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時に笑い、時に苦しみ、時に涙する。すべてはグランドへ。 ソフトボールを通して成長していく小学生とその保護者、スタッフの物語。
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最終回。
4:6、点差は2点。
絶対に逆転するというみんなの思いが、少しずつ実現していきます。
一生懸命にやったものが、必ずしも実を結ぶとは限らないことはわかっていますが、どうか今だけは、今日だけは、その夢を実現させてやりたい。
信じれば、叶うという実体験をこの子たちにさせてやりたい。
その思いでした。 
ワンチャンスを作らせてください!
誰にでもなく、つぶやきます。
そのためには、猪苗代さんの表をやはりゼロに抑えなくてはなりません。
ここにきて、選手にも疲れが見えます。
それはそうそうです。
この熱さの中で、2試合目の終盤。
疲れのない奴なんていないでしょう。
ミソラにも色濃く疲れが見える。
そんな中で、彼女は必死にトウマのミットをめがけて腕を振ります。
しかし、先頭バッターをファーボールで出してしまいます。
握力がなくなってきている。
ボールも時折、高めに甘く入ることが増えてきました。
トウマも疲れから、単調な組み立て。
パスボール、パスボールの連発。三塁まで進まれてしまいます。無死三塁。
状況は最悪。
次の1点は、イーグルスにとって致命傷になります。
みんな疲れている。
限界は近い。
この表面張力にも似た状態。
小さなきっかけで、一気に状況は変わります。
崩れるか、持ちこたえるか?
私たちにできることは、彼らを信じて、少しでも助けになるように、守備位置やアウトカウント、ランナーの場所など10人目の選手として、ベンチ全員が声を出すことです。

これ以上のパスボールは避けたい。
ひと息つかせる。
タイムを取りました。
内野を集めて、ひとりひとりの顔を見つめます。
疲れはありますが、目はやる気に満ちています。
自分たちの勝利を信じています。
ミソラもあっぷあっぷながら、なんとかしようとしています。
トウマもこの状況を理解しているはずです。
ひと息はいれた。
大丈夫!
ランナーは三塁にいることを、再度、みんなで確認しました。
私ができるのは、ここまでです。
パスボールもできない。
1点もやれない。
この状況を確認しました。
後は彼らに任せます。

後がない。
そういう状況は、確かに彼らを強くしました。
特にバッテリーを。
討ち取るしかない。
打たせない。
となると、三振を取るしかありません。
疲れから、あれこれやる余裕はこの二人にはありません。
ミットめがけて、思い切り投げこむだけ。
なんて、危険なピッチングだとは思いますが、今は、この二人を信じることしかできません。
できることといえば、よし、いいぞと、ベンチでも鼓舞すること。
こうなったら、褒めて褒めて褒めまくるしかありません。
みんなの声援を受けて、持てる限りのチカラを絞り出すミソラ。
ここにコントロールが再び戻ります。
早い段階で、追い込み三振を取っていきます。
しかし、空振りよりもファールが多くなってきている。ぎりぎりのところで交わしていきます。
一人切り、二人切ります。
トウマも必死にワンバンドのボールを止めます。
打たせない。
明確な意志が見えます。
3人目も三振にとって切ります。
よぉし!我がチームの全員が手を叩いて喜んだ!
そんで吠えたはずです。
笑顔で、帰ってくる選手たちをベンチに迎えます。良くやった!
おそらく最後の守備の最大のヤマ場を抑えました。
まだ、終わっていない、まだ終わっていません。
最後まで戦う意志のある顔が頼もしく映ります。

ラスト。
1番のアオトから。
アオトが出れば、ぐっと逆転は近づきます。
安定したコントロールでリリーフに入ったエースですが、最後の緊張感からか、乱れます。
スリーボール。
しかし、ここから立て直してきます。
ストライク、ストライク。
ここがエースたる所以でしょう。
最後もアウトコースにきっちり決めてくる。
アオトも食らいつきます。
セカンドゴロ。
しかし、セカンドエラー。
何かある!この回には魔物が潜んでいる。
私たちを勝たせようとしている。
そんな気配さえ感じました。
しかし、このキャッチャーからは普通に走れません。たけど、送りバントでは1点しか取れない。
さて、どうする?迷います。迷う。ここは迷った。

私のサインを見るアユキの刺すようなまなざし。
その目を受け止めた時、わかりました。
迷う必要などなかったんです。
迷っていたのは、私で、アユキに迷いはありませんでした。
アユキに任せればいい。
アユキに託せばいいんです。
2番のアユキの器用なところに賭けます。
相手エースもここが正念場とみるや、ギアを上げてきます。
意地と意地のぶつかり合い。
追い込まれますが、アユキも必死にファールで食らいつきます。
決めにくる。
そのコースをアユキは捉えました。
三遊間、ショート止めるのが精いっぱい。
ヒット。
アオトとアユキが繋がりました。 
打線として繋がった。
それは、イーグルスの命脈でもあります。
よっしよっしよっし!おし!
いいぞいいぞと、お祭り騒ぎのベンチ。

そして、満を持して先ほど見事なホームランの3番のトウマ。
一発でれば、逆転サヨナラです。
ベンチのボルテージは最高潮です。
こういう行け行けドンドンの時に打てるのが、本当のスラッガーです。
WBCの村上とトウマが重なります。
打て、打て、打てるぞ!
初球、引っかけます。打たされた。 
セカンドゴロ。
その間に、ランナーは進みます。
ホームランではなかった。しかし、進塁打は打った。
最低限の仕事はしました。
ワンアウト。


4番のミソラ。
ここは狙っていい場面です。
いままで、ためていたフラストレーションを一気に吐き出していい場面です。
集中しています。
いつになく集中している。
スウィングにも魂がこもっています。
そのスウィングが、パスボールを生みます。 
アオトが生還します。
結構なぎりぎりのタイミングでしたが、アオトのスライディングが見事。タッチがきてもかわせていたことでしょう。スライディングをしながら、左手でベースを触ります。かっこいい!
よーーーし!あと1点だぁ!
すかさず、アユキも三塁に行っていたのはいうまでもありません。
かなりの疲れもあるでしょう。
ミソラもチカラが入っている。
よく覚えていませんが、記録では1にヒット、内野安打となっています。
アユキは帰れなかった。
一三塁となり、ミソラが逆転のランナーとなりました。
スコアリングポジションに置く必要があります。
アユキはトリックプレーにはひっかからないでしょうから、ミソラに盗塁を指示します。
次のバッターは、シャープな打撃、好投手も苦にしないメンタルを買って5番に置いたハル。
いい打順の巡り合わせです。
なんとか、前にゴロを飛ばせば、サードランナーのアユキは帰ってくるでしょう。
あわよくば、ワンヒットでミソラが帰るという逆転の図も思い浮かべることができました。
頼む、頼むぞ、ハル!
トウマの次の長距離砲として、クリーンアップをになうことになるハルに賭けます。
しかし、相手が上でした。この場面で、タイミングをずらす効果的なチェンジアップを使ってくる。
たまらず、バットが出てしまいます。
止め損ねたバットに当たってファーストフライ。
振り切っての勝負をさせてもらえなかった。
これも、相手バッテリーの頭の良さ、狡猾さだと思います。
んー、ツーアウト!
お膳立てはしているんですが、もう一本が出ない。最終回でランナーを背負っている状態でも、ひるむ様子は見えません。
こちらも、選手を信じて送り出すしかありません。
6番ハルト。
上位と下位を繋ぐ役割として、打順をあげました。選球眼も良く、こちらの戦術を理解して動ける男です。
しかし、この場面、サインはありません。
打ての一点張り、これしかありません。
ボールから入ってきます。
次もボール。ベンチも盛り上がってきます。
次がボールならば、ファーボールも見えてきます。ボール。
スリーボールです。
相手バッテリーも気合いを入れ直します。 
ここから、立て直してくる。
ストライク、ストライクとして、スリーボール、ツーストライク。
五分に戻してきました。敵も然る者、いいバッテリーです。 
決めに来る。なんとかしろ、ハルト!
決めに来たボールはわずかに外れました。 
ファーボール。
満塁となりました。
最終回、二死満塁。 
ハルト、良く見極めました。
またもや、盛り上がるベンチ。
ここで、迎えるは最近よく、最後のバッターになるマナト。
この状況を理解しているのでしょうか?
打てばヒーローになれることは間違いありません。
反対のことは、考えなくていい。
ここに来て、ボルテージは最高潮。
初回に満塁ホームランを含むホームラン2本を食らって、身も心もボロボロになったイーグルス。
みんな下を見て、試合が始まったばかりなのに、既に絶望して泣いている選手もいました。
絶望のどん底に我々はいました。
そこからです。
そこから、少しずつ、少しずつ、這い上がってきた。
やるしかないという覚悟を確固たるものにして、ふたたび自信というなの鎧を一枚一枚装着してきました。
そして、一打逆転のこの場面を作った。
イーグルスの波がここまで大きくなるとは、誰が予想したでしょうか?
私たちも、信じていました。
10%くらいですが。
心がくじけても、いい場面を作って次につなげたいとは考えていましたが、本当にこういう場面を作ることができるとは。
限りなく、薄い可能性を鎖のように繋いでいる。
この子たちの信念のプレーには、本当に驚かされます。
曇りなく、前を見すえる彼らの目が、私に一斉に降り注ぐとき、こいつらと一緒にプレーできて、心の底から面白いと、悟ります。
こいつらとならは、やれないことなど何もないと覚悟が決まります。
後のこと、結果は考えません。
準備をして、やるだけです。

5:6
最終回、ツーアウト満塁。
その最後の矢となる、マナトを送り出します。
敵味方いろいろな感情が渦巻いています。
ここで、状況に押しつぶされることなく、自分を強く持つことができるか?
マナト、いつもそうですが感情をあまり表に出しません。
それそれで冷静だと思いたいところですが、いったん確認します。
攻撃のタイムをとって、マナトの目を見ます。
多少、恐れはありましたが、やってやるという覚悟が見えました。
打たなくては、負ける。
この状況をマナトは理解していました。
間をとって、確認して良かった。
我々にできることは、覚悟をもった選手たちの背中を押してやることだけです。
後は、マナトに任せるしかない。
全てをマナトに託します。
いけ!マナト!
イーグルスの全員がマナトに声援を送ります。
猪苗代さんもここは絶対に点数をやれないところ。
打たれてもだめだし、ファーボールもパスボールだめ。
こういう状況、球場全体がイーグルスの逆転劇を期待しています。
勢いはこちらにある。
流れはこちらにある。
限りなく、勝利の可能性を信じます。
勝負だ!

初球、ボール。
相手バッテリーも緊張しています。
次もボール。
一球一球、球場全体に、歓喜とため息が、入り交じります。
ツーボール。
打つという覚悟が揺らぐカウントになりました。
ここで、マナトに、もしかしたらファーボールもあるかもしれないという、もう一つの選択肢をもたらします。
選択肢が増えるということは、迷いに繋がるということです。
マナトの中に迷いが生まれました。
ギリギリの状況では、迷いは命取り。
しかし、ここはマナトに託しています。
迷ったとしても、もう一回、必ず打つというところに戻ってこれるかどうか?
技術うんぬんよりも、気迫と気迫と、意地と意地のぶつかり合いになります。
そして、そこに冷静さも必要。
マナトの中にいろんな感情が入り交じっていることでしょう。
だとしても、あのバッターボックスでは、誰も助けてはくれません。
確かに、ベンチからの応援はある。
しかし、実際にプレーするのは、選ばれた選手たちのみです。
マナトは自分ひとりでなんとかしなければならない。
ここが、ソフトボール、野球の厳しいところであり、個人でチームを粉砕するところです。
個人とはいいますが、マナトの後ろには私たちがいます!
たくさんの人の思いを背負って、打席にたっている。
だからこそ、とんでもないプレッシャーを感じてしまう時がある。
マナトもそのプレッシャーを感じているはずです。
押しつぶされるな!負けるな!ベストを尽くせ!
サインを見るマナトの真剣な目に、私も無言で語りかけます! 
お前なら大丈夫!
相手のエースと戦い、打たなければならないというプレッシャーとも戦う。
マナトは、総体の時も、白獅子の時も結果的に最後のバッターになっています。
自分がアウトになることで試合が終わってしまう瞬間を2度も経験している。
その悔しさ、やるせなさ、無力感を知っています。
マナトはそこを乗り越えなければなりません。
ここを乗り越えれば、マナトはさらに大きく成長するはずです。 
さなぎが蝶になる瞬間を私たちは見ているのかもしれません。
三球目、ストライク。
四球目、ボール。
スリーボール、ツーストライク。
最終回、ツーアウト満塁で、スリーツー、ランナーは自動的にスタートをきります。
ヒットならば、二塁のミソラも帰ってきて逆転。
ボールならは、ファーボールで押し出しの同点。
勝負の時です。
あんなに騒いでいた両軍のベンチが、この瞬間だけは静寂が包みます。
磐梯山のふもとが静まり返ります。
思い切り投げこむ、相手エース。
トップを作り、備えるマナト。
絶妙なコースに決まります。
主審の手が上がります。
ストライク!

この瞬間に、イーグルスの命脈は完全に絶たれました。
歓喜に沸く猪苗代ベンチ。
見逃し三振で、肩を落として、顔をくしゃくしゃにして、泣きながらベンチに戻ってくるマナト。
泣くなマナト、泣くなよマナト。
お前が一生懸命にやってきたことはわかっている。
またしてもマナトの挑戦は報われませんでした。
次にいけ!
その肩を、ポンと叩きながら、天を仰ぎます。
ここまで、来ても、勝たせてくれないんですね!と空に無言で吐き捨てます。
勝てなかった。
負けた。
最後の県大会への挑戦が終わった。
相手を追い詰めながら、最後に逆転の場面を作りながら、実現できなかった……
挨拶をする選手たちの声が震えています。
景色がゆがんで見えます。
保護者への挨拶を終えた彼らは、嗚咽していました。
またしても、勝てなかった。
こんなに追い詰めながら、追いつけなかった。
打ちひしがれています。
私も打ちひしがれています。
イーグルスも打ちひしがれている。
手が届きそうで、届かない。
もう少しなんです。
そのもう少しを、ものにできない。
そこが悔しい。
その悔しさの中に何を見いだすか?
私たちは、考えはじめます。
今の彼らに足りないものは何か?
これから先、どうすればいいか?
終わった今は,悔しさに涙してもいい。
泣きたいときは泣くべきなんです。
かっこつける必要など無く、鼻水たらして、無様に泣けばいい。
そうした方が、次に進めるはずです。
幸い次の試合はここではやりません。
踏ん切りをつけるためにも、心の整理がつくまで泣いて、悔やむ時間を長くとりました。

この負けを活かさなければなりません。
まだ、今シーズンは終わったわけではない。

何回も言ってきましたが、イーグルスはまた次の空に向かいます。

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