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時に笑い、時に苦しみ、時に涙する。すべてはグランドへ。 ソフトボールを通して成長していく小学生とその保護者、スタッフの物語。
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♪ 縦の糸はあなた~、横の糸はわたし~ ♪
これはなにも恋人たちだけの歌ではありません。
スポ少もしかり。
人が織りなす物語は、誰かと出会ってからでないと織りなせない。
人が糸だとするならば、ひとりではただの一本の糸のまま。
縦に横に織りなされてこそ、織物になる。
それでこそ、いろんな役にもたつし、あたたかく人を包み込むこともできる。
からまってこその存在意義がある。
いろんなところで、いろんな人に出会って、いろんな織物として表現していく。
生きていくことは、最後まで物語を編んでいくことなんだと思います。
まだ見ていませんが、『糸』という映画を見てみたい。
今年のスポ少も、そういった意味で、いろんな物語を編んできたと思います。

先の関柴さんの大仏杯で、今シーズンの高田イーグルスとしての最後の大会が終わりました。
結果は、今シーズン初めての決勝戦に挑み、全力を尽くした上での準優勝。
柳津さんとの決勝を夢見ていましたが、それはかなわず。
柳津さんを倒した下郷さんを倒しての優勝を目指しましたが、下郷さんの前に屈する。
あの強さで新人メンバーだというから驚きです。
そんな強敵を前に、負けはしましたが、今シーズンの最高の結果をみんなで勝ち取りました。

私はそれをサードコーチャーズボックスから見ていました。
これまであったいろんなことを思い出しながら、今年のレン世代の最後の戦いを目に焼き付けていました。彼らと戦うのもこれが最後。
万感の思いで、目頭が熱くなります。

ちょっとそれはおいておいて、試合の流れから。
下郷さんの先攻で始まりました。高田イーグルスは、初回に先頭をファーボール、エラーもからんで3点を失います。
まず主導権を握られます。
しかし、その裏にレンの1発で、すぐに反撃の狼煙を上げますが1点止まり。
主導権は下郷さん、高田イーグルスが2点を追う展開になります。
2回の下位打線を抑え、3回の攻防。表をゼロに抑えます。

そして、この試合の山場3回の裏を迎えます。
トウマからの打順、しぶとくライト前に運んでまずは一塁に。
そこから、アユキのサードへのセフティバント、レオのファーボールでランナーが埋まってきます。
相手が苦しいところで小技と選球眼を発揮する。下位打線にしぶとさがありました。
これは、もしや!と思い始める。逆転のきっかけなんてそんなもんです。
最初は、おぼろげな希望でしかない。普段であれば簡単にアウトになってしまう。しかし、こういう時、その薄い可能性が連鎖していくことで、みんなが奇跡を信じてみたくなる。
「流れ」とはそういうものです。
そして、誰もがレンまで回してくれ!と祈る。
相手投手もこの下位打線で切らなければいけないことはわかっていたはずです。
ここはイーグルスが流れを制しました。
ボルテージにゲージがあるとすれば、ここがMAXでしょう。
やってきました千両役者。
1死満塁として、バッターは前の打席でホームランのレン。 
ここで最低でも同点、逆転はしておきたいところ。
その可能性は十分にあります。
下郷さん、外野はあり得ないくらいに下がっています。特にライトは。
ここで一発をくらってはいけないことはじゅうじゅうわかっているということです。
二点差を考慮して、長打警戒のみのシフト。
この下がり具合は、レンでも抜けないかもしれない。捕られる可能性もある。
しかし、レンならば……
貧すれば鈍す。
ピンチの時ほど、都合のいい方を選びたがります。
そこに油断がありました。
三塁にいるトウマにあらゆる可能性を伝えませんでした。
レンがホームランを打つことしか考えていませんでした。最低でもヒットを打つ。それしか、考えていませんでした。
ここが、この試合の天王山……だった。
今思うとそう思います。

レンが放った大飛球。
定位置だったならば、抜けてホームランとなったでしょう。
しかし、長打警戒のシフト。
それでもライトは懸命にさがり、なんとかキャッチします。
抜けたと思った、三塁のトウマはハーフウェイまで飛び出ています。
戻れ!と指示を飛ばしますが、戻ったときは、ライトが捕球したと同時くらい。
体勢をととのえないまま、タッチアップの指示を出してトウマを走らせます。
サードランナーは、ライトからの返球はよく見えます。
これは、アウトになるかもしれないと判断したトウマは、途中でとまります。
この時点で、これはやばい、アウトのタイミングになるかもしれないと思った私は、送球がそれることを願って、行けーと再度指示を飛ばします。
おそらく、迷ったままホームに突入したトウマ。
まんまと、いい送球が返ってきました。
飛んで火に入る夏の虫。
それでも、懸命にスライディングをして、生還を試みるトウマ。
刹那。
アンパイアのアウトのコール。
ワンアウト、満塁のチャンスが、タッチアップ、ホームゲッツーで、一気に消滅してしまいました。
燃えさかる反撃の炎が一瞬で消し飛んだ。
これがチームに与える影響は計り知れません。
それをサードコーチャーズボックスから、見ていることしかできない私。
ことの重大さに気づいて、立ち尽くすことしかできません。
やっちまったぁ~
これは、俺の指示のせいだ。
プレーの前に、タッチアップの可能性も示唆していれば……
すまんトウマ。すまん、みんなと思いながらベンチに帰ります。
あぁ~ぁという味方の落胆がみてとれるだけに、なおさらつらい。
ここは、謝るしかありませんが、まだ試合は終わっていません。
反省するなら、試合が終わってから。
そう言い続けてきた私が、それを実践しないわけにはいきません。

しかし、このチャンスを活かせなかったことは、のちのちまで影響します。
当たり前のことを当たり前にできないと、流れはきてくれません。
勝利の女神は微笑んでくれません。 
その後も大きく陰を落とします。
同点もしくは逆転できなかった。
エース、ユナもいまいち調子に乗りきれない。
そこにきて、ユナが投げるときだけ、冷たい雨が降るという悪循環。
11月の寒さ、指先の感覚を奪っていきます。
ファーボールを連発。
微妙なコントロールがきかなくなってきました。
投げた瞬間に、明らかにボールとわかるコースが連発。
追いつくどころか、点差はどんどん離されていきます。
次第に盛り下がるベンチ。
敗北の大合唱が明らかに近づいているのがわかります。
冷たい雨に屈してしまいそうになります。
このままではイーグルスは消え去ってしまうという危機感。
マウンドはすぐそこにあるのに、どんどん遠くに行ってしまうような感覚。
自分がなんとかするしかないという、とんでもない孤独感と必死に戦っているユナ。
同じピッチャー出身だから余計にわかるんだと思います。
6年生の最後の試合だから、みんなで声を出して応援して!とベンチの下級生を鼓舞し続ける、みなこコーチ。
はっと気づいて、このままではいけないと私も思いかえします。
こいつらとこのユニフォームを着て戦うのもこれが最後。
この6年生たちとの最後の試合をこんな葬式みたいな試合にしてはいけない。
それぞれがひとりで戦っているような思いにさせてはいけない。
みんながチームで戦っていることをもう一度思い出せるように、ベンチのみんなと声をだそう。
私も寒さで震える選手たちを鼓舞します。

「ピッチャーを助けろ!」
ほとんど叫びに近かったと思います。
相手チームに押されて、勢いをなくし、自信をなくし、今まさに高田イーグルスは、試合さえもなくそうとしています。
自然と下をばかりを向く。
肩を落とし、雨でぬかるむグランドばかりを見つめることしかできない。
このままでは終われない。
このまま終わらせてはいけない。
冷たい雨がほおをつたいます。
少し前であったなら、ユナのこころはとっくに折れて、雨と一緒に涙があふれていたことでしょう。
しかし、今は違います。
折れそうになるこころを、必死に押さえて、バックを信じて、シュンペイを信じて思い切り腕を振る。おそらく、彼女はシュンペイのミットをみて、集中して投げることでその精神を保っていたと思います。
大丈夫!俺が全部とるよ!だから思い切りこい!
うん、わかった!
そして、シュンペイはユナが投げやすいように、努めて大きく構えます。
その動作に、バッテリーの無言の会話が聞こえてくるようでした。
マウンドは孤独ですが、決してひとりで戦っていないということを彼女はわかっています。
そして、エースとしてのユナを信じてバックを守る彼らもいます。
だから、私は彼らに頼むんです。
お願いだから、ピッチャーを助けてやってくれ、と。
いってるそばから、目がうるんでくる、涙で前が見えなくなってきます。
春先は、ピッチャーのノーコンとバックのエラー、あんなにかみ合わなかった彼らがこの冷たい雨の中、必死に踏みとどまっています。
チームが勝つためでもありますが、このくそ寒い雨の中、集中しているのは、隣にいる仲間のためだと私は思います。

なんとか、スリーアウトをとってベンチに戻ってくる彼ら。
マスク越ではありましたが、私が泣いていることに、レフトから戻ってくるタイチが気づきました。
「コーチ、泣くのはまだ早いですよ。試合は終わっていません。すぐに追いつきます!」
詳しくは思い出せませんが、そんなようなことを私にいったと記憶しています。
そして、颯爽とベンチに戻っていくタイチ後ろ姿を見る。
私は泣き止むどころか、さらに前が見えなくなりました。もはや水中だといっていい。
あのタイチが私にそんなことを言うようになるとは!
今度の涙は、うれしい方です。
大きく成長して、他者に対する配慮、この劣勢にあってもチームに貢献しようとする姿勢。
あのタイチがですよ。
そうかっこいいことを言っていいのは、スラムダンクの流川クラスだけだからと、突っ込みを入れますが、あの時はタイチは確かにかっこよかったです。
自分がミスをしたり、ミスをしそうになるとき、
あんなに後ろ向きなことしか言わなかった奴が、反対に私を励ましています。
タイチのこころの成長を感じました。
てめぇら泣かせんじゃねえぞ、曇天(どんてん)の空を仰ぎ見ます。
この感極まっての涙とうれしい涙の混在。
彼らは確実に成長している。
それを最後の最後に我々に見せてくれている。
しかし、それも今回で最後。
終わりの時は確実に近づいてきます。
もう終わってしまう。それがわかる。
ベンチにいる彼らをみる。
どうしようもない寂しさの涙がやってきます。
もう、こいつらと一緒にソフトボールができないんだ。
そう思うだけで、天を見ている瞳のダムがあふれ出します。止められない。
雨で濡れたサードコーチャーズボックスが、私の涙でさらに濡れていきます。
マスクはぐしょぐしょです。

そして冒頭の「糸」を思い出します。
どちらが縦で、どちらが横かはわかりません。
しかし確実に言えるのは、スポ少という舞台で、選手のみんな、我々指導者、そして保護者のみなさんと1つの織りなす物語を作ってきたということです。
決してひとりでは、なしえなかった。
いろんな人が、いろんな材質、いろんな色の糸があってこそ、多彩な色彩や十分な強度を保つことができる。
ひとりひとりが一本の「糸」。
一本では、きゃしゃで、頼りなく、ふきとびそうな糸。
しかし、それがふたり、三人、四人とどんどん出会って、織り重なっていく。
人と関わることで、自分の存在に気づくでしょう。
そして、その自分も他者の存在の気づきになっている。
ホームランを打った自分をすげぇべと聞いてくるレン。
静かに自分の役割をこなすユウキ。
プレー以外の気づかいでもみんなを支えるマナト。
プレーでもベンチでもつっこみどころ満載のコタロー。
いっぱいいっぱいになりながらも全力をつくすレオ。
こころが弱っていた私に前向きな言葉をかけるタイチ。
そして、ユナのシュンペイのバッテリーをみる。
中島みゆきさんが高田イーグルスを歌ってくれています。
間違いなく私たちの糸は、彼らの糸と交差している。織りなしている。
彼らは私に教えてくれます。私達、大人に教えてくれます。
自分の居場所を探し、他者とともに居場所を作り、他者への配慮も忘れない。
これだけで、小さな糸が生きていくための練習の場に十分になりえる。
たかだが、スポ少という小さな舞台ではありますがこころを揺さぶる物語を紡いでいます。
私たちはそれが見たかった。そんな彼らを支えることで、自分たちも支えられていたことに気づくんです。
そんな彼らとの物語もここで終着となりました。
2:9。この試合は、下郷さんに軍配があがりました。今年の関柴、大仏杯は準優勝。
コロナ禍で大会数の少ない中では、ありますが、今年の最高成績を収めました。
この時期に、開催までこぎつけていただきました関柴スポ少、審判団、大会関係者の皆様には感謝の言葉しかありません。ありがとうございました。

さて、今年も終わってしまいました。
でも終わりではないんですね。
すでにもう始まっています。次の物語が。それぞれの物語が。
誰かと出会い、また新しい物語を織りなす。
私は確信しています。
彼らが織りなす物語には、スポ少の成分が必ず入っているであろうことを。
その糸がいろんな場所でひろがっていくであろうことを。


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