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時に笑い、時に苦しみ、時に涙する。すべてはグランドへ。 ソフトボールを通して成長していく小学生とその保護者、スタッフの物語。
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ときどき私は思うんです。
スポーツには、真剣な勝ち負けがある、だからいいと。
そして、勝ち続ける者など皆無。
結果、みんなが負けています。
しかし、勝ちたい!打ちたい!守りたい!抑えたい!という明確な意志がなければ、上手くいくものもいかないことを、かつての野球少年であった我々も経験してきました。
だから、ソフトボールが、野球が面白いことを知っています。
そして、その意志が個人ではなく、チームとして一丸となった時の強さ、一体感。
それこそ、チーム全体で、求めよさらば与えられんを具現化していく様は、見る者を引きつけます。

この前の次男の高校野球の選手激励会で、保護者会長が言っていました。
甲子園に行ってくれるならば、万々歳。
しかし、みんな納得のいく負けをしてくれと。
激励会なのに負けることをいうのは、という枕詞もありましたが、会長は別なことを伝えて激励したかったようです。
負けに納得なんてあるのかい?と思いましたが、よく考えると身にしみます。
やるだけやって、きちんと泣いて、自分に区切りをつけてこい。
そこまでやってこい!とわが子たちにいっていたんですね。
燃え尽きてこい。そして、また次にいけと。
やることをやって負けたならば、きっと清々しいに違いありません。
しかし、高田イーグルスはまだ、清々しい気分になる時ではありません。

1回の表を終わって、0:6、5回コールドまであと1点。絶体絶命のピンチです。
しかし、この絶望的な状況は、選択肢を簡単にしてくれました。
やるしかねえ。やるしかねぇんです!
四の五の言ってねぇで、やるしかねえ。
かえって、この子たちにとんでもない集中力という翼と牙を与えてくれたのかもしれません。


猪苗代さんの先発は、先ほどとんでもないホームランを打った10番のカゲヤマ君。
6点差もあるので余裕のヨッチャンです。
球は速い、球威もある。
しかし、よく観察すると制球が定まっていない。
ちいさなほころびですが、今のイーグルスにはわらをもつかむようなちいさな隙につけいるしかないんです。
ここ最近の勝負強さ、度胸の良さをかってリードオフマンに命じたアオトに、
「ワンストライクは捨てていこう!じっくりいこう!」と指示しました。
頼むから、初球はボールであってくれと神頼み。アオトもどちらかというと打ち気が先んじるタイプ、本当は打ちたくて打ちたくて仕方がないでしょうに、きっちり、見ています。
ボールを選んで、またボールを選ぶ。
向こうも気合いを入れて、三球目にはきっちり入れてくる。
スリーボールにしない。立て直してくる。
こういうところが、いいピッチャーである資質だと私は思います。 
そうであっても、制球難、たまらずファーボール!
よしっ!ちいさなほころびが少し広がりました。
すかさず盗塁をしかけます。
アオトは二塁を落とします。よし!

さて、どうするか?
いっきに大量得点を狙うか?1点ずついくのか?
んーー~~、思案した挙げ句、私は後者を選びました。大量得点を狙って、失敗した時のリスクは計り知れない。おそらく、立ち直れないでしょう。
私たちの中に宿る、細い闘志の炎が消えてしまいます。
であるならば、たった1点でいい。
そして、ワンアウト三塁という形を大事にしてきた我々にとって、1番なじみのある状況を作り、いつものように、狙って1点をとる。
まだ、序盤であるこの1回に、自分たちのやり方で、文字通り、1点をもぎ取ることで、自分たちに自信取り戻すことを選択しました。
今の高田イーグルスは、たった1点が大きな希望を与えてくれるはずです。
メッタメタにやられた相手に対して、ひとかきでもいいから爪痕を残すこと。
やられたままで終わらないこと。ここが大事。
この突破口を1番のアオトが開いてくれました。
そして、2番にはなんでもできる、キャプテン、青い炎のアユキ。
アユキは状況に応じて、なんでもできます。
どちらかというと、積極攻撃よりもカウンターの宮田君タイプ(はじめの一歩ですが)、相手の力を利用して闘う合気道といったほうがいいかもしれません。
そして、カウントが悪くなってからも比較的考えて行動できる落ち着きもある。
アオト盗塁成功しています。
アユキは、基本バントですが、ボールを見極めます。待ちに徹した時の選球眼の良さよ、ここでパスボール。
アオトは三塁を陥れます。
ここは確実に打ち上げない方のバントを選択しますが、三塁線を狙いすぎ、失敗でツーストライク。
スリーバントか?
迷いますが、打たせます。
アユキならば、転がす。
私はそこに賭けました。
ピッチャーゴロでしたが、高いバウンド。
三塁のアオト、いいスタート、成田コーチのゴーの指示も良かった!
バックは間に合わないとふんだピッチャーは、一塁へ送球。あわよくば、フィルダースチョイスも狙いましたが、6点という点差が冷静な対処をさせました。1点くらいいいやという余裕がまだあります。
悠々と本塁を陥れました。
相手から見れば、たった1点。
我々からみれば、待望の1点。
のちのち、この1点が大きな1点となったことが分かります。
これを積み重ねていけばいい。
折れていた心に、少しではありますが、希望の火が戻りつつありました。
「あれ?いけんじゃねぇ?」「俺たちなら、やれんじゃね?」そう思わせることができました。
しかし、まだ全員に伝染していません。
まだ、負けると思っているやつらがいます。
そいつらを地獄の底から引っ張り上げなければなりません。
コーチをするくらいですから、我々はそういう逆転の場面を少なからず経験しています。
そして、チームがまとまる時の気持ちよさ、たのしさ、何より、一丸となった時の強さを知っています。
それを、この子たちも経験させてやりたい。
結果はどうあれ、諦めないことの大切さ、楽しさ、仲間の心強さを、自分の経験として刻み込んで欲しい。
私たちの願いです。

1回の攻防で、1:6。
30分は経過しています。
冷静に俯瞰してみます。
時間的も、点差的にもまだまだ絶望的な状況には変わりありません。
どうすればいいか?
ここまでやられていれば簡単です。
点数をやらずに、少しずつ追いつく。
これしかない。
こちらがつけいるスキは、相手が余裕であるということ。
指導者であれば、引き締めにかかりますが、完璧に引き締められるものではありません。
その慢心にこそ油断が生まれると思っています。
そのためには、守備でリズムをつくること。
いったんは破たんしましたが、もう一回ここに戻ってきます。
エースのミソラには立ち直ってもらわねばなりません。

2回表。
点をやらないことの大前提として、先頭バッターをどんな形であれ、きっちり討ち取ることがあげられます。
まぁ、初回は討ち取ったのに、大量得点になってしまいましたが、そのセオリーの本質は変わりません。
この回の先頭バッターは、ホームランのカゲヤマ君。
この人には、これ以上打たせてはいけません。
しかし、向こうも気持ちが大きくなっていたと思います。振りが大きい。
一球でサードファールフライに仕留めました。
よし、ハルトよく反応して、よく捕った。ポケットの一番深いところで収めるところに、ハルトの人間性を感じます。
この状況で、エラーしないことの大切さをわかっている。
だからこその大事な捕球が姿勢に表れていると思います。
先頭を切りました。
あとは、抑えていくだけですが、次の打者をファーボールで出してしまいます。
まだ、制球は安定していませんが、ここは我慢です。
制球が安定していないので、向こうも盗塁などのギャンブルをしてくる気配もありません。
じっくりやっていい。
山あり、谷ありの調子の中、なんとかしてやりくりしていくバッテリー。
次の打者を三振に仕留めてツーアウト。
次も内野ゴロで、この回をゼロに抑えました。
よし、まずはひとつクリア。
小さい目標を少しずつ、クリアしていくことで、自信を取り戻していきます。

裏。
こちらの先頭バッターは、ハルトです。
状況に応じたプレー、粘り強いプレーができるようになってきました。
自信がついてきたのでしょうね。
練習への真摯な取り組み方、周りへの配慮、ムードメーカーと何役もこなします。
そして、何よりビビらなくなってきた。
彼の打順をあげた理由はここにあります。
それと、もうひとつ、どこかで打線が切れるとすれば、ここだろうと思っていました。
上位と下位をつなぐ役割、切れた場合の影の一番バッターの役割も担ってもらうという狙いもありました。
その選択が生きました。
三振せずに、ショートにゴロ、そしてエラーを呼び込みます。
過分に運もありますが、これも実力、先頭バッターとしての役割をきっちりこなします。よし!

さぁ、先頭がでました。
1回と同じように、1点を取りに行きます。
しかし、打線は下位打線へ、打ってとることは難しい、となるとバント。
初球は警戒率が高いところですが、盗塁。
ハルトスタート遅い、限りなく遅い。
タイミングはアウトかぁ~、しかし、ショートがポロリ。ふぅ~助かりました。
あんにゃろめー、ハルトをエアでぶっ飛ばして、心を落ち着けます。
ここにも、運がある。
ノーアウト二塁。

次は、7番のマナト。
ここは、我々の形をワンアウト三塁を目指します。
ただ、マナトに言ったのは、ストライクだけバントしろ!
いつものように、うんと頷きます、このやろーハイだろうと訂正することなく、マナトの集中力信じます。
構えたバントの構えが引くのが遅くてビビりますが、それは直前まで見届けているという証拠でもあります。キャッチャーは捕りづらいはず。マナトなり作戦たど思うのは、勘ぐりすぎでしょうかね。
ここで、気づきました。
相手にピッチャー、バントの構えが投げづらい。
明らかに乱れます。 
そして、パスボール。パスボールでハルトはホームに帰ってきます。
また1点をもぎ取りました。
そしてマナトも、なんとか見極めてファーボール。よし!
ノーアウトで、下位打線で1点、これはでかい。
しかし、4点差、猪苗代さんはまだまだ余裕のヨッチャンです。


余裕のヨッチャンでいてくれる内に、少しでも追いつくために、二匹目、三匹目のドジョウ作戦です。
8番ゼンジにもバントの構え。
ふらふらとヘッドを揺らす、やや小馬鹿にした態度は、ゼンジの得意とするところ。
こういう人をおちょくる態度をとらせたら、右に出る者はいません。
今日のゼンジは、心が強い方で良かった!
弱い方だとわらのように、息で吹き飛んでしまうほど弱気になりますが、今日のゼンジは一味違いました。
プレーを楽しんでいる、私にはそう見えました。
このギリギリの状況を楽しんでいる。
そう、これでいいんです。
ここにもゼンジの成長が見えます。
あっやべぇ、うるうるがきました。前が見えなくなってきた。
しかし、ゼンジの仕草が私を笑顔にしてくれます。まだ、泣くなよ、俺がなんとかするとプレーで言っています。
バントを命じていますが、ことごとくボールを見極める。
その間に相手のパスボールを二つ誘い、三つ誘い、マナトをホームに帰します。
そして、自身はというとバントが空振り三振しますが、キャッチャーがポロリ、走れーとベンチからの号令にケツを叩かれた子鹿のようにファーストを懸命にめざします。
ギリギリか?
すべれーのみんなの絶叫!
近すぎる、頭から前転のようなヘッドスライディング。無様です、確かに無様、しかし、私たちにはとんでもなくかっこ良く映るのでした。
別にゼンジが打ったわけではありませんが、さも自分が殊勲打を打ったかのような喜びよう。
爆笑と歓喜の渦のベンチ。
その応援席に向かって、ゼンジは一世一代スタンディングガッツポーズ!
さらに、爆笑と歓喜が倍増したことは言うまでもありません。
ガッツポーズは、ベンチにむけてじゃないんかい!と悪態をつき、私は、泣きながら笑っていました。
良くやった!良くやった!ゼンジ!
まだ泣くときではありません。磐梯山の風が思い出させてくれました。

9番ソウスケ。
見るからに不安そうな様子。
チームの状態よりも、目の前の自分のことで精一杯といったところでしょうか?
反対にいえばそれだけ集中しているということです。
ソウスケにも、ボールをやるなとバントを指示します。
相手もだんだん慣れてきた様子、ストライク率が高くなってきました。
しかし、まだつけいる隙はありました。
パスボール、パスボールでゼンジは三塁にいきます。
ソウスケもよく見極めましたが、最後は三振に倒れます。
ソウスケ、心が折れそうです。前の試合でも、泣いてしまってプレーになりませんでした。
しかし、なんとか踏みとどまっている。
下を見て、うつむいて、泣きそうです。でも、泣かない。それでいい。
こういうプレッシャーとの戦いも今後彼を大きくしてくれるはずです。
「ソウスケ、大丈夫だ!」
これ以上の言葉は不要です。背中をポンっとたたいて、グランドに送り出します。
俺は、お前を信頼している。その視線を、彼の背中に送り続けます。
この回は2点を取りました。

それにしても、下位打線で2点をもぎ取り、ついに上位に持ってきました。
出来すぎな感もありますが、これも彼らの諦めない姿勢と懸命なプレーが持ってきた結果です。
そして、また少しずつ、「あれっ?これ、イケるんじゃねえ?」が伝染していきます。
そうです、そうなんです。
どんどん錯覚しろ!どんどん調子に乗れ!
明らかにベンチと応援席の雰囲気が変わりつつあります。
ゼンジが三塁にいます。
ワンアウト三塁、我々の形です。

そして、満を持して一番バッターのアオト。
バントもよぎりましたが、ここは内野ゴロでいい。アオトは三振しないに全振りで賭けます。
ここで打てば、3番のトウマまで回ります。回ったときに逆転の絵が見えました。
見えたというか、大いなる願望であり、希望です。
いけ!打て!打ち砕け!
アオトは初球からフルスイング
この場面、なかなか初球からフルスイングできる奴はいない。
そして、真後ろへのファール、タイミングは合っています。
ボール、ボールとなり、ストライク取りに来たコースをファール、こちらも簡単には終わりません。
向こうもこれ以上は点はやれないと思っているはずです。
高田イーグルスが息を吹き返してきていることをヒシヒシと感じてきているはずです。
意地と意地のぶつかり合い。
最後は三振でした。
悔しそうなアオト、いつもであれば心のダムが崩壊するところですが、すぐに立て直したようです。今まで何回も上手くいかずになく場面を見てきました。
アオトにも成長の証が見えてきました。
必死に泣くのをこらえて、切り替えようとする意志が見えました。うつむかず、前を、上を見て、すぐにチームメイトの応援に回る。
こういうところです。
こういうところ。
自分にできることを精一杯やって、その結果、上手くいけば良しとして、上手くいかなかったならば、チームに貢献できることにすぐに取りかかる。
自分の弱さに向き合っている。
この先もソフトボールだけでなく、いろんなところで失敗をするでしょう。そして、落ち込む。
その解決方法と経験値がこのスポ少で蓄積されていくことでしょう。
失敗に慣れる、怒られ慣れること、今の甘甘な教育の中では培われないもの、厳しい社会という現実に立ち向かうツールになります。
まさにそれが生きる力、タフな人間に育つ。
それは、いつか報われて欲しい。

さて、ツーアウト三塁でアユキ。
ここは、何としてももう1点欲しい。
二死なので、作戦はありません。
ここは、キャプテン、アユキに任せます。
打って返して欲しい。
彼の中にどんな考えがあったのでしょうか?
初球、いきなりバント、奇襲にでました。
二死なので、バントはないだろうと思っていた敵の裏をかく戦術だったのか?
サインではありません。
転がり方もいい。
二死なので、サードのゼンジもスタートは切っています。
ワンチャンイケるぞ!
昔見た映画「メジャーリーグ」を思い出しました。
かつての名選手、トムベレンジャーが、予告ホームランの構えから、意表を突く、二死からのスクイズ。
足をケガしていながら、懸命に一塁へ走る。
その姿がアユキに重なります。
ベンチ、応援席から、走れーの大合唱。
頼む!セーフであってくれ!
アウト!のコール。
全力を賭けたプレーは、アウトとなりました。
むなしくはありません。
全力でチャレンジしたこと、私は彼らを全力で褒めますが、それは試合が終わった後です。
よし!いい攻撃だった!
いいぞ、いいぞ!とコーチも褒め称える。
ヒロカズコーチも「見えてきた!」と。
そのとおり、猪苗代さんのしっぽが見えてきました。
いよいよ、高田イーグルスの全員が信じはじめてきました。
波がきている。
風が吹いている。
流れがきている。
私たちコーチ陣も、それを感じています。
あの時、ベンチも応援席も、みんなそう思いはじめたはずです。
これが、「一体感」。
チームスポーツ、スポ少でしか経験できない、チーム一体の行け行けドンドンです。
あと3点。
セーフティリードを詰め寄られている方は、まだ余裕がありますが、余裕のヨッチャンではもうないでしょう。
相手の警戒も厳しくなってくる。
それをどう粉砕していくか?
涙も乾きました。
いろんな成長を見せてくれる彼らがチームを間違いなく後押ししています。
頭の中には、SLAM DUNKの「10-FEET-第ゼロ感」がエンドレスで流れ、宮城ではなく、高田イーグルスの全員が「俺たちならやれる!」と言っています。

さぁ、勝負です!

















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