時に笑い、時に苦しみ、時に涙する。すべてはグランドへ。
ソフトボールを通して成長していく小学生とその保護者、スタッフの物語。
さて、1回戦で新鶴さんを退けた高田イーグルス。勝ちはしましたが、暑さにもやられ、くたくたで満身創痍です。
続く2回戦の相手は、総体で準優勝をして会津代表となった湯川男子さん。
4年生のころから投げているこのエースです。
経験豊かな指導陣とバックアップが充実している保護者体制。チームとしてもまとまっている強敵です。
そこにきて、1回戦でかなりの体力気力を消耗している高田イーグルス。
こういう状況、よくマンガにあるシチュエーションです。
そういや、アニメ、メジャーの横浜リトル戦もそうです。
圧倒的不利。
ただ、この状況でもアニメの主人公よろしく、闘志を燃やす男がいます。
キャプテン翼ならぬ、キャプテン、レン。
まずは、高田イーグルスに流れを持ってくるべく先攻を選び、打順1番の自らが左バッターボックスから突撃します。
大阪夏の陣、茶臼山に陣取った徳川家康本陣に突っ込む真田幸村というところでしょうか!
無理にひっぱらず、相手の球威を利用するように跳ね返す打ち方でレフトオーバーのツーベース。
いつものように腰を回さず、体を開かないようにレフト方向。手首も返してません。
アジャストできる。
当たり前のように打つのがレンのすごさです。
かっこいい。
続く2番のコタローがライトにはじき返し、たったふたりで1点を先制しました。
湯川さんをして
「あ?!簡単には勝たせてくれないんだな。」
と思わせた。
圧倒的不利をなんとかして、好転させようというみんなの気持ちをカタチにした、さも簡単にやってのけたこのふたりはたいしたもんです。
湯川さんの戦力と自軍の消耗におののく高田イーグルスに大いに勇気を与えました。
ただ、この後が続かない。
この1点で、湯川のハートに火をつけたか、虎の尾をふんだか、本気になったことはたしかです。
ペイ、頼みのユウキ、タイチ、3.4.5のイーグルスクリーンアップが三三振で沈黙。
種火を大きな炎にできませんでした。
しかし、高田イーグルスは虎の子の1点を先制。
湯川さんのペースにはしない、簡単には負けないという意思表示をキャプテンレンがきっちり示しました。
この裏を抑えて、さらに高田イーグルスのペースに持ち込みたいところ。
それをわかってか、エースユナは湯川さんの1番に対して慎重に入ります。
残念なことに、この試合の主審は、前の試合のように高めをとらない審判でした。
ユナの球威のある決め球はことごとくボールになる。
先頭バッターをファーボールで出してしまいます。
2番がバントですかさず送って、スコアリングポジションにする。定石をきっちり踏ませる。
攻撃のカタチをつくる。
このあたりが湯川さんの監督さんの経験豊かさです。
ユナも落ちついてバント処理ができました。
さぁ踏ん張りどころ。
相手も3番バッターで打ちそうです。
ここをきっちり抑えて、守備からまたリズムを作りたいところ。
ここが初回のキモになる場面だと思いました。
ここは抑えたい。
1点でも初回にリードしているといい事実が欲しい。
打たれますが、レフトに角度のついたフライになりました。
あァ~よかった。なんとかなるなとレフトをみる。
レフトオーバーですが、とれない打球ではない。
しかし、タイチ亀の子バック。
打球を落とします。
その間に一人帰り、あっと言う間に同点です。
やっちまったという表情。
私も事前にレフトのタイチを3歩前に出るように指示をだしていたので、ここは私の責任もあります。ごめんタイチ。
1点が入り同点とされ、なおもランナーを背負っている。
ヤバいです。
ここは、一気に崩れかねない状態です。
しかも打順は4番。
打つからこの打順にいる存在です。
ユナ、なんとかふんばってくれー!
誰もがそう思ったでしょう。
とらえた鋭い打球音。
すぱーぁん、と乾いた音。
ファーストライナー。
ファースト、トウマのミットに収まりました。
ふぅ~あぶねぇ~、にしてもよく反応した。
そして、次もトウマ。
打ち損じのファーストフライに反応よく飛びついた。
彼の反応力にはいままで、何回も助けられています。そんで、なんだかしらないけど、トウマの一挙手一投足まで見守るお母さん方の親衛隊みたいな組織があります。
うむ!私もその気持ちが分かります。トウマのプレーには、私利私欲がない。
モテようとか、かっこつけようとか、そういう自己顕示欲がない。
そこに山があるから登る。
あざとさがない無欲。
そこがトウマの一生懸命さをひきたてます。
そして、それがガッツ溢れるプレーとなり、チームを救う。
そのひたむきさが、上の学年を差し置いてレギュラーとなる資質です。
そこは、選手を選ぶべき監督もわかっています。
一気に崩れる危ないところをトウマの守備がチームと、やべー俺の指示のせいでという私のココロと私のせいでとれなかったタイチのココロを救いました。
こういうのがチームプレー、お互いを補填し合う。
何とか均衡を保ちました。
しかし、2回表、こちらの攻撃は三者三振であっと言う間に終わり、いやな空気になります。
2回裏、先頭をきります。
こういうところをきっちりやれるようになれば、まだまだ勝機はあります。
しかし、次のバッターにデッドボール。
こういうところ、先頭をきった意味がなくなってしまいました。
また送ります。二死。
9番を打ち取って、1番には回さないというミッションになります。
後から思うに、ここがこの試合の分水嶺でした。
この9番は出してはいけなかった。
この9番で打ち取らなければならなかった。
しかし、ファーボールで出してしまいます。
こういうギリギリのところをとれるようになれば、このチームはもう1個上の段階にいけると思います。
湯川さんのカタチになってしまった。
だけど、二死、ここはユナとペイのバッテリーがふんばるしかありません。
が、甘く入ったところをレフトに持って行かれます。
逆転されます。
均衡が崩れました。
しかし、まだ1点。
後続をきって守り切ればまだまだチャンスはある。
ところがこれに乗じることができるのが、会津代表たる湯川さんの強さ。
打ち取ったセカンドからセンターに抜けるアタリでしたが、センター前に持っていかれる。
後からはなんとでもいえるんですが、ここも試合を決めたワンプレーでした。
2番が打ったあのゴロ、ユナの球威が押していましたが、振り切っていた。
打ち取ったあたり、二遊間セカンドよりにセンターに抜けるゴロ。
アユキの守備範囲でした。
二死なのでとって、ファーストでいい。
確かに難しいバウンドになっています。
アユキは逆シングルではなく、正面に入っての捕球をこころみました。しかし、届かなかった。
これは間違いではありませんが、この場合は守備範囲の広くなる逆シングルを選択すべきでした。
捕れないまでもなんとかして、あてて抜けさせない。
彼の大事にいかなくてはならないという真面目さが裏目に出ました。
今回はできなかった。
しかし、次、やらないようにするためにはどうしたらいいか?これが大事。
上手くなるというのはこの積み重ねです。
去年の美里イーグルス、美里親善大会準決勝、くしくも相手は同じ湯川さん。
我々が故意四球をしようかと迷った末に勝負した結果、打たれました。
最終回に相手の長身のエースが打った打球。
セカンド、レンの脇を鋭い打球が襲いました。
レン、天性の感でセンター寄りに守っていました。
レンが横っ跳びしても捕れなかった。
おそらくグローブの先、数センチだったと思います。
すり抜ける勝利、すぐ後ろからやってくる死神のような敗北。
レンにも抜けていく打球の残像が残っているはずです。
あの時俺が捕っていれば……
レンも何回もそういう場面を経験しています。
そうやって上手くなってきた。
こういう修羅場、死線を何回も何回もくぐってくることが、アユキをはじめ、選手たち全員を強くします。
ただし、そうなるのはそのミスを悔やみ、今度はやらないと心から反省し、次のプレーに活かそうと心に刻み込んだやつだけです。
あれは俺のせいではない。
あれは仕方なかった。
あれはしょうがない。
それで片付ける奴は一生上手くならない。
これで終わってはいけません。
いったんはそう思ってもいいでしょう。
試合中は、切り替えることが大事ですから。
しかし、試合の後は振り返らなければいけない。
私はそう思います。
なので、私は試合中、選手を叱ることはしませんが、試合が終わればそこを指摘します。
「あの時、俺がこうしておけば……
あの時、俺がこう声をかけておけば……」
自分のミスがチームをピンチに、敗北に陥れたことの重大性を知る。
私もそうですが、試合が終わればなんとでも言えるんです。だからこそ、次はやらないように選択肢をたくさん用意しておくこと。
そして、その状況状況において的確にくりだせるように何回も何回も練習するしかないんです。
この違い、アユキならばわかってくれるはずです。
これで、突き放されてしまいました。
そして、トドメのレオのライトエラー。
均衡を保っていたがために、維持されていたものが大きく崩れる瞬間。
表面張力の水がこぼれた瞬間です。
おそらく、ここで心が折れたやつがたくさんいたはずです。
そして、いっきに疲れが津波のように押し寄せる。
精神が疲れきった体を何とか保っていたはずです。
チームの多くが、「あぁ~もうだめだ~」と思ってしまった。
私も含め、その負の連鎖は、ため息とともに秒で伝染します。
そういう大波に立ちはだかる勇者がいます。
ほとんどがもうだめだと思う中、最後の最後まであきらめない。
たとえ1回折れたとしても、破片をかき集めてアロンアルフア(瞬間接着剤)でくっつけて、足に杭を打ちこんでも大津波で抗う。
俺はここを1歩も退かない!
試合を、勝負を捨てない不屈の闘志をもつ者。
誰というわけではないんです。
自分よりも強い何万にも及ぶ大軍を敵にまわしては、誰もがびびり、逃げたくなるでしょう。
私もその一人です。今でもそっち側です。
それもわかる。
いったんはひるんでもいい。
しかし、この後が大事です。
しかし、同じ立場の仲間のことを考える。
ここで俺が逃げたら、残った仲間はどうなる?
一人足りないまま苦戦を強いられる。
そしてむざむざ、ひとりまたひとりとやられていく。
俺の力は足りないかもしれないけど、ないよりはまし。
仲間のために、ここまで自分をサポートしてくれた家族やまわりの人を裏切らないために、たとえ勝つにしろ負けるにしろ全力を尽くそう。
だから、もう逃げない。ここに踏みとどまってやるだけやってみよう。
この境地です。
どんな強敵、どんな窮地に陥って心が折れても、もう一回全力でがんばるというチャレンジの気持ち。
この境地に至ってほしい。
その気持ちをもって、孤独という灼熱のマウンドに立ち続けるユナを、バックが、守備が助けてほしかった。
ユナはユナで、ミスをしたメンバーを救うべく、この回はなんとしてもゼロに抑えなければいけなかった。
お互いがお互いを助け合う。
これができると、ひとつ上のレベルにいけます。
しかし、今のイーグルスにとっては荷が重すぎたようです。
エラーで出したランナー。
エラーをした選手からみれば、ごめんみんな、俺のせいで……ごめん。
やべぇ~、ユナ、この状態でストライクが入るのか?
精神的にも追い込まれてしまいます。
エラーをしたその選手のココロのピンチを一緒に背負うのがエースと呼ばれる選手の宿命です。
しかし、ここはさらにピッチャーのエラーとも言うべきファーボールを出してしまいます。
もちろん、エラーをしようと思ってプレーしている選手はいません。それもわかっています。
しかし、試合が終わったのであえていいます。
大事なところで守りきれない。
これが今年の高田イーグルスの最大の弱点です。
この試合もそれを露呈してしまった。
そして、音を立てて崩れていく。
崩れるときはあっという間です。
強敵を前にして、当たり前に守れること。
これが大前提になってきます。
これがものすごく難しいこともわかっています。
プロでさえも、高校野球でさえも人間なので、エラーはあります。
ここで、我々がやるべきは次にやらないためにはどうするか?ここです。
本人たちがわからないなら、彼らがわかるように、わかるまで伝えなければならない。
そして、大事なのは試合で自分の判断でできるように、練習の段階でもできるようにしなければならない。
我々指導陣に言われるのではなく、自分で気づいてできることではじめて「できる!」と言えます。
今のイーグルスにはその「できる」ことがまだまだ少ない。「できる」は武器です。
その「できる」を少しずつ増やしていくことで、大型巨人である湯川さんや全国大会へゆく猪苗代さんとまともに戦えることに近づけると思います。
ただ、難しいことに湯川も猪苗代も我々が成長していくように、彼らもまた日々全力で成長しています。差が埋まるとは限らない。
だからといってあきらめることはありません。
戦いというか、チャレンジは小学校で終わるものではありません。
生きている間、全てがチャレンジなんです。
お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、我々もどんなカタチであれチャレンジを続けています。
スポーツ少年団が本番ではなく、むしろそっちの方が本番です。
スポ少がその練習なんです。
今回は湯川さんを前に1回は互角として、2回からなすすべもなく崩れて負けました。
反省点は山ほど。
暑さと蓄積した疲れが彼らの敗北にに追い打ちをかけます。
負けた後のベンチはぐったりした選手たち、泣き崩れるユナとで、中東アフガンの野戦病院のようです。
ボロボロのサンドバッグ。精神的にも、完膚なきまでにやられた。
反対に湯川さんは一試合ながら、あちらも暑さで疲れがあったでしょうが、ぐだぐだすることなく、最後まで統制がとれていました。まず、精神的にも向こうが大人。
そのあたりも今回の得点差に反映されていたのだと思います。
白獅子2回戦で湯川さんに敗退。
我々の夏は終わりました。
いろんな意味で我々は湯川さんに及ばないということを完膚なきまでに思い知らされました。
ただ、立ち直りが早いのも高田イーグルスのいいところ。
差があるからといってやめるつもりは毛頭ありません。
強い者が勝つとは限らない。
弱者は弱者なりの、高田イーグルスには高田イーグルスのやり方があります。
それを最後の最後まで突き詰めていく。
これをこの先も続けていきます!
試合が終わってある保護者に、言われました。
彼「長い間お世話になりました。」
私「なんだ、急に?まだシーズン終わってないぞ!」
彼「いや、白獅子が終わって、負けたんですが、県大会を目指すという大きな目標に一区切りがつきました。その意味でです……またみんなで一緒に県大会に行きたかったです。」
私「……」
絞り出した言葉だと思います。
お礼をいうのは我々でした。
彼らと我々を支えていただいて、ありがとうございますと。そして、これからも子ども達を1番近くから支えて下さいと。
お父さんお母さんも本気で白獅子を戦っていました。
かくして高田イーグルスの白獅子は、今年の夏は終わりました。
負けて帰る時、クソ暑い車に乗り込み、クーラーをガンガンにかける。
ミンミン、ジージー、うなるセミの声。
その声は、「まだまだ終わんねえぞ!」
そう言っていました。
続く2回戦の相手は、総体で準優勝をして会津代表となった湯川男子さん。
4年生のころから投げているこのエースです。
経験豊かな指導陣とバックアップが充実している保護者体制。チームとしてもまとまっている強敵です。
そこにきて、1回戦でかなりの体力気力を消耗している高田イーグルス。
こういう状況、よくマンガにあるシチュエーションです。
そういや、アニメ、メジャーの横浜リトル戦もそうです。
圧倒的不利。
ただ、この状況でもアニメの主人公よろしく、闘志を燃やす男がいます。
キャプテン翼ならぬ、キャプテン、レン。
まずは、高田イーグルスに流れを持ってくるべく先攻を選び、打順1番の自らが左バッターボックスから突撃します。
大阪夏の陣、茶臼山に陣取った徳川家康本陣に突っ込む真田幸村というところでしょうか!
無理にひっぱらず、相手の球威を利用するように跳ね返す打ち方でレフトオーバーのツーベース。
いつものように腰を回さず、体を開かないようにレフト方向。手首も返してません。
アジャストできる。
当たり前のように打つのがレンのすごさです。
かっこいい。
続く2番のコタローがライトにはじき返し、たったふたりで1点を先制しました。
湯川さんをして
「あ?!簡単には勝たせてくれないんだな。」
と思わせた。
圧倒的不利をなんとかして、好転させようというみんなの気持ちをカタチにした、さも簡単にやってのけたこのふたりはたいしたもんです。
湯川さんの戦力と自軍の消耗におののく高田イーグルスに大いに勇気を与えました。
ただ、この後が続かない。
この1点で、湯川のハートに火をつけたか、虎の尾をふんだか、本気になったことはたしかです。
ペイ、頼みのユウキ、タイチ、3.4.5のイーグルスクリーンアップが三三振で沈黙。
種火を大きな炎にできませんでした。
しかし、高田イーグルスは虎の子の1点を先制。
湯川さんのペースにはしない、簡単には負けないという意思表示をキャプテンレンがきっちり示しました。
この裏を抑えて、さらに高田イーグルスのペースに持ち込みたいところ。
それをわかってか、エースユナは湯川さんの1番に対して慎重に入ります。
残念なことに、この試合の主審は、前の試合のように高めをとらない審判でした。
ユナの球威のある決め球はことごとくボールになる。
先頭バッターをファーボールで出してしまいます。
2番がバントですかさず送って、スコアリングポジションにする。定石をきっちり踏ませる。
攻撃のカタチをつくる。
このあたりが湯川さんの監督さんの経験豊かさです。
ユナも落ちついてバント処理ができました。
さぁ踏ん張りどころ。
相手も3番バッターで打ちそうです。
ここをきっちり抑えて、守備からまたリズムを作りたいところ。
ここが初回のキモになる場面だと思いました。
ここは抑えたい。
1点でも初回にリードしているといい事実が欲しい。
打たれますが、レフトに角度のついたフライになりました。
あァ~よかった。なんとかなるなとレフトをみる。
レフトオーバーですが、とれない打球ではない。
しかし、タイチ亀の子バック。
打球を落とします。
その間に一人帰り、あっと言う間に同点です。
やっちまったという表情。
私も事前にレフトのタイチを3歩前に出るように指示をだしていたので、ここは私の責任もあります。ごめんタイチ。
1点が入り同点とされ、なおもランナーを背負っている。
ヤバいです。
ここは、一気に崩れかねない状態です。
しかも打順は4番。
打つからこの打順にいる存在です。
ユナ、なんとかふんばってくれー!
誰もがそう思ったでしょう。
とらえた鋭い打球音。
すぱーぁん、と乾いた音。
ファーストライナー。
ファースト、トウマのミットに収まりました。
ふぅ~あぶねぇ~、にしてもよく反応した。
そして、次もトウマ。
打ち損じのファーストフライに反応よく飛びついた。
彼の反応力にはいままで、何回も助けられています。そんで、なんだかしらないけど、トウマの一挙手一投足まで見守るお母さん方の親衛隊みたいな組織があります。
うむ!私もその気持ちが分かります。トウマのプレーには、私利私欲がない。
モテようとか、かっこつけようとか、そういう自己顕示欲がない。
そこに山があるから登る。
あざとさがない無欲。
そこがトウマの一生懸命さをひきたてます。
そして、それがガッツ溢れるプレーとなり、チームを救う。
そのひたむきさが、上の学年を差し置いてレギュラーとなる資質です。
そこは、選手を選ぶべき監督もわかっています。
一気に崩れる危ないところをトウマの守備がチームと、やべー俺の指示のせいでという私のココロと私のせいでとれなかったタイチのココロを救いました。
こういうのがチームプレー、お互いを補填し合う。
何とか均衡を保ちました。
しかし、2回表、こちらの攻撃は三者三振であっと言う間に終わり、いやな空気になります。
2回裏、先頭をきります。
こういうところをきっちりやれるようになれば、まだまだ勝機はあります。
しかし、次のバッターにデッドボール。
こういうところ、先頭をきった意味がなくなってしまいました。
また送ります。二死。
9番を打ち取って、1番には回さないというミッションになります。
後から思うに、ここがこの試合の分水嶺でした。
この9番は出してはいけなかった。
この9番で打ち取らなければならなかった。
しかし、ファーボールで出してしまいます。
こういうギリギリのところをとれるようになれば、このチームはもう1個上の段階にいけると思います。
湯川さんのカタチになってしまった。
だけど、二死、ここはユナとペイのバッテリーがふんばるしかありません。
が、甘く入ったところをレフトに持って行かれます。
逆転されます。
均衡が崩れました。
しかし、まだ1点。
後続をきって守り切ればまだまだチャンスはある。
ところがこれに乗じることができるのが、会津代表たる湯川さんの強さ。
打ち取ったセカンドからセンターに抜けるアタリでしたが、センター前に持っていかれる。
後からはなんとでもいえるんですが、ここも試合を決めたワンプレーでした。
2番が打ったあのゴロ、ユナの球威が押していましたが、振り切っていた。
打ち取ったあたり、二遊間セカンドよりにセンターに抜けるゴロ。
アユキの守備範囲でした。
二死なのでとって、ファーストでいい。
確かに難しいバウンドになっています。
アユキは逆シングルではなく、正面に入っての捕球をこころみました。しかし、届かなかった。
これは間違いではありませんが、この場合は守備範囲の広くなる逆シングルを選択すべきでした。
捕れないまでもなんとかして、あてて抜けさせない。
彼の大事にいかなくてはならないという真面目さが裏目に出ました。
今回はできなかった。
しかし、次、やらないようにするためにはどうしたらいいか?これが大事。
上手くなるというのはこの積み重ねです。
去年の美里イーグルス、美里親善大会準決勝、くしくも相手は同じ湯川さん。
我々が故意四球をしようかと迷った末に勝負した結果、打たれました。
最終回に相手の長身のエースが打った打球。
セカンド、レンの脇を鋭い打球が襲いました。
レン、天性の感でセンター寄りに守っていました。
レンが横っ跳びしても捕れなかった。
おそらくグローブの先、数センチだったと思います。
すり抜ける勝利、すぐ後ろからやってくる死神のような敗北。
レンにも抜けていく打球の残像が残っているはずです。
あの時俺が捕っていれば……
レンも何回もそういう場面を経験しています。
そうやって上手くなってきた。
こういう修羅場、死線を何回も何回もくぐってくることが、アユキをはじめ、選手たち全員を強くします。
ただし、そうなるのはそのミスを悔やみ、今度はやらないと心から反省し、次のプレーに活かそうと心に刻み込んだやつだけです。
あれは俺のせいではない。
あれは仕方なかった。
あれはしょうがない。
それで片付ける奴は一生上手くならない。
これで終わってはいけません。
いったんはそう思ってもいいでしょう。
試合中は、切り替えることが大事ですから。
しかし、試合の後は振り返らなければいけない。
私はそう思います。
なので、私は試合中、選手を叱ることはしませんが、試合が終わればそこを指摘します。
「あの時、俺がこうしておけば……
あの時、俺がこう声をかけておけば……」
自分のミスがチームをピンチに、敗北に陥れたことの重大性を知る。
私もそうですが、試合が終わればなんとでも言えるんです。だからこそ、次はやらないように選択肢をたくさん用意しておくこと。
そして、その状況状況において的確にくりだせるように何回も何回も練習するしかないんです。
この違い、アユキならばわかってくれるはずです。
これで、突き放されてしまいました。
そして、トドメのレオのライトエラー。
均衡を保っていたがために、維持されていたものが大きく崩れる瞬間。
表面張力の水がこぼれた瞬間です。
おそらく、ここで心が折れたやつがたくさんいたはずです。
そして、いっきに疲れが津波のように押し寄せる。
精神が疲れきった体を何とか保っていたはずです。
チームの多くが、「あぁ~もうだめだ~」と思ってしまった。
私も含め、その負の連鎖は、ため息とともに秒で伝染します。
そういう大波に立ちはだかる勇者がいます。
ほとんどがもうだめだと思う中、最後の最後まであきらめない。
たとえ1回折れたとしても、破片をかき集めてアロンアルフア(瞬間接着剤)でくっつけて、足に杭を打ちこんでも大津波で抗う。
俺はここを1歩も退かない!
試合を、勝負を捨てない不屈の闘志をもつ者。
誰というわけではないんです。
自分よりも強い何万にも及ぶ大軍を敵にまわしては、誰もがびびり、逃げたくなるでしょう。
私もその一人です。今でもそっち側です。
それもわかる。
いったんはひるんでもいい。
しかし、この後が大事です。
しかし、同じ立場の仲間のことを考える。
ここで俺が逃げたら、残った仲間はどうなる?
一人足りないまま苦戦を強いられる。
そしてむざむざ、ひとりまたひとりとやられていく。
俺の力は足りないかもしれないけど、ないよりはまし。
仲間のために、ここまで自分をサポートしてくれた家族やまわりの人を裏切らないために、たとえ勝つにしろ負けるにしろ全力を尽くそう。
だから、もう逃げない。ここに踏みとどまってやるだけやってみよう。
この境地です。
どんな強敵、どんな窮地に陥って心が折れても、もう一回全力でがんばるというチャレンジの気持ち。
この境地に至ってほしい。
その気持ちをもって、孤独という灼熱のマウンドに立ち続けるユナを、バックが、守備が助けてほしかった。
ユナはユナで、ミスをしたメンバーを救うべく、この回はなんとしてもゼロに抑えなければいけなかった。
お互いがお互いを助け合う。
これができると、ひとつ上のレベルにいけます。
しかし、今のイーグルスにとっては荷が重すぎたようです。
エラーで出したランナー。
エラーをした選手からみれば、ごめんみんな、俺のせいで……ごめん。
やべぇ~、ユナ、この状態でストライクが入るのか?
精神的にも追い込まれてしまいます。
エラーをしたその選手のココロのピンチを一緒に背負うのがエースと呼ばれる選手の宿命です。
しかし、ここはさらにピッチャーのエラーとも言うべきファーボールを出してしまいます。
もちろん、エラーをしようと思ってプレーしている選手はいません。それもわかっています。
しかし、試合が終わったのであえていいます。
大事なところで守りきれない。
これが今年の高田イーグルスの最大の弱点です。
この試合もそれを露呈してしまった。
そして、音を立てて崩れていく。
崩れるときはあっという間です。
強敵を前にして、当たり前に守れること。
これが大前提になってきます。
これがものすごく難しいこともわかっています。
プロでさえも、高校野球でさえも人間なので、エラーはあります。
ここで、我々がやるべきは次にやらないためにはどうするか?ここです。
本人たちがわからないなら、彼らがわかるように、わかるまで伝えなければならない。
そして、大事なのは試合で自分の判断でできるように、練習の段階でもできるようにしなければならない。
我々指導陣に言われるのではなく、自分で気づいてできることではじめて「できる!」と言えます。
今のイーグルスにはその「できる」ことがまだまだ少ない。「できる」は武器です。
その「できる」を少しずつ増やしていくことで、大型巨人である湯川さんや全国大会へゆく猪苗代さんとまともに戦えることに近づけると思います。
ただ、難しいことに湯川も猪苗代も我々が成長していくように、彼らもまた日々全力で成長しています。差が埋まるとは限らない。
だからといってあきらめることはありません。
戦いというか、チャレンジは小学校で終わるものではありません。
生きている間、全てがチャレンジなんです。
お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、我々もどんなカタチであれチャレンジを続けています。
スポーツ少年団が本番ではなく、むしろそっちの方が本番です。
スポ少がその練習なんです。
今回は湯川さんを前に1回は互角として、2回からなすすべもなく崩れて負けました。
反省点は山ほど。
暑さと蓄積した疲れが彼らの敗北にに追い打ちをかけます。
負けた後のベンチはぐったりした選手たち、泣き崩れるユナとで、中東アフガンの野戦病院のようです。
ボロボロのサンドバッグ。精神的にも、完膚なきまでにやられた。
反対に湯川さんは一試合ながら、あちらも暑さで疲れがあったでしょうが、ぐだぐだすることなく、最後まで統制がとれていました。まず、精神的にも向こうが大人。
そのあたりも今回の得点差に反映されていたのだと思います。
白獅子2回戦で湯川さんに敗退。
我々の夏は終わりました。
いろんな意味で我々は湯川さんに及ばないということを完膚なきまでに思い知らされました。
ただ、立ち直りが早いのも高田イーグルスのいいところ。
差があるからといってやめるつもりは毛頭ありません。
強い者が勝つとは限らない。
弱者は弱者なりの、高田イーグルスには高田イーグルスのやり方があります。
それを最後の最後まで突き詰めていく。
これをこの先も続けていきます!
試合が終わってある保護者に、言われました。
彼「長い間お世話になりました。」
私「なんだ、急に?まだシーズン終わってないぞ!」
彼「いや、白獅子が終わって、負けたんですが、県大会を目指すという大きな目標に一区切りがつきました。その意味でです……またみんなで一緒に県大会に行きたかったです。」
私「……」
絞り出した言葉だと思います。
お礼をいうのは我々でした。
彼らと我々を支えていただいて、ありがとうございますと。そして、これからも子ども達を1番近くから支えて下さいと。
お父さんお母さんも本気で白獅子を戦っていました。
かくして高田イーグルスの白獅子は、今年の夏は終わりました。
負けて帰る時、クソ暑い車に乗り込み、クーラーをガンガンにかける。
ミンミン、ジージー、うなるセミの声。
その声は、「まだまだ終わんねえぞ!」
そう言っていました。
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