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時に笑い、時に苦しみ、時に涙する。すべてはグランドへ。 ソフトボールを通して成長していく小学生とその保護者、スタッフの物語。
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その波はいきなりやってきました。
我々ではなく、全南選抜チームに。

初回にファーボールとエラーでいきなり3点を献上してしまいます。
おい!気前が良すぎないかい!
3点……
これで相手は余裕をもって選択肢も増えます。
対する会津選抜チームは、序盤こそ、1点ずつでいいんですが、回を追うにつれて確率の低い、思い切った策が必要となります。
となると、相手チームもこちらの作戦を読みやすくなります。
そこにきて、前の練習試合でもわかりましたが、バッテリーが、特にキャッチャーが元気が良くて、クレバーなんですよね。
扇の要として、チーム全体を鼓舞します。
彼の声、指示、これがまた、絶妙なタイミングで効果大。
三年前のユウキを思い出します。
屈強さ、ユーモアさ、状況把握からの対応力、機転、そしてなによりキャプテンシーがある。
キャッチャーとしての資質がそろっている。
いいキャッチャーなんですよ。
そして、実に絶妙なタイミングでチェンジアップを使ってくる。それがバンバン決まる。相手選手をよく観察している証拠です。
会津選抜は最後までこのチェンジアップに狂わされます。
まんまと、バッテリーの術中にハマってしまった。
3点を追いながらも、反撃の糸口さえ見つけられません。
先の田村選抜チーム戦では、バンバン決まっていたバントも決められません。
そこにきて、ランナーもでない。
手の打ちようがありません。
エース、ハルの調子もなかなかあがってきてくれません。
球威も明らかに落ちています。
そこにきて、忘れていた12月の寒さが徐々に忍び寄ってきます。
さらに2点を献上し、コールド負けの歌がだんだん聞こえてきました。
斜陽。
いわき新舞子の太陽が沈もうとしています。
会津選抜の命運もこのまま尽きてしまうのか?
流れは完全に全南選抜にいっています。
こういう時は、積極的にしかけるか、選手たちを信じてじっと待つかの二つにひとつです。
どうやってとったかは、忘れました。 
中盤にきて、2点をもぎ取りました。
さぁ、あと3点。
全南選抜の尻尾が見えてきました。
ハルとコタローのバッテリー、なかなか調子があがらないまでも、なんとかその中でやりくりをしようとしています。
しかし、それも限界か。
コントロールも甘くなり、痛打される場面が増えてきました。
終盤にきて、これ以上の得点は許されませんが、追加点で離されます。
やる気を削いでくる。
おそらく、やってあと2回。上位打線にもう一回回せるかがカギとなるでしょう。
そこにきて、時間との戦いも視野に入れなければなりません。
どうやったら、効率よく時間を配分し、逆転にこぎつけるか?
上位に賭けるしかないと思うので、必要とあらば、下位に早打ちを命じることもあるでしょう。
しかし、そんなに上手くいかないんですよね。
下位を早く終わらせようとすると、意に反してファーボールで出たりする。
時間を目いっぱい使った上に、無得点という無残な結果に終わることも過去にありました。
思い通りにはいってくれない。
思惑通りにはいってくれないのがソフトボールというものです。
いわき新舞子にナイターが点灯しました。
人工的な光ではありますが、我々会津選抜にとっては、あきらめるな、もう一度がんばれと言ってているような、光でした。
何とか時間を上手く使い切り、最終回まで来ることができました。
やろうと思えばできる、遅延行為なども全南選抜にはいっさいありませんでした。
コールド負けはなくなりましたが、6点差。

疲れの見えるハルから、ユウマにピッチャーを交換します。公式戦、初登板となります。
別名「まんじゅう」、普段はひょうきんで、面白い奴ですが、今回のユウマはスイッチが入っています。
みんなが満身創痍、そしてこの点差。
俺だってやってやる!という闘志に溢れています。
俺はあきらめないというユウマの意思がみんなに伝染したかどうかはわかりません。
コールド負けになりそうになりながらも、最終回、おそらく最後の攻撃になるところまでなんとかもってきました。
後は、もてる全力を尽くすのみ。
しかし、この状況、全南選抜チームはほぼ勝ちを確信しています。
満塁ホームランでも追いつけない状況、向こうにも疲れは見えますが、少しぐらいミスっても致命傷にはならないという余裕が見えて取れます。
その余裕をいかんなく、チェンジアップに看過して会津選抜チームを手玉にとる相手バッテリー。
ここにきても警戒を緩めることはありません。
タツキが倒れ、代打のタイチも倒れる。
2死。
今度こそ本当に追い詰められました。
ここで、前の回に急にセカンドについたリョーマ。
この打順、1番はいつもならレンですが、やつは前の回守備の時、急に腹が痛くなって、試合を止めて、ベンチにダッシュ、監督に腹が痛いと言ってらトイレに駆け込みました。
いわき新舞子の夕暮れの寒さにやられたに違いありません。俺も寒かった。
ここで、レンがいない。1番の出塁率を誇る男がいない。レンはまだトイレと戦っています。
ここはこのままリョーマにうたせるか?
それとも、リョーマに代打か?
一時の逡巡、監督はリョーマを送り出します。

前の回、いきなり守りにいけと言われたリョーマ。
えーっ!俺ぇ!という表情が見て取れましたが、いったん守りを経験すると少し落ち着いたようです。
それでも、ツーアウト。
最後のバッターには誰もなりたくありません。
会津選抜チームも追い詰められていますが、この場面でバッターボックスに入るリョーマも追い詰められているでしょう。
応援しているお父さんお母さんもきがきでないでしょう。
パァーン、パァーンとテンポ良く投げ込む相手バッテリー。
そして、ツーストライク、いよいよもって後がない。崖っぷちというやつです。
6点差、全南選抜チームは90%セント以上勝ちを確信していると思います。

しかし、こういうところにこそ、ドラマは生まれます。
ほぼほぼ決まった試合、あぁ負けるんだろうなと覚悟を決めていると、途中から入った、この男、リョーマによって、ガラッと試合は変わります。
どんな男か?
それは必死になって、もがく男です。
潔く、きれいにではなく、どろくさく、かっこ良くなくてもいいから、自分の最善を尽くす男です。
私は思います。華やかさばかりに、気をとられガチではありますが、世の中の大半はこういう人たちによって動いていると。
自分の居場所で、最善を尽くそうとする人たちで成り立っていると思います。
間違いなく今回のリョーマもそのひとりです。
リョーマ、いつも追い詰められると、高めのボール球に手を出してしまいますが、今回は止まりました。ツーストライクに追い込まれて空振りしたフォームは、左バッター、前足の右足が完全に90度以上に曲がっていました。
それが意味するところは、前体重、前傾姿勢
だということです。
呼び込んで打っていない。どちらかというと迎えにいっている振りだなと初見から思っていました。
しかし、今、そんなことはどうだっていいんです。
いろいろ不利な条件の中であったとしても、今、ここ、この打席の中で彼は最善の努力をしているということがヒシヒシと伝わってきました。
もはや技術なんぞ、どうだっていい。
不安というよりは、やってやる!という意志が彼の眼光から見て取れます。
ここに至って、リョーマにかける言葉は、「がんばれ!」これしかありません。
いったん負けそうになった心に、ふたたびのブレイブハート!
頼む、頼むぞ、リョーマ!
私はサードコーチャーズボックスから、リョーマに全力応援をします。

こういう時って、ミリ単位で形勢が動きます。
リョーマが覚悟を決めて、持てる力を出し切ろうとする中、相手バッテリーの余裕があった呼吸が少しずつ乱れ始めます。
いったん、緩んだ気は中々もどりません。
こういう時って、なぜか審判のジャッジも厳しくなります。
きわどいところをつかれながらも、ボールを見極めるリョーマ、ものすごい集中力を発揮します。そして、ついにファーボールを選びます。
この大事な場面でよくぞ、ファーボールを選んだ。たいしたもんです。うるっときます。
ここでも、少し相手チームの歯車が狂います。
もしかしたら、ヒットよりも相手に与えるダメージは大きいと思います。
あれ、なんか違うなという違和感を相手に植え付けた。つけ込むスキが見えてきました。

2番のユウキを迎えます。
そしてここで浮かんでくる可能性。
前の試合でホームランを打っている3番のケイシンまで回せば、もしかしたらもしかするかもしれない。
そんな一縷(いちる)の望みを抱いてしまいます。
人が思うことは誰にも止められません。
そして、会津選抜チームの全人類がそれを期待してしまう。
そうなると、普段はおきないようなことが起きてしまうんですね。
念ずれば通ず。
人の思いは終わらない。
こういう場面に何回も遭遇していると、本当に人の思いは、通じる時があるんだなぁと思わされます。
そして、それは最後まで信じて、ひたむきに準備をしてきた者のみにくるということがよくわかります。
チャンスは準備された心に降り立つ。
それを地でいっている。
そこをリョーマが切り開いてくれた。
ユウキも何とかして塁にでます。

そして、この試合、会津選抜チームの最高潮の時はやってきます。
書いてきたことと、つじつまがあいませんが、ケイシンが打席に立ったとき、それは満塁だったと記憶しています。
タツキの前にヒロトが出ていたのか?
ん?なんか合わない……けれど、最終回裏、ツーアウト満塁、そして最強バッターのケイシンを迎えるという場面を作り出しました。これ以上はないという場面をみんなで紡いだ。
これはたいしたもんです。
死に体の会津選抜チーム。
しかし、彼らはただでは負けねえぞという意地を見せてくれています。
こういうのが、勝っても負けても次につながる挑戦だと私は言い続けています。
この場面で満塁までもってくるとは。
2:8この時点で、満塁ホームランを打ったとしても、まだまだ追いつけない状況。
しかし、我々はケイシンが打てば、もしかするかもしれないという希望に賭けています。
流れがこちらに来ると信じています。
このままでは終わらない。
このままでは終われない。
そして、ケイシンならば打つ、会津選抜チームにはそれしか考えはなかったはずです。
そのみんなの思い、悟空の元気玉のような思いを一心に受けるケイシンは、スウイング、一振り一振りに魂を込めています。
終わりの時は近い。
誰もがそう思っています。
ツーストライクと追い込まれました。
しかし、一分でも一秒でも長く、このメンバーで一緒に戦い、このお母さんお父さんとその家族に応援してもらいたい。
このメンバーで戦っていたい、その思いの全てをフルスイングに賭けます。
この大事な場面で、全南バッテリーは最後にチェンジアップを選びました。
たいしたもんだとしか言い様がない配球。見事です。
みんなの思いを込めたケイシンのバットは空を切りました。
三振。
悔しさもありましたが、してやられた感、それとやりきった顔がそこにありました。
ゲームセット。
終わってしまった……
まわりのナイター照明のカクテルライトに両チームのシルエットが浮かび上がります。
ひとつは上を向いて、もうひとつはうなだれる影となる。
肌寒く、すっかり暗くなったいわき新舞子。
ここに、2021会津選抜チームの最後の挨拶がこだましました。
私たちの旅はここで終わりました。
どこがいけなかったのかと振り返ってみる。
初回の3点が痛かった。
立ち上がりの不安定さを克服できませんでした。
それがバッテリー、ひいてはチーム全体の推進力になりえなかった。
しかし、中盤の追い上げ、時間切れにならずに最終回までもつれさせたこと。
そして、ツーアウトランナー無しから、最後の最後にヤマ場を作ったこと。
いくつかのいいプレーが今年の会津選抜チームのカラーを象徴しています。乗れば強く、やられてもただでは起きないしぶとさ。渋みのある濃紺、ネイビーというところでしょうか。
確かに、勝負には負けました。
しかし、完全には負けていない。
もう一回やったら負けない。
そんな前向きな負け方だったと、私は思います。
負けてもまだまだ完全に、完膚なきまでに負けたと思わない限り、私は負けていません。
ゲームセットの挨拶で頭を下げるとき、次はみてろよ!といつも思っています。
その意味では、負けることは次へのスタートでしかない。
多くの負けに彩られた敗者の道。
そこは下がるのではなく、ちょっとそれる迂回路でしかない。
しかし、このメンバーでやるのは今回が最後。
そうこれで最後だったんです。

試合後のラストミーティング。
真っ先に声を詰まらせたのは、佐藤監督でした。
あぁ、この人も人の気持ちがわかる人で、いい年をした大人でも、きちんと感情を出すことをためらいなくできる人なんだと思いました。
そして、そんな計算高いところでやっていない。
普段、あんなに速い鬼ノックを打つ人でも、あふれる涙は止めようがないんだなあと安心しました。
そういや三年前、テンカイのお父さんに言われたことを思い出しました。
「ちゃんと泣くことができる大人に会えてこの子たちは幸せだ。」と。そんなような意味だったと記憶しています。
大人だって泣くんです。鼻水を垂らして、おいおい泣く。高田イーグルスの福田コーチもそうですが、私もそう。
だって、あふれる感情を止めることができなくなるくらい、君たち選手がいろんな思いを見せてくれるから。
そんな時くらい、心を震わせてもいい。
心のダムを決壊させてもいいと思うんです。
佐藤監督もこちら側の人。
理論もそうですが、それを行動で示し、気持ちを前に出す。
だから、子供たちも保護者もついてくる。
そんな佐藤監督はいいました。
「いろいろあったけど、18人全員で最後まで戦えたことが1番良かった!」
ひとりひとりの顔をつぶさに見ながら、言葉を絞り出しています。最後の方は涙声。
18人という言葉に重みがありました。
もしかしたら、集まらなかったかもしれない18人。
くるしい船出ながら、ひとり増え、またひとり増えという水滸伝、梁山泊のような成り立ちのチームでした。
苦労しながらのチーム編成、ポジション、打順を佐藤監督を中心に作り上げてきました。
一試合を勝ち、これから彼らの真価を発揮させるというところで上手くいかなかった。
私もそうでしょうが、佐藤監督も山内コーチも大堀コーチも、もっともっと勝たしてやりたかったというのが本当のところです。
力の至らなさ、それが無力感と、最後に円になって、子供たちの真摯な視線を受けとめることができません。
「監督コーチ、どうでしたか?負けはしましたが僕たちは一生懸命にやりました!」
彼らの目がそう言っています。
一直線に突き刺してくる彼ら18人の視線。
受けきれませんよ。だって実際、彼らは一生懸命にやってきたんですから。そして、お母さんお父さんも一生懸命に彼らを支えてきた。我々はそれを一番近くで見てきました。
秋空の寒さの中、練習している選手たちを見守る保護者。何回も寒かったはずです。
そうやって作り上げたチームが、最後までいけなくて、ここで終わってしまった。
子供たちに対する感情が涙となってあふれ出てしまいます。
子供たちは、選手たちはよくやった。
もっともっと、勝たせてやりたかったし、もっともっと一緒にソフトボールをやりたかった。
それが、我々の本音です。
ただ、こういうような気持ちで相手も戦っています。それは同じなんですよね。
だからこそ、ドラマが生まれると思います。
本気だからこそ、面白いし、悔しい。
何回もいいますが、それもここで終わってしまうんです……
いわき新舞子に、いつもより大きな月がでています。
お母さんお父さんのような大きな月。優しい光。
その月が、負けてグランド隣の宿舎に向かって歩く我々を照らしていました。

さて、今年の2021会津選抜チーム、いわき新舞子劇場、かくのごとく戦い、終幕となりました。
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