打順は、7,8,9番長打はない。
7番にスリーツーから四球で押し出しを献上。
ミソラとトウマのバッテリー、立て直すことができません。
しかし、ここは彼らを鼓舞する以外にありません。
打たせてとった方がいい。
どうせ、長打はないという判断が油断だったのでしょうか?
抑え気味に投げた球は、甘く入りました。
8番のフルスイングのちょうど1番強く、1番飛ぶところで捉えられました。
右中間をまっぷたつ。むなしく転がっていく打球を見ることしかできませんでした。
満塁ホームラン。
バッテリーは、肩を落とし、チームもため息混じりの意気消沈。
この時点で、0:6。
初回に、二発のアッパーカットを食らい、グロッキーとなりました。
後半に勝機を持ってくることなど、夢のまた夢。
そしてまだまだ終わらない。
9番で終わらせなければ、また1番に回ってきます。
敗北の大合唱が連呼しています。
その波に絡め捕られようとしている。
猪苗代さんの9番も渋とい。
ヒット性で捉えられ、センター前に抜けていきます。
難しいインコースだったのに、きちと振り切っている。
下位打線まで、闘う意志の血が流れているのを感じました。
簡単に終わらせてくれない。
泥沼にどっぷりはまっていき、どうしようないバッテリーがいました。
冷静な1番、ここからまたランナーをためることの優位を分かっています。
なので、早打ちしません。
早打ちは、ピッチャーを助けると言うことを分かっている。
いい1番です。
そして、また好機を作る。
2番を出せば、3番のカゲヤマ君にまた回ってきます。
ここはなんとしても、抑えて後続を断ち切りたい。
ここで、もう一発食らえば……
悪夢が現実になります。
ミソラ、踏ん張ってくれ!
打たれすぎて、逆に冷静さを取り戻したのかもしれません。一周回った。
小さめの2番を二球で追い込みます。
指先に感覚と闘志が宿ってきたようです。
最後は見逃しで三振に切って取ります。
一同、ずっと呼吸を止めていましたが、ここで大きく息をついたことでしょう。
ふぅ~、やっと終わったぁ~。
やっと終わってくれた。
長い長い初回の表を終えました。
おそらく20分ぐらいのサンドバック状態。
泣く寸前、というか、ミソラは泣いていたと思います。
立ち尽くす、高田イーグルス。
そうであっても、まだ試合は終わっていません。
時間は戻らない。戻せない。
選手たちの中にも、目が死んでない奴らがいます。
我々も諦めてはいけない。
どんなに逆境であっても、途中で投げ出すことはしない。
奈落の滝に、諦めて落ちていく仲間の手を取って、奮い立たせてもう一度立ち向かう勇気を植え付けなくていけない。
それを言い続けなくてはいけません。
そうはいっても、このお通夜のようなベンチ。
どう立て直すか?
過去にもこういう戦いはありました。
あの時も6点差。
一気には無理。
幸いまだ初回。
小さい成功を積み上げていくしかありません。
諦めかけた心を、あれっ、もしかしてイケるんじゃねえと全員に思わせる。
この時点で、可能性は限りなく低い。
10%ない。
1点ずついく。
剥がされた自信という鎧を再び、取り戻していくしかない。
誰もがイーグルスの逆転など無理だと思っている。
おそらく、味方であるお母さんお父さんでさえもそう思っている。
できなくて当たり前。
そこを、なんとかする。面白いじぁありませんか!
さて、どうするかね~と舌なめずりをしながら、ベンチの選手たちひとりひとりの顔を見ます。
アオト、ハルト、ゼンジなど、活きのいいやつもいます。
なかなか表情に出さないアユキにも青い炎が宿っています。
まだ、死んでない。終わっていない。

高田イーグルス、反撃です。






総体会津予選、結果は猪苗代さんに代表決定戦で敗れました。
初戦で湯川さん、次に柳津さんを破って勢いに乗っていました。
そして、猪苗代さん。
ソウゴ世代で敗北を喫して以来、勝ったという記憶はありませんが、今大会は意気込みが違いました。
県大会を目標に掲げていただけに、この負けはショックでした。
実力を出し切れていない負け方、もっとやれた、もっとこうしていれば良かったという後悔が先立ちます。
しかし、時間は戻りません。
いつもいいますが、これが大前提。
だからこそ、できるかぎりの準備をして望もうとしますが、それさえもできていたのか?という疑問が後悔に変わります。
俺たちはちゃんと準備をしてきたのか?
子供たちに万全の準備をさせることができたと言えるのか?
20年以上やっていますが、心の底からそう思えたことは一度もありません。
練習しても練習しても、後から後から出てくる課題。
上には上がいて、際限がないんです。
なので、どっかで区切って、現時点でやれることはやった。
後は、あいつらを信じる。
これが私のスタイルです。
上手くいくときは、とんでもなく上手くいくんですが、たいていはそう上手く行かない方が多い。
今回の猪苗代戦も、相手より多く三振を取りながら敗北を喫してしまいました。

なぜ?なぜだ?どうして?
どこで歯車が狂った?
何が悪かった?
自問自答が始まります。

先にチャンスを作ったのは、高田イーグルスでした。
ワンアウト?ノーアウトでランナー二塁の場面を作った。
今年のチーム方針ならば、ここはバントで送ってワンアウト三塁を作る場面です。
しかし、迷いました。
打順は下位打線にむかうところですが、ここの場面でのバッターはここ最近打っている。
そして、バントがまだ不得意。
喉から手が出るほど欲しい先取点。
さぁ、どうする?どうする?家康ならぬ、どうする、俺?
迷ったあげく、選んだのは強打。
不得意なバントよりも、思い切り振らせて、チームを勢いづかせたいという意図からでした。
結果は、三振。
内野ゴロさえも打てなかった。
後続も立たれて、先制のチャンスは潰えました。

こうなって欲しいというこちらの意図は、通らなかった。
相手のバッテリーを褒めるべきでしょう。
そして、私はifの世界に入ります。
あの場面で、バンドを選択していたらどうやっていたか?
バントよりも打たせた方が確率は高いとみての采配でしたが、裏目にでました。
チームの方針と決めているのならば、あの場面はバントであったかもしれません。
優柔不断という私の迷いが、選手に伝染した結果だと思います。
そしてその影響は、試合全体にも波及していきます。
これが、野球の、ソフトボールの恐さです。
点差に表れずとも、どちらかに勢いが振れている状態、なんらかの競技をやってきた人ならば、わかると思います。
目に見えない「流れ」というやつです。
その流れを作って、流れが自チームにあるうちに、きちんと得点し、きちんと守り切る。
これが、勝負に勝つ鉄則です。
今回は、それができなかった。
いい結果が出るように、これまでの練習の成果を裏付けにした選択して、自信をもって選手に伝え、選手も自信をもって迷いなく、ミスを恐れず実行する。
それでも、失敗もエラーも裏目にでることもある。
そうだとしても、みんなでカバーしながら、フォローしながら、最後には笑っていられるようにしようとしているんですが、そう旨くはなかなかいきません。

相手のバントは絶妙に決まり、こちらのバントは阻止される。
それまで、押さえていたのにツーアウトから、ギリギリ当てられて、いいところに落ちる。
こちらは、得点圏にランナーを置きながら、もう1本がでない。
こちらのチャレンジは上手くいかず、相手のチャレンジは上手くいく。
このジレンマを打ち破れなかった……
守備でも攻撃でも、もう少しのところで、要所を取れなかった。
猪苗代さんが上だったということです。
ここは、認めるしかありません。
その「もう少し」を分析して、次に活かさなければいけません。
そのために、我々は存在します。
試合後の指導者のミーティングでもそれを確認しました。

変わらなければいけない。
変わろうとして、行動しなくてはいけません。
その意識を毎回毎回の練習で、意識させることができるか?
ここにかかってきます。

高田イーグルスは、次の空に向かいます。



アユキ世代が挑戦する総体会津予選。
会津地域で、10チームしかいなくなりました。
毎回ですが、何所と当たろうがやるだけです。
でも、人として生きてる限りは欲が出るもの。
なるべく強いところとは当たりたくない。
しかし、そう思っていると当たるものです。
抽選は子供たちが引いていましたが、コロナ禍で指導者がここ最近は引いています。
ここは、心を無にして、引くのみです。
高田イーグルスは、一番下の小ブロック、優勝するまでに最も多い回数の4回をこなさなくてはならなくなりました。
とらぬ狸の皮算用をしてみます。
1番の強敵であり、去年の新人戦決勝で負けている、関柴上三宮さん、坂下ヒーローズさんは反対ブロック。
ここまで、なんとか大役を果たしたと言えるでしょう。
まずは、湯川さん。そしてシードの柳津さん。
二日目で、新鶴さんと猪苗代の勝者、ここが代表決定戦となります。
やるしかありません。やるなら今しかねえ。
あとは、勝ち上がるのみ。

なんとかして、この子たちに成功体験をさせてあげたい。
努力が、ちゃんと報われることを、若い時期、鉄は熱いうちに体験させてやりたいと思います。
自分たち高田イーグルスの強みを活かして、狙って勝ちに行く。
状況を分析し、目標をもって、計画を立てて、進んでいく。
人生はその繰り返しです。
どんなに困難でも、どんなに無理だと言われても、そこを放棄しては面白くないし、主体的に生きているとは言えないでしょう。
時間は前にしか進みません。
だからこそ、どんな状況であってもチャレンジする人間であってほしい。
そしてそのチャレンジを楽しめる、楽しむことができる人になって欲しい。
今年の会津高校の卒業式。
その2年生の女の子の送辞の中で、彼女はこんなことを言いました。
「どんな状況であれ、楽しんで取り組んだ方がいい結果がでる。それを先輩たちから学びました。」
その通りだと思います。
たとえ、数ミリであっても積み重ねていくことができる人に、育ってほしい。
その土台は、このスポ少でも培っているという自負が私にはあります。
私というか、コーチたちもそうでしょう。
そして、それは敵チームであっても同じです。
本気の勝負、だからこそ、面白いし、全てを賭ける意味があるんです。
毎年毎年のメンバーで、本気で取り組むべき時間。
選手にとっても、その家族にとっても、我々指導者にとっても、それは掛け替えのない時間です。
それは、敵である相手チームにとっても同じです。
相手がいてくれるからこそ、私たちも成長デキるのです。
だからこそ、私は相手チームにも、リスペクトを忘れません。
お互いにとって、貴重な時間。
その時が、すぐこそに差し迫っています。
さぁて、行きますか!
去る11/5、県内の16チームが、全国大会への2つの切符をかけてぶつかるこのトーナメント。
高田イーグルスは、県中郡山市の大島スポ少さんとあたりました。
結果は、0:4で一回戦敗退。
アユキ世代の最初の全国への挑戦は、露と消えました。
負けた原因はいくつかあります。振り返ってみましょう。

まずは守備でリズムを作ってから攻撃に転じるというキャプテン、アユキの思惑通り、大島さんの先攻で始まったこの試合。
こちらの思惑通り、4回までは、バッテリーとバックの守備がほぼ完璧に相手打線を押さえ込みます。
毎回三人で切るパーフェクトな抑え、エースミソラの調子も回をおうごとに良くなってきている感じさえしました。
ピッチングのバロメーターである、ボールの数が少なく、追い込みも早い、ボールが先行してもすぐにストライク、ファールで立て直します。
トウマの配球もフレーミングもいい。
4回までの守備の流れを見る限り、完全にイーグルスのペースとなっています
経験者ならば、みんなそう思うはずです。
そして、一方でもうひとつの疑問も生まれます。そこまで、完璧に抑えながら、なぜ負けたの?と。
ここが勝負の面白いところで、高田イーグルスの攻撃も押さえ込まれていたからなんです。
守備で完璧に抑えながらも、こちらも押さえ込まれていた。
しかも、2回もすんでのところまで行きながら、あと少しをとれなかった。
得点チャンスを先に作りながら、先に得点できなかった。
勝負所を逸してしまった。
ここが、今回の高田イーグルスの弱さで有り、負けた原因の大きなひとつとなりました。
初回は三者三振に切って取られますが、2回に先頭の4番トウマがヒットで出塁します。
盗塁を絡めながら、スコアリングポジションの形をつくります。
無死二塁で、5,6,7の打順。
普通にやれば、得点できるチャンスが来ました。
普通にやればね。
ただ、この普通にやるということが、恐ろしく難しい。
長打力があるミソラを迎えますが、打率は恐ろしく低い。
大島さんのエースもギアを上げてきました。
そして、ここぞの場面で精度のいいコントロールを発揮してきます。
ここです。こういうところが、県大会に来るのにふさわしいチーム。
要所を抑えるということを、エースがしっかり分かっています。
対する、イーグルスの5番のミソラ。
ここで、どうすれば得点できるかという工夫が打撃に見えません。
この場面は、最低でも内野ゴロでランナーをサードに進めることをめざさなければ、チームバッティングになりませんが、あえなく三振。
当ててくれればラッキーぐらいの感覚でしたが、三振することを予想して、二塁のトウマには盗塁を指示。
悪いながらも、三振三盗で、1死三塁とし、イーグルスの得点パターンを作ります。
先に好機を高田イーグルスが作りました。
この場面は、パスボール、内野安打、タッチアップ、いろんな戦術で得点ができるパターンです。
そして、この打順ならば50%以上の確率で得点できると私は判断しています。

迎えるバッターは、後半にヤマ場が来るとふんで、打順を下げておいたユウシン。
手堅くバントも頭をよぎりましたが、ユウシンならば三振することはなく、最低でも内野ゴロは打ってくれるだろうという期待をこめて、打席に送り出します。
いきなりバントのサインを出しても行けるでしょうが、ここ最近はバント練習もしていません。
慣れないことをさせるよりは、打たせるに集中したほうが、確率は高いというのが私の分析でした。
しかし、振りが鈍い。
あえて遅くしている振り方ではありません。
それでも当てる技術はもっています。
スピードに対する選球眼もある程度あるので、見極めもできるだろうと思いましたが、大島さんのエースも追い込みを早くしてきます。
最後は、力のあるボールを外角にきちんとコントロールして、空振りを取られました。

二死三塁となり、バッターは指名打者のハル。
スピードボールに対する反応をみて、リツの所に起きました。
ハルは、トウマの後、間違いなくチームのバッティングをリードする存在になることでしょう。
3年生ながら、打席に入ったときの落ち着き、準備ができています。
何より、どんないいピッチャーに対しても、臆することなくバットを振り抜く意思の強さを持っています。
びびらない。
ここが、ハルをこの打線のこの打順に置く理由です。
しかし、二死となり、大島さんのエースは心理的な余裕がでてきました。
コースを散らして、最後はズバッときて、空振り三振。
高田イーグルスの主軸、5,6,7を三振に切って取られてしまいます。
先に先制のチャンスを、絶好の打順で迎えながら
得点できなかった。
このことが、のちのちまで響くことになります。

しかし、なんでしょう。
後手を踏んでいる感じが、違和感となり、ザラザラした舌触りのようないやな感じを拭いきれません。
いつもならば、想定した複数のパターンの1番いいところとはいかないまでも、それなりのところを引いてきますが、今回は、悪いところばかりを引いてきます。
そして、最後にもうひと押しができない。
この気持ち悪さ。
簡単にやらせてくれない、さすが県大会と言うべきでしょうね。
ここは、我慢です。
こういう試合に不慣れなイーグルス。
先に崩れてはいけません。
我慢比べ、こういう時こそ、当たり前のことが当たり前にできることが求められます。
それを、強さと呼ぶのだと私は思ってます。
それが、できないと強くなれません。

ミソラとトウマのバッテリーもそれを理解しているようです。
下位打線では省エネピッチング、早い追い込みをこころがけ、守備でリズムをつくり、バックの援護を待ちます。

攻撃に変化が必要だと感じたので、下位打線は思い切ってオールバントの戦術。
しかし、大島さんのエースのフィールディングが抜群にいい。
サード線に転がしても、なんなくアウト。
なんなくではないんです。
みんな結構上手いバントをいいコースに転がしています。
ナイスバントと高田イーグルスのベンチが思っても、ファーストベースぎりぎりのところでアウトになってしまう。
いつものバンドが決まらない。
彼のオールレンジでバントに対する素早い守備前にバント死の山を築かされます。

さて、打てない、バントができてもアウトになる。
どうすりぁいいんだと思案をしていますが、こちらも相手を抑えています。
こりぁ終盤にヤマ場がくるとふんで、我慢比べを覚悟しました。

イーグルスも抑えていますが、大島さんもおさえている。かっぷりよつの状態となりました。
しかし、試合展開からいって、攻め込んでるのに本丸がとれないという、精神的落胆からくる消耗が激しいのは高田イーグルス。
その消耗がレッドゾーンにいくまえになんとしても先制てんをとって、後攻のアドバンテージをとってプレッシャーを与えたいところです。

ほころびは、いつも突然やってきます。
終盤に近い5回の表、パーフェクトに抑えていますので、先頭の4番を討ち取って1死、この回もいい出だしだぞと喜んでいると、バントが来ました。
バント対策として、サードには動きのいいユウシンを置いています。
こちらも対策には抜かりはない。
しかし、このバッター、大島さんのエースなんですが、バントも上手い。
正面は狙ってきません。
そして、ユウシンの前進の猪突を狙って速いバントで間を抜いてくる。
いつものユウシンであれば、なんなく裁くところでしょうが、反応が遅い、抜かれてしまいます。
ランナーを出してしまいました。
そしてここからが、大島さんの凄いところ。
さっきのバントを含め四連続バントを敢行して、全て前に転がすという快挙。
ツーストライクになっても、その方針は揺るぎません。
こちらのバッテリーも手を子まねているわけではありません。
厳しいコースを突きますが、ことごとく当てられる。
これは、運も味方していますねえ。
これが、勝負のあやというものです。
いくらペースを主導していても、一瞬で逆転されてしまう、怖さ。
さっきまで、こちらのペースだったことが、昨日のことのようです。
25000の今川義元が桶狭間で、3000の織田信長に敗れる時、今川義元もそう思ったことでしょう。
勝負所を抑えられた。
4番からの五連続バントをくらって、2点をもぎ取られてしまいます。
精神の安定が、1番のモチベーションであるミソラの牙城を崩すには十分の攻撃でした。
そして、その崩れゆく牙城をバックも支えられない。
バント処理で討ち取ったあたり、送球が少しそれました、ファースト、リツが捕れない。
その他にも小さなミスが連発します。
当たり前のことが当たり前にできない、弱さを露呈します。
この回、何回アウトを取ったことでしょう。
貧すれば鈍す。
悪い方向に少しずつ引き込まれていく、この流れを食い止める勇者が出てきません。
こうなる、とたんに弱くなるのが高田イーグルス。
それでも、エースミソラがなんとかファーボールを出さずに、我慢強くバックに任せます。
味方にミスが連発しても、なんとかファーボールださないようにするメンタルの強さが出てきたと思います。
それでも、泣いています。目が真っ赤です。
頭の中は、「みんなもうちゃんとやってよぉ~」で一杯でしょうが、それをなんとか表面にださまいとしているのが、よく分かります。
ミソラはミソラなりに心に整理をつけようとしています。
ぐっと歯を食いしばって、マウンドを守ります。
みんなが下を向こうとしている。
こういう時に、声を必死に出すのは決まってアオトです。
試合になると、いつも彼の声はかすれています。
おそらく選手全員も声は出しているでしょう。
しかし、こういう時に、聞こえない小さな声ではだめなんです。
当たり前のことができなくなっている。
だこらこそ、いつも以上が求められます。
声だけでは、上手くいくことも、勝つこともできないでしょうが、声がなくては、いいプレーはできず、結果勝つこともできないと私は思います。
そして、アオトの声は誰かに言わされている声ではありません。
自分が本気でなんとかしようと思っているからこその声。
だからこそ、みんなに響く。
崩壊しそうなミソラをセカンドから援護しています。
アオトの声に表されるように、少なからず、みんなそう思っている。
なんとか全軍崩壊は食い止めます。
しかし、このミスから始まった2点は大きい。
たらればになりますが、きちんとプレーしてれば、与えることのなかった点数です。
取られたからにはとりかえすほかにない。
イーグルスの攻撃は5、6、7の三回。一点ずついけば、追いつけない点差ではありません。

5回裏は、ユウシンから。先ほどの振りを見て、捉えることは難しいと見ます。
ユウシンの技術ならば、バントは成功するかもしれない。
しかし、またしてもオールレンジのナイスフィールディングに阻まれます。
続くハルは、追い込まれながらファールで粘りますが、最後は三振に切って取られる。
ソウスケも三振で、大島さんペースで試合は終盤に進みます。
6回表は、2番からの好打順。ここで追加点は許してはいけません。
先頭を三振に討ち取ります。3番もショートゴロ、アユキ、キューバ人の取り方を封印し、確実性のある捕球を心がけています。
4番もファーストゴロに討ち取って、三者凡退。

6回裏、ラストバッターのハルトからの上位につなぐ打線に、期待をつなぎます。
この回しかないでしょう。
ハルトがでて、一番からの上位で逆転する。
その絵は頭にきちんと浮かんでいます。
しかし、ハルトは三振するも、アユキが選球眼を活かしてファーボールを選びます。
パスボールの際に、二塁へ、ん?ポロッたか?
オーバーランがでかい。
アユキ、あきらかに三塁を狙っています。
よどんだこの流れを打開する1点が今は欲しい。
アユキなりのチャレンジだったのでしょう。
三盗をこころみますが、挟まれて憤死。
暴走と好走は紙一重。
セーフになれば好走、アウトになれば暴走となります。
しかし、今回はあきらかに暴走。
この点差、この打順であれば、ここは待つべきでした。
ただ、なんとかしたいというアユキの闘志は伝わりました。
こういう勝負の綾となる所の見極め。
アユキは身をもってわかったことでしょう。

つづくマナトもファーボールとなり、あまり無理をしなくてもよかったな、という後悔がよぎります。
マナトを一塁に置いても、点は入りません。
スコアリングポジションのカタチを狙います。
アウトになったとしても、3番のアオトからの打順。
ここは仕掛けます。
いけ!と
マナトも盗塁の意味がわかってきました。
最初はサインもわからず、滑り込みもわからなかった。自分が置かれている状況を理解できなかったというのが本音でしょう。
しかし、今のマナトは違います。
自分でセンター2番というポジションを勝ち取りました。
県大会のこの状況で、今なぜ盗塁のサインが出たかを理解して、動いています。
能動的に動くことは、受動的に動くことよりも強いと私は思っています。
我々の意図を汲んでチームとして動いている。
ここにマナトの成長を感じます。
この成長を見るときに、センターのマナトの後ろに位置取るヒロカズコーチを思い出します。
守備のスタートの切り方、守備位置の捕り方、バッターへの心構えなど、おそらくマナトに教えていたはずです。
その成果が少しずつ試合や練習でも目に見えて上手くなっていることを、マナトはプレーで証明してきました。
レギュラーを勝ち取ったのは、バントによる打撃だけではなく、きちんと計算できる守備が大きく作用しています。その後ろにはコーチの影がついている。
マナトだけではなく、選手全員がそれぞれのコーチのいろんな角度からのアドバイスと情熱に支えられています。
そんなマナトが、ここで決めなければならないという盗塁を見事に盗塁を決めました。
よし!よくやったマナト!と心の声。
まだ、マナトに対して「見事」という形容詞は早いのかもしれませんが、二死二塁のスコアリングポジションを作って3番のアオトに託します。

さぁアオト頼むぞ!チームに勢いを与える1点をもぎ取ってくれ!
ここが勝負どころと踏んだのは、イーグルだけではありません。
大島さんのエースもトップギア。
コースうんぬんよりも、気合の入った球でねじ伏せにきます。
アオトも、フンッと気合の入ったスウィングを繰り出します。
五分と五分、ツーツーの平行カウントになりました。
0:2で一点が欲しいイーグルス、やりたくない大島さんの意地と意地のぶつかり合いの決着は、エースがアオトを外角でねじ伏せました。
打てないくやしさに涙を漏らすアオト。
まだ終わってないぞと声を掛けるヒロカズコーチ。
その通りです。
まだ、終わっていない。
ゲームセット、もうやめろと言われるまで試合は終わっていません。
試合の途中で泣くということは、自分の、自分たちの負けを認めていることになります。
そんな精神状態でいいプレーができるでしょうか?
もう一回立ち上がれと、這い上がってこいとコーチは言ってるんです。
私もそう思います。

そしてさらに残酷なことに、最終回の7回表は、アオトのセカンドエラーから始まりました。
そして、また泣くアオト。
傷口の塩を塗るような状況でも、泣くな、下を見るなというコーチの声はやむことはありませんでした。
そうなんです。
このあきらめの空気、ムードはおそろしく伝染しやすい。
精神が崩壊しそうな時こそ、誰かが踏みとどまってチームを鼓舞しなくてはなりません。
まだだ、まだ終わらんよという気持ちの奴らを作らなければいけません。
何がきっかけで、また闘志を取り戻すかわかりません。
我々が最初に試合を捨ててはいけないんです。最後の最後まで選手全員を信じなくては、コーチのあの声はでません。
しかし、いったん崩れた流れの連鎖を止めることは難しい。
最終回での追加点は、万死に値します。なんとしても避けたい。
それもまたプレッシャーになったようです。続くバッターをファーボール。
下位打線なので、ストライクを入れておけばアウトがとれる打順なんですが、テンパっているミソラには、おそろしく至難の業になります。
三振をとるもののパスボールも絡んで、1点を献上。
1点は重いが、まだ1点だ・・・
8番もピーゴロで二死まできました。
点差は3点ならばワンチャンスでいけると自らを鼓舞して、選手も鼓舞します。
あとワンナウト。
しかし、ここで9番をファーボールで出してしまします。
二死1、3塁。
いままでやってきた練習を振り返る時間です。
このフォーメーションは、今年の守備体形のトレンドではないでしょうか?
そして鬼門でもある。
今回もひっかけました。サードランナーがでている。
よし。
が、しかし、カットに入ったミソラがサードに悪送球・・・
この場面、何回見てきたことでしょうか?
決定的な2点目が入ります。
自分のミスでの失点は、ミソラをどん底に落とすには十分のプレー。
思うところはありますが、反省するのは試合のあと、ツノダコーチの格言を思い出して、タイムをとって落ち着かせて、もう一度前を向きます。
パスボール・・・
3点目・・・
最悪の逆流の中をバタフライをして押し戻されている感覚です。
しかし、それでもあきらめない。
大丈夫、大丈夫だと言い聞かせて、次のプレーに集中させます。
1番バッターをキャッチャーフライで、トウマが大事に捕って、最終回の長い攻撃が終わりました。
0:5
満塁ホームランでも逆転できない状況を最悪というのでしょうが、何が起こるかわからない。
可能性は限りなく低いでしょうが遅々とした歩みを止めてはいけません。

5点を追うイーグルス最後の攻撃は、トウマから。
快音はとおざかっていますが、初球を思い切り引っ張ってツーベース。やっとこさ、県大会でヒットらしいヒットが生まれます。
ひとり気を吐いている。イーグスルのヒットは、トウマの2本のみなんです。
本当は、トウマの前にランナーがいる展開を作りたいんですが、そうはさせてくれません。
むしろ先頭バッターは自由に打たせていいという感覚なんでしょう。

こちらは5点を追いつかなければならない。小細工はできません。打たせることしかできません。
こうなると選手は、自分でなんとかするしかありません。
ここまでくると、技術よりもその選手の精神力にかかっています。
しかし、その精神力を覆いこむように、相手の余裕が上回ります。
1点なんぞ、痛くもないという大量リードを背景に、相手エースはバンバン追い込みを速くします。
五点リード許したエース、味方のミスや孤立無援も確かにありますが、それをひっくるめてなんとかするのがエースってもんです。
いろんな理不尽、不条理を請け負って最後は、そこに打たせた自分の不甲斐なさとして整理ができるか?
ここがミソラの今後の精神的なおおらかさ、大きさのカギとなりそうです。
それにしても、今は涙を浮かべているミソラ。
まともに打てる訳なんてありません。 
ミソラ、行けるのか?と問うと、
びけまふ(行けます)と涙声、目は真っ赤、
いけるわけねぇべと思いつつ、自分自身を奮い立たせる言葉を吐くミソラに期待します。
もしかしたら……
一打に可能性を秘めるバッターがこの高田イーグルスに何人いることか?
さぁミソラ、がんばってこいと送り出します。
これもいい修行、うちのエースが行けるって言ってんだから行けるべという、気迫のみのルール。
しかし、その気迫はも、相手のエースの気迫の前に三振。
トウマを返せません。
続くユウシンもセカンドゴロ。
本来であればこの三人の打者は、白獅子で三連続ホームランを打った三人です。
その三人でも点が取れない……
そして、最終回という焦る状況、八方ふさがり、誰もが諦める条件がそろっています。
その時の高田イーグルスはどうだったか?
胸を張って、いいチームと言えたでしょうか?
そこに、この試合の結果があると思います。
そして、そうさせた最たる責任は、監督であるの私にあります。
全国大会を狙う大舞台の初っぱなに、この散々たる状況。
何が悪かったんだ?
どこで間違えたんだ?
どうすればいいんだ?
何が足りなかったんだ……
あと1人を残して、なぜだ?どうしてだ?の反省モード。
反省してしまっていますね。
反省するこということは、負けを認めるということです。

最後のバッターとなるハルも素早く追い込まれました。
最後はボールを振らされて三振。
ハル、全力のスウィング、いい三振でした。
ゲームセットとなりました。

カナト世代の後、新生アユキ世代の高田イーグルスの全国大会へのチャレンジはここで潰えました。
壁の高さを感じたというよりも、自分たちのプレーがまずできなかった。
全力を出すどころか、まず豪快に自分ですっころんだというところでしょう。
実力をださせてくれなかった、大島スポ少さんのほうが強かったということです。
全力を出させることができなかったから、悔しい。
ミソラは、泣いています。アユキをはじめみんながっかりしている。
私は、泣くという感情がいっさいでませんでした。
今回は、ダメだった。
どこをどうしていくか?どうすればいいか?
バントはできるようになりましたが、それはできるというだけ。
その上の「質」を求められるレベルに来ました。
大島さんのエースのオールレンジのバントに対するフィールディング、普通にやるバントだけでは、県大会では通用しないことを教えてくれました。
いいバントなんですが、こちらのバントがことごとく封じられる。
で、あればどうすればいいか?技術を磨いていくしかありません。
先のことばかりを巡らせています。悔しさを未来に転化している。
この子たちならば、できる。我々ならばできると覚悟を決めました。
そして、この子たちともう一度、この舞台に戻ってこようと誓いました。
大丈夫、お前たちならば、きっとできる!という可能性は、涙になりえません。
むしろ、この先の対する闘志でしかない。
だから、泣いている暇なんてないんです。
ただ、いいところもあった。
ミソラとトウマのバッテリーは、県大会でも通用します。
このバッテリーを中心とした、守りからリズムを作って、少ないチャンスをものにするチーム。
これが高田イーグルスの理想形だと私は思っています。

この子たちは、私たちを県大会という大舞台に連れてきてくれました。
県大会に来たのは、ソウゴたち以来です。
その時、レフトを守っていた、ミソラが今はエースとなってマウンドにいます。
何回も何回も跳ね返されたっていい。
挑戦して、一歩一歩子供たちが進んでいく姿に、我々は彼らの成長を確認します。
今回はまた跳ね返された。
でも、何回でも何度でも、私たちは挑戦します。

さぁゆけ、高田イーグルス!









いわきの空は夏ではありませんが、彼らの戦いを見ると「夏」と表現するほかにありません。

ここはいわき新舞子。
舞台は2022県内選抜大会。
戦う相手は、地元いわきのレッドスターズ。
我々は14人、相手は9人の戦いとなりました。



執筆中
6年生最後の大会だった坂下ライオンズ杯、第2試合、坂下ヒーローズ戦は、3:5で敗れました。
要所を締められない弱さ、これが敗因です。
負けの原因は、分かっています。大まかには。
この大まかになるには、それまでのいくつかの細かい課程を踏んできています。
大ポカは、その小さなミスが重なって起きるものです。
ミスには、どうしようもないミスと、防ぐことができたかもしれないミス、このふたつがあります。
前者は、最大限、できる限りの準備と警戒をしたうえでのプレーの結果であり、ミスとは言わない、言えないと思ってます。
しかし、後者はそうではない。無為無策、準備や警戒なしの悪い結果、それを称して「ミス」といいます。過去の経験から学ばない者、未来を予測できない者、考えない者、運のない者にそのミスは訪れると思っています。
試合中、ずっと気を張って、集中を継続することは難しい。子どもなら、なおさらのことです。
どうやっても、抜ける時、魔がさす時があります。
簡単なプレーなのに、全員が疲れていて、声が出ない時、指示がない時、そんな時にミスはやってくるんです。
今回の坂下戦もそうでした。
普段通りプレーすれば、なんでもないプレーが、できない。
何回もいいますが、そこが弱さなんです。
そこを自覚しなくていけません。
その弱さの自覚、今年の6年生にできたかどうかを振り返ります。
今年の6年生、嫌というほど自覚したと思います。ミスと三振とエラーの山。
白獅子の代表決定戦で負け、最後の試合でも負けた。
一般的な結果の分析から言えば、負けは負けです。
そして、選手ひとりひとりのチームに対する貢献度が低かったと言わざるを得ない。
だから、負けたんです。
結果的に負けた。
負けることは、悪いこと。
情けないこと、カッコ悪いこと。
そう思っていました。
だから、負けたくない。
勝ちたい。
昔は、そればかり考えてきましたが、ある時からそんなことはどうでもよくなってきました。
勝っても負けても、その価値を決めるのは、結局、自分たちであり、自分なんです。
周りからいくら、ちやほやされようが、
反対にケチョンケチョンにダメ出しされようが、
その結果を、そしてそこまでの課程を評価するのは、最終的には、自分なんです。
最後は自分の中にどうやって落とすか?
どうやって、腑に落とすか?
ここが大事なところ。
誰がなんと言おうが、最後は自分で決めていい。
勝ち負けにこだわることもいいでしょう。
勝ち負けの結果に至るまで、準備をしてチャレンジをした自分を褒めてもいい。
要はなんだっていいから、自分を肯定できるか?
ここにかかっています。
だから、大事なのは自分を信じてやること、最後はここなんですね。
そして、それを自信といいます。
失敗していいんです。
ミスっていい。
負けたっていい。
優勝しない限り、ほかのすべてのチームは負けているんですから。
たいていのチームは失敗して、負けてるんです。
しかし、大事なのはここから、
この失敗があったから、このミスがあったから、この負けがあったから、次の成功につながり、勝利につながったと言えるように、すぐに前をむきましょう。
だから、泣いている6年生をはじめ、選手みんなを顔を見渡して、言いました。
負けた。ミスった。打てなかった。
6年生は、小学生最後の打席があんな中途半端なスウイングでいいのかと問いました。
お前ら、あれで悔いは残らないのか?と。
でも、過ぎた時間は決して戻ってこない。
わかっていて聞きました。彼らに次がないことをわかっていて問いました。
泣いて、悔やんでもいいが、そんな暇があったら、次へいけ。
6年生は、ソフトボールは最後で、次は別な何かになるかもしれないが、次につなげろ、と。
みんなの顔を見渡します。
泣いているやつ、ぐっと口を結んでいるやつ、下を見ているやつ、選手のいろんな表情を見渡しますが、ハルトのところを見たときに、私の中の感情のダムが崩壊しました。
悔しさに涙をこらえられないハルト、この試合彼は反撃の時にバントを決められず、さぁ追いつくぞと意気込んだ、最終回で自らのエラーでとどめとも言うべき失点になった二死からのサード悪送球をしたことを、心から悔やんでいるようでした。
俺があの時バントをきめていたら、
俺があの時、ちゃんと投げていたら……
ハルトの性格上、人一倍、自分を責めていることでしょう。
それが涙となって、悔しさをにじませて、私を真っ直ぐに見ています。
その視線に、私は耐えられなくなりました。
そこにきて、悔しさをかみしめている6年生の三人をみる。
こいつらに挽回の機会が無いこと、
そしてこいつらと一緒に肩を並べて戦えないことが、たまらなく寂しくなりました。
泣く予定ではなかったのに、いままでの想い出とともに、次から次へとあふれてきます。
何より、このチームでもう戦えないことがたまらなく寂しい。
カナトのはにかんだ表情、チヒロの背伸びした笑顔、キヒトのへっぽこスライディングがもう見れない。
強くはなかった。
強いチームでなかった。
しかし、だからこそみんなががんばって努力をしてきたと思います。
総体、白獅子代表決定戦、じげんカップ、そして最後の坂下ライオンズ杯、強くはないからこそ、いろんな、努力を積み重ねてきました。
そして、まだまだ足りないぞ、お前らはもっともっとできるぞ!という結果で終わる。
実力を出し切ったとは、だれも言えないでしょう。
しかし、これも結果です。
そして、事実です。
受け入れて、次に進みます。
カナト、チヒロ、キヒトの三人は高田イーグルスという船を下ります。
彼らはまた、彼らの船を探し、別な世界に旅立って行くでしょう。
いままで何回何回も、一緒に苦楽を共にしてきた選手を見送ってきた風景です。
何回やっても、ここだけは慣れないものです。
慣れたくない。

彼らの人生にどれだけの関わりをもてたかは、今の段階では、わかりません。
そして、そんなのは分からなくていいと思っています。
彼らの中の構成する成分に、高田イーグルスは必ず何パーセントかは入っているはずです。
この先、いいことも悪いこともたくさんあるでしょう。
野球やソフトボール以外の面のほうが多いでしょうね。
その都度、高田イーグルスでやってきたことが、彼ら三人を助けてくれると私は信じています。

このチームが始まった時に、カナトは言いました。
「楽しくやりたい」と。
彼ら三人はどの「楽しさ」に行きついたのか?
おそらく、この楽しさの捉え方で、彼らの生き方が変わってくると思います。
興味もありますが、彼らの旅はまだ道半ば、この後変化することもあるでしょう。

そして、柳津の空を見上げ、私は毎年やっていることを自問します。
俺は、彼らの役に立てたのだろうかと。
この問いには終わりはありません。
しかし、答えのヒントが彼らの表情の中にあります。
それが、私にとっての羅針盤。
この羅針盤は、新しいクルーとなった船でも役に立ってくれるはずです。
そうやって繋いできた20数年。

カナト、チヒロ、キヒト、ひとまずお疲れ様
カナトたち三人は、別な目標に見送って、船は新しい目標に進みます。

さぁ、次は新人戦の県大会です!






今年、しのぎを削ってきた坂下ヒーローズさん。
白獅子県大会への代表決定戦で敗れ、じげんカップでやり返した。
そして今日、今年最後の決戦になります。
龍虎相打つと言えばかっこいいですが、ねずみともぐらの戦い。
この後に取り戻すチャンスがないんですから、寝覚めが悪くならないよに、両チーム、なんとして勝ちたい。
これを勝たなければ、即6年生は終戦となります。
小学生時代のソフトボールが、ここで終わるか、もう1回あるかがこの1戦で決まります。


それは、3点を先制される展開から始まりました。
いつも警戒している、スラッパーの1番を幸先よく討ち取りますが、2番の6年選抜のセカンドのフミヤをフルカウントと追い込みながら、ファーボールを与えてしまいます。
立ち上がりに不安があるので、多少のミスは仕方がありません。
ファーボールのひとつふたつは計算のうちです。
すかさず盗塁を決められる。
ここで、キャッチャートウマが、刺して切れるようになると、もうひとつ上の景色がみれることでしょうが、それは今後の話。
スコアリングポジションにランナーをおいて、一番怖いバッター、3番エース、トウヤを迎えます。
ここは、入り方を気をつけねばなりませんっていってる間にゾーンに投げ込むバッテリー。
・・・わかってねぇなと思いますが、ここはガンガンいこうぜ!を選択したようです。
続けざまに、ゾーンに入れて、ツーストライクに追い込みます。
そして、空振りで三振。
怖いバッターを抑えました。
二死2塁で、4番の6年選抜のユウトを迎えます。
ワンヒットで先制される場面は、変わりません。
そして、ユウトは高田イーグルスを得意としているという心理的有利さが働いています。
余裕がある。
その余裕から、ボールの見極めに自信があります。そして、ボール球を振らない。
またしてもファーボールで、二死1,2塁。
流れがよくありません。
抑えそうで、抑えられない。
フラストレーションがたまっていく展開。
こういう時は、気を付けなければなりません。
5番のキャッチャーを迎えます。
この子もいいバッター。ボールで入りますが、二球目をライトに痛打されます。
ライトはキヒト。
ひとり帰ってきますが、その後の送球が悪い。
中継プレーも乱れて、1点でとどめられるところを、3点献上してしまいます。
1点は仕方ないにしても、あとの2点は全くのミス。
これをやらないように、中継プレーの練習をしてきたんですが、ここに焦りと状況判断が加わると、いつも通りのプレーは出せないのは、高田イーグルスの弱さなんでしょうね。
3点取られた。
この事実は覆らない。
で、あればどうするか?
二死なので後続をきっちり断つことですが、6番にデッドボール・・・
気持ちの不安定さが、もろにピッチングに表れてしまうのが、ミソラの悪いところ。
ですが、本人なりに何とかしようと思っているようです、7番は三振をとります。
3アウト、長い初回が終わりました。
長かった。
やられているときは特に長く感じます。

さぁ、立て直す。立て直します。
まだ初回、一点一点とっていけば、間に合います。
逆境の時こそ、その人の、そのチームの真価が問われます。
そして、私は、簡単にあきらめるようなチームになって欲しくないと思っています。
なんとか、チーム全員の心を持ち直すようなプレーがでるような展開になるように、しかけていくことを決めました。
人間ですから、そりゃ焦ります、その焦った中でも、どうするかを考え、ベストを尽くす。
これを自分にも、自分のチームメイトにも、伝染させていくほかに、逆転する道はありません。

しかし、この覚悟を打ち砕くように、高田イーグルスの6年生スリーアミーゴスの1,2、3番をことごとく討ち取る、エースの気迫。
得点した後をきっちり、ゼロに抑えるというセオリーをきっちり実戦されている、この展開。
やはり、6年を先に並べるのには、無理があったかという後悔の念が、頭をもたげます。
悪い予感しかしませんでした。
初回の攻防は完全に負け。

初回は負けましたが、まだチャンスはある。
この後、挽回するしかありません。
そのためにはこれ以上の失点を避けなければならない。
8番の下位打線から始まる坂下ヒーローズを、きっちり押さえることで、守備からリズムを作ることを自らに課しました。
そして、それをきちんとやってくる。
このあたりに、粘りが出てきたと思います。

さぁ反撃です。
1点1点を積み重ねていくしかありません。
打順は、6年生の誰かが出塁してくれることを期待して、そのランナーを帰すために置いた、主砲のトウマから始まります。
ここはなんとしても出塁することが、仕事になります。
それをわかってか、コンパクトな振りでセンター返しで出塁します。
ミソラもファーストへの内野安打で、ランナーが二人。
ランナーが増えることで、守備側の選択肢が増えてプレッシャーがかかります。
すかさず、6番においた、アユキにバント、これが内野安打となり、満塁。
一気にイーグルスへ流れが傾きかけようとしています。
この大事な場面で、迎えるバッターは7番、アオト。
得点圏打率では、私の体感でトウマの次あたり、チームトップクラスを誇ります。
アオトは考える打者です。そこは、お父さんにきっちり教えを受けている。
そして、それを自分なりに考えて行動に移すことができるクレバーな選手です。
ここで、どう打てばいいかをわかっている。
センターにはじき返し、相手のエラーも手伝って、一挙に3点をもぎとり、試合を振り出しに戻します。
いやー、この集中打。
細かい戦術を挟みながら、内野安打もありながらですが、4連続でつなげていく集中力。
おめぇら、やるじゃねえか!と驚き、その成長にほおが緩みます。
ここに高田イーグルスのタフさを感じます。

さぁ、おいつきました。
ここは一気に振り放しておかなければなりません。
最低限、1点は得点差をつけておかなければいけません。
しかし、相手もさるもの、ここで離されてはいけないことを分かって、バッテリーもギアを上げてきます。
その気迫をはじき返せない、いなせない、8番のハルト、バントもできず、追い込まれてから進塁打も打てず、チームを勢いにのせられません。
本当は、ここで送って、ワンアウト三塁の形にしたかった。
その意図ができなかったことで、坂下ヒーローズに勢いを戻してしまいました。
ラストバッターのマナト、セカンドランナーのアオトを打って返すことは難しいと判断します。
バントでヒット、あわよくば相手のエラーを狙いますが、ピッチャーのフィールディングが良くて、三塁に送るにとどまります。
二死三塁。
パスボールでも1点をとれる状況を作りましたが、確実に得点するためには、1番のカナトが打たなくてはいけません。
負ければ、高田イーグルスの6年生として、最後の打席になるでしょう。
そんなことを考えて打席に入っているとは思いませんが、打たなくてはいけないということは理解したようです。
ボールが2球先行したことで、ファーボールが頭に浮かんだのかもしれません。
ファーボールは、相手主導の産物です。
ファーボールという魅力にとりつかれると、積極的な姿勢が失われてしまいます。
まして、いいピッチャーならば、ツーボール、スリーボールから何度でも立て直してきます。
それが、できるからいいピッチャーなんです。
カナトの振りに迷いと焦りと恐れが見えました。
カナト特有の落ち着きのない動きにそれが見て取れます。
ファールを打たされて、カウントを稼がれ、最後は三振に倒れました。
ともあれ、3:3の同点に戻しました。
おいつきましたが、一気に逆転できなかった。
マラソンで言えば、やっと並走になった所です。問題はここから、ここからが、我慢比べ。
先に音を上げて、諦めた方が、敗北の谷に突き落とされることでしょう。

そこをイーグルスの若きバッテリーも分かっているようです。
2番から始まる坂下ヒーローズの好打順をきっちり警戒しています。
好打者の2番3番を連続三振に切って取ります。
いい流れ!
この後の4番も討ち取れば、守備でリズムを作って裏の攻撃に勢いがてるはずです。
しかし、ここに立ちはだかるのが、またしてもユウト。
初球をセンターに運びます。
簡単に終わらせてくれません。
やはり、ユウトはイーグルスにとって鬼門です。
パンパンと二死としながらも、打たれた事でリズムをくずしたのか、ワイルドピッチを立て続けて、三塁にいかれ、最後もパスボールで、再び逆転されてしまいます。
二死からの得点は痛い。
精神的に痛い。
それでも、後続は絶って望みをつなげます。

のこりは、あと2回の攻防というところか?
イーグルスの攻撃は、6年生のチヒロから始まります。
ここ最近、バットは振れているようですが、確実性に欠けます。しかし、ここに至っては、技術うんぬんよりも、塁にでてやろうという気迫のみ。
なんとか当てて、機会をうかがうほかありません。
しかし、チヒロにもカナトと同じように、不安と焦りと恐れがあります。
自信をもって、振っていない。
中途半端なハーフスイングがストライクをとられ、最後もハーフスイングて見逃してしまいます。
振りに迷いがある。
ここを払拭してやれませんでした。

続くキヒト、この病は伝染病ですね。
キヒトにも迷いがある。
もともとトップが遅いのに、さらに遅くなっています。
そこにきて、なんとか当てようとするので、振りが小さくなっている。
自分の強みである、筋肉量を活かした豪快なスイングのカケラもありません。
ありんこのような小さな、迷いのある振り、このスイングで打てるはずもありません。三振。
6年生最後の試合にも関わらず、チームに何の貢献もできていません。
そして、なんの工夫もないし、覚悟もない。
最後の打席がこんなチャレンジでは、後悔しか残らないでしょう。
正直、がっかりしました。
最後の打席になるかもしれないのに、そんな対応しかできなくさせてしまった自分に対して。
指導者として、ふがいない。
もっと思い切り、気持ち良くチャレンジできるような機会を与えてやりたかった。
しかし、悔やんでも時は戻ってきません。
そして、今はまだ悔やむ時ではない。
試合中に反省なんぞしてはいけない。角田コーチの言葉ですね。
まだ試合中です。
どうにかして、逆転することだけを考えなくてはいけません。
6年生2人が倒れて、二死。
トウマがまたひとり気を吐いてセンター前に運んで出塁しますが、続くアオトがセカンドゴロ。
連打になりません。
んーこの打順で得点できないと、後がなくなってきます。
それでも、まだ1点差。
最終回の表をゼロに押さえて、裏の攻撃に賭けます。
表の坂下ヒーローズの攻撃は7,8,9の下位打線。
ここは、当たり前に押さえなくてはいけません。
しかし先頭バッターをファーボールで出してしまいます。
我々がもう少し上にいこうとするのであれば、どうしてもミソラとトウマのバッテリーに頼らざるを得ません。
そして、このバッテリーはもっと成長する余地がある。
下位打線をきっちり討ち取るという余地を、今後はものにしなくてはなりません。
が、しかしまだそれはできないようです。
それでも、後続を討ち取り、二死三塁としました。
あとひとつで、ゼロ封できる状況。
この大事なところで、1番バッターを迎えます。
ギアをあげるバッテリー、サードゴロに押さえます。
よしっ!押さえたと思ったところが、玉にきず。
サード、ハルトが悪送球でランナーの帰還を許します。
やってしまった。
大事に行き過ぎたか・・・
完全に打ち取った当たりでした、普通に捕球して、投げて、ファーストが捕ればスリーアウトになって、ゼロに抑えることができた。
この普通のプレーが、まだ当たり前にできない、しかも大事なところで当たり前にできないところに高田イーグルスの弱さがあるということを露呈してしまいました。
結果的に、先頭バッターへのファーボールと、二死からのサードの悪送球、この二つのミスが失点に絡みました。
やはり、ミスが重なると心臓を取られてしまいます。失点に繋がる。
ミスはつきものですが、あってもひとつに止めること、それをチーム全体でできる、実力と集中力を育てることをが大事だと改めて、気づかされるプレーとなりました。
最終回での致命的な1点、点差は2点となりました。
後続はなんとか討ち取った。
総崩れは回避できるようになってきましたが、満身創痍。
逆転する確率はさらに低くなりました。
しかし、ゼロではない。
2回に3点をもぎ取った実績があります。
やってやれないことはない。
少ない確率、限りなく少ない確率を引っ張ってくるしかありません。
大事なのは、高田イーグルスの全員が、選手、ベンチ、指導者、保護者の全員がそれを信じることができるかどうかです。
しかし、人とは現金なものなんです。
信じる根拠がなければ、心は動きません。
心が動かないと体も動かない。
そして、心を研ぎ澄まし、未来を信じて、失敗を恐れず、動く人間が隣にいてくれないと、その勢いは伝染していきません。
小さい波が大きな波になり、相手をのみ込むということは、そういうことです。
私は、そういう場面を何回も見てきましたし、そうならない場面も嫌というほど何回も見てきました。
勝利の女神はどちらに微笑むか?
いろいろな条件がそろう時、とんでもない逆転劇が怒ります。
そして、そうなる時は、チームが一丸となり、迷いなくプレーができる時、それが今のイーグルスにできるか?
2点のビハインド、このままでは負けます。負ければ6年生は即終わりになります。
土壇場での逆転を信じて、アユキを送り出します。
イーグルスにとっては、実質の1番バッターとなるアユキから始まるこの打順は、好打順です。
アユキが出れば、なんとかなるかもしれないという一筋の光明が見えてくる。
逆に、そうしてはいけないことを坂下ヒーローズもわかっています。
全力と全力のぶつかりあい。
トップギアに入っている坂下ヒーローズのエース、トウヤを前にアユキは三球三振に倒れます。
矢じりが刺さらない。
ここでがっかりしてはいけません。がっかりしたとしても、がっかりしていることを表に出してはいけない。空元気であったとしても、チーム全体で続けることが大事なんです。
気持ちで勝つことはできませんが、気持ちがなければ勝つことはできません。
次のバッターのアオトは、サードのエラーで、泥臭く出塁します。なんとかバットに当てて転がした。
これでいいんです。簡単には終わらないぞという姿勢を見せること、相手にそう思わせることが大事なんです。
なんとか塁にでた。
そしてハルト。先ほどのエラーの影響を切り替えていることを祈ります。
坂下のエース、トウヤは下位打線に対して、ガンガンなげてきます。
追い込みもはやく、小細工もない。
気持ちよく三振に切って取ることしか考えていない。
崖っぷちに追い込まれているイーグルスとハルト。
それでも、もてる限りの技術と気迫でなんとか食らいついていきます。
ファール、ファール、ファール、ファール、ファール・・・
5球連続でファールにするしぶとさを見せます。
こういうところなんです。このハルトの粘りが、少しずつ試合の流れ、雰囲気を変えていきます。
坂下ヒーローズは、なんで三振しないんだ?なんでアウトが取れないんだ?という疑問。
疑問はやがて不安になります。
反対にイーグルスは、不安と焦り、恐れが、いけんじゃぇか!という期待に変わりつつあります。
そのためには、ハルトはなんとしても塁にでなければならない。
しかし、三振、振り逃げもキャッチャーの正確な送球でアウト。
最後の天王山も抑えることができなかった・・・・
二死・・・
こうなると、ふたたび勢いは、坂下ヒーローズに戻ります。
最後は、マナトを三球三振にとって万事休す。
イーグルスの今シーズンの最後の大会は終わりました。
終わってみれば、この最終回、坂下ヒーローズのエース、トウヤはアオトに投げた初球のボール以外は、すべてストライクの投球、圧巻の投球でした。
やられるべくしてやられた・・・
このバッテリーは、最後の最後で、当たり前のことを当たり前にできる強さをもっています。
来年も、必ず高田イーグルスの前に立ちはだかることでしょう。
であれば、どうするか?
過去を振り返り、修正点を見直して、未来につなげる。
すでに、私はこの作業に入っています。
今回の敗因は、ミスをしてはいけない場面でミスをしたこと。
その準備を怠ったこと。
プレーをやりきる実力はだんだんついてきています。
おそらく8割はできるようになってきている。
3点を取り合った後の2点は、どちらもツーアウトからのミスです。
前の3点も、中継のミス。あれがなければ、1点ですんだところ。
ランナーを出した時の、不用意なバッテリーミスによる進塁、ランナーを背負った時の二死からの悪送球。
こういう細かいところ、プレッシャーのかかったところでのプレーの精度を上げていくしかありません。
こんなのはやって当たり前だと、思ってもらわなければいけない。
プレッシャーを克服していく練習なんて、ありません。ないと思います。
普段を練習をきちんと、真摯に向き合ってやっていくことがその近道だと思います。
近道なんてしようと思わないで、取り組むこと。
普段通りにやれば、できるという小さい自信を積み重ねていくほかにないと思います。
不安要素の2割を克服していく。
これが、5年生以下の選手にとっての課題となるでしょう。
チームの浮上のカギはここにあります。

しかし、6年生の小学生ソフトボールスポ少の旅はいったん、ここで終わりました。
いろいろ思うところはあります。
それは次回。













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